【連載】ポストコロナを見据えて~10回の研究から 第4回 今後の同友会運動のあり方

 中同協新型コロナウイルス対策本部では、2020年9月から2021年8月にかけて10回のポスト・コロナ研究会を行いました。今回はポストコロナ研究まとめの第4回目(最終回)です。

 自主・自立を大事にする同友会の姿勢は、企業づくりにおいても、地域づくりにおいても新たな可能性を切り開くものです。中同協では2019年に「同友会運動の将来展望(10年ビジョン)」を発表し、(1)一人ひとりのすばらしさが発揮できる企業づくり、(2)中小企業憲章の精神を体現し広める、(3)強靭な組織づくり、(4)同友会理念の実践と世界への発信を打ち出しました。

 コロナ禍の経験と同友会の活動は、「1社もつぶさない」「活動を止めない」という発災直後からの連帯の精神の発揮と、「雇用を守り、地域を守る」と会内で声をかけあい、外部機関と連携して、窮状に立ち向かい地域全体で取り組むなど、このビジョンを豊かに裏付けるものともなりました。

 また国際的にもウクライナ侵攻に対する会長談話を発表し、平和の連帯へ向け意思表明しました。

 中同協新型コロナウイルス対策本部で企業づくりの柱を打ち出し、会長談話や本部長談話を発表するとともに、調査や要望・提言を通じて対外発信・連携を強化し、中小企業庁や金融庁、国会各政党、金融機関の全国組織や中小企業団体、労働団体、報道機関との関係性を広げています。

 これら、ポスト・コロナにおける同友会運動は、日本の未来、地域の未来における中小企業の役割を踏まえ、「3つの目的」「自主・民主・連帯の精神」「国民や地域と共に歩む中小企業」の理念を、確実に実践しているのかどうかが問われています。

 外部からの期待が高まる中、理念的にも財政的にも、自主・自立の精神で行政や金融機関などと対等の立場で意見交換し、中小企業の声を届け、経営環境を変えていく発信力の強化が求められています。

(1)先進性とぶれない中小企業像

 経営指針や企業変革支援プログラムなど、同友会会員が議論して創造し、その実践を促していることに加え、更なる高みを目指して今回「ポスト・コロナの企業づくりの6つの視点」をまとめました。

 新たな企業のありようは、同友会がめざす企業づくりでもあります。

 全国の企業づくりの実践の成果と教訓に学び、強靭な経営体質をつくる機会が多く設けられることで学び、実践する会員も増えてきます。

 経営指針づくりの過程はもちろん、実践を促すため、役員会、例会、小グループ活動など、あらゆる場面で、本音で経営の悩みや不安を語りあい、困難を克服するための励ましあい、学びあい、企業家精神を発揮した新たな挑戦を促す場としていきたいものです。

(2)危機における同友会の意義の評価と役割発揮

 自然災害や疫病による災害にかかわらず、中小企業は常に社会的影響を受けやすい存在です。日ごろから企業づくりの活動を積極的に進めるとともに、どのような状況にあっても、創意工夫して、声をかけあい活動を止めない努力をすることで連帯感も高まり、同友会が身近にあることが、孤独な経営者の心の支えになります。

 また、実態や要望の調査などでは、同友会を身近に感じている会員が増えるほど回答率も上がり、e.doyuなどを活用することで、より実態に近く早くその声を集めることができます。またその結果を発信し、行政や金融機関とも懇談することで経営環境の改善に積極的に活用することもできてきました。

 コロナ禍で影響を受ける会員が増えているにもかかわらず、仲間意識が高まり、経営環境も変えていける頼れる同友会として信頼感も高まっており、2021年度は全国の会員数が590名増え、退会率が過去最低になったことがそのことを象徴的に表しています。

(3)地域づくりにおける中小企業団体との連携と同友会としてのリーダーシップの発揮

 食料やエネルギー資源の海外依存度の高い日本は、国際的な動向が即座に中小企業や地域経済に波及し、不安定な状況におかれます。一方、「SDGs」や「ビジネスと人権」のように、企業づくりが国際的レベルで評価されるようになり、同友会がめざす企業像は外部からも高く評価されてきています。

 世界的な視座、大局的な観点から、社会課題解決に同友会として、企業として取り組む意義を明確にして実践していくことが望まれています。

 地域の課題は自社の課題でもあります。「新・企業変革支援プログラム」には「企業の社会的責任」のカテゴリーが追加され、企業の社会的ありよう、ひいては同友会としての取り組みも問いかけています。

 中小企業振興基本条例活用の実態を各同友会の支部・地区レベルで検証するとともに、自治体とのつながりを強め、中小企業が社会の主役となるよう、企業の内部環境と外部環境を検証し、実践を進めたいものです。

 日本の社会や経済が大きく変化していく中で、「人間の復興」に向けて、同友会理念と歴史に確信を持ち、中小企業であることに誇りをもって発信していくことが重要です。

「ポスト・コロナ研究まとめ」全文はこちらから
https://www.doyu.jp/news/220513-161458.

「中小企業家しんぶん」 2022年 8月 15日号より