【事業承継・後継者問題】中小M&Aガイドラインを活用しましょう

 中同協では、「国の政策に対する中小企業家の要望・提言」の中で『中小企業M&Aガイドライン』の周知徹底を要望しています。そこで、今回は事業承継・後継者問題などについて紹介します。

 経営者の高齢化も進む中で中小企業の事業承継は社会的な課題となっています。東京商工リサーチの調査では、2021年の経営者の平均年齢は62・49歳となり、最高を更新しています。同調査では、続けて社長の高齢化と業績悪化の関連性は高く、直近決算で減収企業の社長は60代が48・8%、70代以上も48・1%を占め、また赤字企業は70代以上が22・3%で最多とあります。事業承継問題は、企業の成長にも大きく関わっています。

 帝国データバンクの調査では2021年「後継者不在」が61・5%となり、事業承継問題はコロナ禍で大幅改善し過去10年で最も低いとあります。日本政策金融公庫の調査で、60歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定。このうち「後継者難」を理由とする廃業が約3割に迫るとあります。後継者問題・事業継続について重要な課題となっています。

 中小企業白書2021では、「事業承継は単なる経営体制の変更ではなく、さらなる成長・発展を遂げるための1つの転換点になり得る。また従来、中小企業にとってのM&Aは事業承継策の1つとして注目されてきたが、近年では成長戦略の一つとしても関心が高まっている」とあります。

 事業承継には、同族承継、社員から昇格、外部から招聘(しょうへい)、取引先・親会社からの派遣などがあります。また、中小企業のM&Aに関心が高まっているとともに、買う側でも売る側でも、M&Aの課題点や事前に知っておくべきことが重要になっています。中小企業のM&Aでは、M&A仲介業者の双方代理という利益相反取引問題、契約期間終了後も手数料を取得するテール条項といわれる契約などの問題も多くあります。

 経済産業省は2020年3月に、「第三者承継支援総合パッケージ」に基づき、「事業引継ぎガイドライン」を全面改訂し、『中小企業M&Aガイドライン』を発表しています。

 事業承継という視点からの売る側のM&Aと、成長戦略という視点からの買う側のM&Aもあり、一度『中小企業M&Aガイドライン』に目を通してはいかがでしょうか。

「中小企業家しんぶん」 2022年 5月 15日号より