職場実習受け入れで社風が変化 甲斐電波サービス(株)社長 甲斐 章浩氏(大分)

 大分同友会の障害者問題委員会は、2000年に第10回障害者問題全国交流会(中同協主催)が大分で開催されたのを契機に発足しました。発足当初より、「養護学校の生徒の職場実習受け入れ」を毎年行っています。また、養護学校の先生方との意見交換会も毎年行っています。10月に福岡で開かれる障害者問題全国交流会の分科会で報告予定の甲斐章浩氏(甲斐電波サービス(株)社長 大分同友会会員)の体験を紹介します。

職場実習受け入れで社風が変化

甲斐電波サービス(株)社長 甲斐章浩氏(大分)

 当社でも職場実習を実施し、現在1名の障害者を雇用するに至っています。きっかけは同友会から「養護学校の生徒の職場実習受け入れの案内」のFAXです。そうやって当社に初めて実習に来たのが清家君でした。受け入れ当初は、正直なところ知らないことから生じる不安でいっぱいでした。

やさしく和やかな社風に

 実習に入り、清家君にはパソコン(PC)データ入力等の仕事をしてもらいましたが、初対面でもあいさつは元気よくするし、日常会話も問題なく、見た感じでは「どこに障害を持っているんだろう」と思ったほどです。

 仕事に取り組む姿勢は、社員よりも真面目(笑)なくらいで、ずっとPCの前で一心不乱に入力する姿には驚かされました。次第に不安もなくなり、また、自分でも驚いたのが「この子が社会に出て、1人でやっていけるように協力してあげたい」って思うようになっていたことです。

 その生徒さんが来てからは、みんながその子を支えよう、助けようとする中、それがいつの間にかお互いの関係にも現れて、職場がやさしく和やかな雰囲気に変わっていきました。それを見ていて、ずっとこんな社風の会社にできたら良いなと思い始めたのです。これは「目に見えない利益」だと思います。

 職場実習を通じて障害者も、健常者と同様にさまざまな能力を持っていることを未熟ながら知りました。また、障害者問題に取り組むことで、企業風土や経営者の器を変えていくということを実感しました。

 世の中には、生まれながらハンディーを持つ人、途中でハンディーを背負う人もいます。ハンディーを抱えながら一生懸命頑張っている社員の姿を通じて、最近「人は何のために働くのか」とそんなことを時々考えます。

 相変わらず障害者の就労は厳しい状況が続いていますが、企業側の理解と工夫がまだまだ足りないと感じます。現実問題として存在する社会問題=障害者雇用問題に対し、われわれに今何ができるのか。まず、そこからスタートしなければならないと思います。

「中小企業家しんぶん」 2006年 8月 5日号より