進学校を舞台にした課題研究学習~宮城同友会・東北財務局・白石市・白石高校による4者間包括連携協定の取り組み【宮城】

2014年、白石市中小企業振興基本条例が制定されました。その際、地域分析から明らかになったことは白石市から流出した若者の「Uターン率ゼロ%」という厳しい実態でした。宮城同友会は、13年前から高校生向けに業種・業界を知ってもらうために「就職ガイダンス(共同求人委員会主催の全県行事)」を開催してきましたが、来場者の多くが実業高校の生徒でした。一方、本協定に共に取り組む白石(しろいし)高校は、ほぼ100%の生徒が進学希望であり、2010年の宮城県内の学区撤廃以降、白石圏内から通学する生徒が減少していました。進学して地元に戻らない生徒、市外から通学のため白石に来る生徒が「地域を知らない、愛着が持てない」という問題を打破すべく、2018年から白石高校が独自で課題研究学習を始めましたが、進学校がゆえ、地域とのつながりがなく壁にぶつかりました。その折、東北財務局からの発案もあり、2020年6月に4者間協定を締結する運びとなりました。進学で域外に出てしまう生徒の在学中に同友会、東北財務局、白石市が関わることで「いつでも地元に帰ってこられる」土壌を作るための息の長い活動とも言えます。

課題研究学習のテーマは、生徒自ら興味のあるSDGsの項目と身近な地域課題を照らし合わせて設定し、1年間かけて取り組みます。連携締結初年度は、生徒の取り組んだ結果の課題発表会に会員企業経営者が参加し、地域企業として、生徒たちにアドバイスを行いました。2年目となった昨年は、新1年生を対象に「就職ガイダンス(学内)」を開催しました。業種・業界の説明に加え、「自社とSDGsの関連性」を各社が結びつけて説明を行いました。「就職ガイダンス(学内)」は今年も開催し、参加企業は実際の仕事現場で使用する用具や機材なども持ち寄るなど説明に工夫を凝らしました。生徒からは、「地元企業で働きたいとは思っていなかったが、地元企業のよさを知り、どんな仕事でも世の中には必要不可欠だと知りました」「ガイダンスで話を聞きたいと思う企業がなかったが、実際話を聞いてみると地元企業が町のために働く姿が想像でき、格好いいと思ったし、自分も早く誰かのためになる仕事を見つけたい」などの感想がありました。今後は学校を舞台とするガイダンスの他、企業の現場に生徒を招くなど、地域で果たす中小企業の役割を伝えていきたいと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2022年 12月 5日号より