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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年1月25日号より

シリーズ5

不良債権とともに消える金融機関

オーバーバンキング論 今宮謙二中央大学名誉教授に聞く(1)


 前回の日銀関係者の話に、オーバーバンキング(銀行の過剰状態)を解消して、収益性の高い金融機関をめざす必要がある、とありました。昨年から、財界やエコノミストの間で、にわかにこの「オーバーバンキング」論が広がってきています。

 実際、都市銀行は4大グループに再編され、不良債権の処理の加速化も含め、日銀の速水総裁は「大銀行はかなり思い切った自己再生策を打ち出している」と12月17日の衆議院予算委員会で評価。また、10月24日に開かれた柳澤金融担当相の私的懇話会「日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会」では、「日本は銀行が多すぎる。伸びる銀行は伸ばし、だめな銀行は退出を促すべき」との意見が委員の支持を集めたと報告されています(日経新聞10月25日)。現実的に、この1年間で地域金融機関も淘汰合併が進み、急激な金融再編が行われています。

根拠のない議論の意図するところ

 このような動きをどのように考えたらいいのか、国際金融論の今宮謙二・中央大学名誉教授に聞きました。(次号と2回にわたって紹介します)

 「オーバーバンキング論は日本の人口が多いか少ないかというのと同じくらい根拠がないものです。どの金融機関も必要とされたから生まれてきたのですから。ただ、現在なぜこのような議論が出てきているのか、それを見ていく必要があります。

 90年代後半から進む金融ビッグバンのねらいは、国際的投機取引ができる金融機関として、大手行を巨大グループに再編していくことにあります。現在4大グループがありますが、それは従来ワンセット主義(鉄鋼、ゼネコン、流通など各分野の企業を系列に持つ)できた各グループ内大手行間の主要取引企業の急激な再編をも促すことになります。要するに同一グループ内にゼネコンは複数いらない、再編することによって効率化を図る流れです。不良債権処理の現状から見ても、まず不採算の過剰債務企業をつぶし、日本の産業構造を、大企業を中心に再編していく過程です。

消える地域金融機関

 直接、市場から資金を得られる機会が少なく、間接投資に頼る中小企業は、当然こういう時期は、借り入れが増え、債務超過状態になる。すると金融機関から「不良債権」扱いです。

 バブル時に発生した不良債権は大手行が主に持っており、地域金融機関は大手行ほど踊らなかったため、悪質な不良債権は持っていなかった。しかし、長期不況の中で良質な中小企業の業績が悪化し、不良債権化する。そしてそれを支えきれなくなった地域金融機関が再編されるという流れです。オーバーバンキング論はそれを積極的に促す役割を果たしているのです。

 しかし、金融機関の間にも競争は必要です。競争があれば経営をより真剣に考え、取引先との信頼関係を確立し、そのために情報開示を積極的に行うなど取引先をより大切にしようとします。金融機関が持つ資金力と情報で、地域の中小企業を育成し、将来の安定的な取引先としていく。

 地域の発展こそが地域金融機関の発展につながります。金融市場は利子も需給で決まるなど、もともと不安定で投機的な要素が強い。高い収益率を上げることは求められていないので、余剰は何らかの形で取引先や地域に還元する。そういった金融機関が今地域では必要とされているのです」

(つづく)

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