昨年に続き「中小企業の日」全県例会を開催 地域に根差し奮闘する企業実践から学ぶ【奈良】

奈良同友会では昨年度より中小企業魅力発信月間に合わせて、7月に「『中小企業の日』全県例会」を開催しています。初年度は人を大切にする経営学会会長の坂本光司氏を講師に迎えて、地域の経済と雇用を支える中小企業の存在意義とそれを担うに足る企業のあり方について深めました。

続く2年目の今年は、地域に根差す事業者として(株)ひまわり市場の那波秀和氏(山梨同友会)を報告者に迎え、「この地で何があっても事業経営していく」という経営者の覚悟と、その姿勢に貫かれる事業戦略・社風づくりによっていかに地域で光る企業へ変革していったかという実践に学びました。

奈良同友会では、県南部の人口・事業所数減少を踏まえて2017年より組織再編の議論に着手し、自治体、商圏、交通、生活圏などを考慮して2021年に従来の支部を全県的に見直して再編を実施しました。

再編の議論の過程では、人口減は決して県南部だけの課題ではなく大局あるいは中期的には全県で同様の課題を抱えていること、地域の人口減少がすなわち事業機会の減少ではなく、変化の過程での新しい事業の形、地域課題や縮充(縮小しながら充実を図る)にあるビジネスの芽を地域の事業者で連携して模索する意義などを確認してきました。そのような流れもありながら、県北部に偏りがちな全県例会を今年は県南部の会場で開催し、会外ゲストも含む地域の経営者とともに地域の中小企業の可能性を再確認することをめざしました。当日は県南部の支部から最も多くのゲストが参加し、第7波拡大期のなかでも会場参加とオンライン参加を併用しながら例年通りの規模で学びあうことができました。

那波氏は報告で、11期連続増収の理由を小売業としては高い利益率やそれを実現する商品戦略やスタッフの技術力・人間力だとして、具体的な数字やエピソードを交え、熱のこもった語り口で紹介しました。引き継いだ当初の倒産寸前の状態から現状に向き合い課題に取り組んだ結果、八ヶ岳山麓で来客が絶えない店舗にしてきたその歩みに、参加者からは「地域の企業は、やはり人間のパワーで売り上げを伸ばして、雇用を守り、人を育てる。経営者の覚悟はココにあると思えた」「売上を上げる手法ではなく、同友会の本質=経営者の覚悟、共育、採用の話で学びになった」などの感想が寄せられました。

冒頭の開会挨拶では吉岡弘修代表理事より「中小企業の日」について触れながら例会の趣旨説明が行われましたが、参加者の中には中小企業の日あるいは中小企業憲章について「初めて聞いた」と答える会員もいました。今後もこのような事業を通して、新会員・会外経営者・関係機関とともに中小企業憲章に謳(うた)われる「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」というその意味と使命を深めあう機会を継続的に持つことの重要性が改めて確認されました。

「中小企業家しんぶん」 2022年 9月 5日号より