企業と学校による課題解決型授業の取り組み【島根】

2016年から、高校の進路担当者や管理職の先生に地元企業を知ってもらうことを目的として学校と経営者の懇談会を開催してきました。当初、職業高校の担当者は興味を抱いていましたが、普通高校(進学校)は興味を持っていませんでした。

2019年、松江東高校では文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の採択を受け、「松江東高等学校魅力化コンソーシアム」が立ち上がりました。「学校と経営者の懇談会」での交流もあり、島根同友会として島根大学、島根県教育委員会、松江市教育委員会などと共にコンソーシアムの構成メンバーとして加わりました。

企業と学校による実践的な課題解決型学習が展開され、生徒たちは4名程度のグループで地元企業を訪問し、経営者は学校へ出向く相互の交流が始まりました。お互いの意思疎通をスムーズに行う手段の1つとしてLINEWORKSを使用することを提案し、生徒とのコミュニケーションアップの環境も整え実施しました。

島根県において大学は国立島根大学と島根県立大学の2校しかなく、高校卒業生の大学進学者の多くが県外進学となっています。今まで県内企業について何も知る機会がないまま県外進学をしていた生徒でしたが、地元企業を知り、ふるさとで働く大人との交流をした上での進学は、生徒たちに変化をもたらすと思います。松江東高校の授業を経験し県外に進学した大学生の1人が、自分たちと同じ体験を他校の後輩たちに体験してほしいと、高校卒業後の3月に県内企業の課題解決を目的とした企画を打ち上げ、われわれも協力して実施しています。こうした取り組みにより、大学で学ぶ目的が明確になり、社会への対応力も増すのではないかと思います。

ほかの高校でも地元企業との関わりを持つ授業が行われ、今年10月に行われた松江商業高校の課題解決型「未来創造プロジェクト2022」では、同友会開催の新入社員フォローアップ研修に、企業訪問していた生徒10名が参加し、半年経過した新入社員たちの成長に至った経緯や現在壁にぶつかり悩んでいることなど、生の声を聴く機会をつくりました。こうした機会は貴重な体験になったと思います。また、PTA総会へ同友会として参加し、地元中小企業の魅力を、保護者や先生にPRする機会もありました。

こうした高校からの要望が多くなった現在、委員会が参加企業の取りまとめに多くの時間を割き、運営に追われてしまっていることが課題としてあります。同友会組織の改編や参加企業を増やすなどをしながら、これからも『地域で若者を育て、地域に若者を残す~持続可能な地域と企業のために~』の理念のもと学校との連携を続けていきます。

「中小企業家しんぶん」 2022年 12月 5日号より