その経営者保証外せます

 「億単位の融資の経営者保証は命(生命保険による)を預けるのと同じ」「事業承継のハードルの1つが経営者保証。親族外承継では本人が了承しても家族の説得が難しい」。

 6月6日、中小企業政策審議会金融小委員会が中間とりまとめを行い、「経営者保証を徴求しないスタートアップ・創業融資の促進」「経営者保証に依存しない融資慣行の確立」に向けた取り組みの本格化を提案しました。

 中小企業庁金融課の資料によれば、新規融資における経営者保証に依存する融資は減ってはいるものの、2021年度は民間金融機関では30%、政府系で45%と、経営者保証をとらない新規融資は5割未満にとどまっています。

 また、新規融資に限らず既存借入の全部または一部に経営者保証を提供している事業者は8割に及びます。(2020年度)

 1990年代にバブル経済が破綻し、貸し渋り・貸しはがしで苦しむ経営者が増える中、「金融アセスメント法制定運動」で1000を超える自治体決議、100万を超える署名を集めました。同法は地域で集めたお金は地域に融資をしているか(金融機関の公共性)、物的担保や経営者の個人保証による融資をしていないか(利用者の利便性)、金融機関の経営の健全性の3つの側面から、診断士や税理士にも審査してもらい、国民に公表するというもの。

 なかでも第三者保証、経営者保証に頼らない事業性を評価した融資は、宿願でした。

 この運動の成果として、2006年に信用保証協会が第三者の連帯保証原則禁止表明を行い、11年に金融庁が直接的な経営に無関係な第三者の連帯保証人を求めない監督指針を発表。13年には「経営者保証に関するガイドライン」が日本商工会議所と全国銀行協会によって発表されました。

 同ガイドラインによる3条件((1)法人と経営者の明確な区分・分離(2)法人のみの資産や収益力で返済が可能(3)金融機関に対し、適時適切に財務情報を開示)を満たせば、保証を外すことができます。

 同庁金融課資料では、経営者保証を提供しているものの、金融機関と連携して経営者保証を外す「金融機関連携型」の財務要件(1)直近の決算期において債務超過ではない(2)直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でない。これを充たす事業者は5割もいます。

 中小企業庁では、前向きの投資を抑制し、事業承継を困難にしている経営者保証を解除できる可能性があることを強調した広報を6月から開始し、「経営者保証は必須ではありません」としたチラシなどを中小企業庁ホームページに掲載しています。

 これらは中小企業庁金融課長と中同協政策委員会金融プロジェクトが5月30日に懇談する中で明らかになってきたものです。同キャンペーンには中同協としても全面的に協力し、金融庁や金融機関の全国組織との懇談で話題にするとともに、会員企業にも知らせていこうということになりました。

 経営者として経営者保証ガイドラインを学んで実践し、金融機関に積極的に相談し、経営者保証を外していきましょう。

(穂)

「中小企業家しんぶん」 2022年 6月 15日号より