中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる~ロシアのウクライナ侵攻に思うこと

 2022年2月24日、ロシアはウクライナに対し軍事侵攻を行い、市民も含めた多くの命が失われています。このようなロシアの行為は世界の平和と国際秩序を根本から揺るがすものであり、即時停戦とロシア軍のウクライナからの無条件・即時撤退を強力に念願するものです。

 3月8日、中同協は世界平和が脅かされていることを鑑み、広浜泰久会長の談話を発表しました。その中で、「私たち同友会は、第2次世界大戦を通じて得た『中小企業は平和な社会でこそ繁栄できる』との教訓を踏まえ、『日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざす』ことを3つの目的の1つに掲げています。改めて平和の大切さを心に深く刻みたいと思います」と提唱しています(2022年3月15日、中小企業家しんぶん)。

 このような考え方は、今年の企業の入社式でも広まっています。各社のトップから、ロシアによるウクライナ侵攻への批判や懸念が相次ぎました。「私は戦争に反対だ」。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は約1300人の新入社員に向けて「世界中の人々の悲しみを少しでも減らし、笑顔を少しでも増やす。情報革命で人々を幸せにしたい」と訴えました。また、イオンの岡田元也代表執行役会長は「平和でなければ小売業は繁栄しない。イオンは積極的に平和の尊さを訴え、平和の維持につながることに協力していく」と述べました(4月2日、朝日新聞)。

 そうは言っても、朝鮮戦争やベトナム戦争のように、戦争が生じると周辺国で需要が盛り上がり、好景気が起きた事実があります。もちろん、物理的な戦禍が及んだ当事国となれば生産活動は大打撃を受けます。さらに世界の産業構造が劇的に変化し、各国の結びつきが複雑になった今日、戦争が経済に与える影響は激しく変質しています。戦争によって経済が好転することを是とするのは軍産複合体の関係者など少数派に違いありません。

 今日の戦争はあまりにも違うのです。ちなみに、世界銀行は4月10日、ロシア経済の実質経済成長率が2022年にマイナス11・2%になる見込みだと発表しました(4月11日、日本経済新聞)。

 戦争についてまじめな論考を目にしました(3月29日、日本経済新聞「10字路」大和総研執行役員・鈴木準「経済成長、平和があってこそ」)。80年代以降に世界で起きた主な戦争・紛争・侵攻・内戦などについて、関係した国の開始前・戦時中・終結後の実質成長率を調べました。原則5年間の平均値でみた開始前の成長率が戦時中に低下した事例は6割であり、データが得られた49ケースのうち29ケースでした。このうち14ケースは戦時中マイナス成長でした。

 企業が将来を見据えて投資し、人々が安心して消費するための基本条件は平和です。やはり、常に平和な環境はわれわれの手でつくり出さないとダメと覚悟すべきなのです。

(U)

(『DOR140号』にも同趣旨のことを書きました)。

「中小企業家しんぶん」 2022年 5月 15日号より