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【連載】ポストコロナを見据えて~10回の研究から 第1回 情勢変化~社会的変化を「変革」のチャンスと捉える

 コロナ禍は3年にわたり、パンデミックによる「コロナショック」、その後の「ニューノーマル」と言われる新たな社会への変化・変容が起きてくる中、変化への対応や優越的地位を利用するなどして発展成長している企業もあれば、その一方で、立場の弱い企業や人々へのしわ寄せが浮き彫りになり、格差が広がっています。また、変異種による新たな感染拡大の不安感は今もぬぐえず、終息の兆しも見えてこない中、緊急融資の返済が始まり、破綻の危機にひんする中小企業が増えています。

 2020年3月に発足した中同協新型コロナウイルス対策本部は、これまで6回にわたる会員企業の影響調査を実施するとともに、10次の政策・要望提言を発表し、会員に向けては、危機に対応する企業づくりのあり方などについて4回「会長談話」を発表しました。また4月には価格転嫁と資金繰り問題で本部長談話も発表しました。

 また、10回のポスト・コロナ研究会を通じて同友会としての課題について意見交換し、同友会としてこの教訓を、どのように今後の活動や「中小企業の見地から展望する日本経済ビジョン」「同友会運動の将来展望」見直しの議論に生かすべきかを議論し、意見が出し合われました。

 その後、今年1月には感染拡大の第6波というかつてない規模の感染者や濃厚接触者数を経験し、2月に同本部として実施した「新型コロナウイルスに関する国への緊急要望アンケート」結果も受け、3つの柱を立てて、以下のようにポスト・コロナについての情勢変化や企業、同友会のありようをまとめました。

(1)SDGs、「ビジネスと人権」など、新しい社会のありようへ

 国連は2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)を2015年に発表し、利益至上主義、一国主義から、「だれ一人取り残さない」ために国際的な連帯とアクションを求めています。

 同友会の歴史と理念、「中小企業における労使関係の見解」には、中小企業や同友会のめざす姿が謳(うた)われており、同友会や会員企業はSDGsの精神を先取りし、実践してきました。

 企業として地域として、あるべき姿を問いかけつつ、付加価値を高めるために実践する、変化に対応していく必要があります。

(2)非接触型社会で求められる新たなソリューション

 感染拡大を抑えるため、対面や接触を避け、テレワークも一気に加速するなど非接触型社会となり、組織や人と人とのあり方に大きな変化をもたらしています。現場を抱える中小企業にとってもこの変化は無視できない状況であり、現場のあり方、採用や社員教育などの場面で変化が求められています。

 非接触社会が一気に進展することで、デジタル技術による変革(DX、デジタル・トランスフォーメーション)は急速に進み、企業や同友会にとって、業務改革であるBX(ビジネス・トランスフォーメーション)、組織の変革としてのCX(コーポレート・トランスフォーメーション)を実現していくことが大切です。これまでの「先進」が「普通」になり、あっという間に「後進」になる、変化の加速化も無視できません。課題の解決(ソリューション)は多方面で要請され、経営者として高い感度と判断力、リーダーシップが求められています。

 一方で、オフラインでの対面・人と人との直接的なふれあいの重要さも見直されており、中小企業の個性を生かした取り組みが期待されています。

(3)中央集権型から分散型ネットワークの時代へ、地域内経済循環を

 インバウンド需要が急速に縮退していく中で、域内循環が高まり、住民の命と暮らしを支えるコミュニティを中小企業が支えていることを自覚する機会が増えました。同時にその中小企業を支える自治体や地域金融機関の役割・存在意義が問われ、諸制度の整備・検証とともに相互連携が求められています。また、デジタル化が進む中、ローカルに働き、グローバルに事業展開できる可能性が高まり、地方でやれることは地方、分散型でできることは分散してという流れが高まっています。

 国レベルでは中小企業憲章、自治体レベルでは中小企業振興基本条例の実効性も問われることとなり、金融の金融施策はある程度功を奏したものの、今後は抜本的な産業育成、中小企業振興策や制度が求められます。産学官金連携とともに地域内経済循環のカギとなるエネルギーシフトへの取り組みなど、持続可能な地域内循環をいかに中小企業が担っていくか、地域の中長期ビジョンとアクションプラン、さらにはその実効性を高めていくことが課題です。

(4)生産年齢人口の減少と多様性への対応

 国内の人口減少に先んじて始まった生産年齢人口の減少は今後加速する一方で老齢人口割合が増え、確実に社会的課題が増えていきます。企業として日本社会として、同一水準の経済活動に必要な労働力の獲得が困難になる「労働力喪失時代」を迎え、国内の需要の縮退も急速に進むこと、現状の企業活動の延長線上の仕事はなくなる可能性があることを意識する必要があります。地域や社会的課題、めざすべき社会のありように向けた課題解決は、中小企業の経営課題であり、新事業にもつながります。

 また、中小企業の多様性は、経営者やそこで働く人々の多様性の反映でもあり、生み出される付加価値の源泉でもあると言えます。多様性・包摂性・柔軟性の価値観をもち、弱い立場の人々への配慮をすることが、地域経済の底上げ、自社の存在意義を高めることにつながります。

(5)学ぶこと・働くこと・生きることをつなぐ

 社会の中で生きていく人間を育てる、人格の完成へ向けた教育は、従来は学校教育だけではなく、地域社会、企業も担っていました。コロナ禍でオンライン講義などICTによる「知育」のみが進み、人格形成に必要な教育、リベラルアーツが軽視されてきています。さらには、「メンバーシップ型」の雇用システムから「ジョブ型」雇用への転換、成果主義や非正規化が広がる中、社会が担ってきた人間としての自立を育む力が徐々に失われてきています。

 PTAや町内会など地域の子どもや若者に目を配り、学校教育にも関わり、一人ひとりの素晴らしさを見い出し、さらには個々の能力を、仕事を通じて引き出し、事業にもつなぐことができるのは中小企業です。

 学ぶことが知識にとどまり、働くことが成長につながらず、やりがいや生きがいを見い出せない若者が増える中、中小企業やその経営者の役割が期待されています。

「ポスト・コロナ研究まとめ」全文はこちらから
https://www.doyu.jp/news/220513-161458.html

「中小企業家しんぶん」 2022年 7月 5日号より

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