中小企業憲章と私

子どもたちに夢と希望あふれる社会を

宮城同友会代表理事 佐藤 元一 ((株)佐元工務店社長)


 モデルとして学んだ「ヨーロッパ小企業憲章」前文の「小企業」「ヨーロッパ」「EU」等の字句を読み替えてみました。

 「中小企業は日本経済の背骨である。中小企業は雇用の主要な源泉であり、ビジネス・アイデアを産み育てる大地である。中小企業が最優先の政策課題に据えられてはじめて、“あたらしい経済”の到来を告げようとする日本の努力は実を結ぶだろう。(中略)

 中小企業は、日本における社会的・地域的統合はもとより経営革新、雇用創出を維持する存在として認識されなければならない。それゆえに、中小企業と企業家精神のための最良の環境が創造される必要がある」。

 EUと日本の中小企業の置かれた状況の酷似に驚かされると同時に、体の底から勇気が漲(みなぎ)ってくる感じです。

 公共事業の縮減・削減で建設業界の淘汰の波が、中央からいよいよ地方に押し寄せてきました。東北1のゼネコンの倒産から始まって、今年に入り、宮城県建設業協会のリーダーでもある地元ゼネコン2社が続けて倒産しました。地域経済への影響は大きく、県では直ちに対策相談室を設置しました。また、先行きが見えないため、自主廃業の会社も続出しています。

 一定規模以上の会社は会社更生法や民事再生法等により、再生の道は開かれています。が、多くの中小企業は、会社の財産は無論のこと、社長一族の全財産も没収され、再起可能な条件はほとんどなくなります。まじめな中小企業の社長ほど、やむなく命に代えて借金を返すために自殺するという不幸な現象はなくなりません。1度の失敗で奈落の底に落とされ、なおかつはい上がる可能性も与えられない実態を見聞きした子ども、後輩が再建に立ち上がる気にはなれませんし、ましてや起業家精神を育(はぐく)むことは困難です。

 富士山が雄大で美しいのは裾野が磐石だからです。事業者数の90%以上、就業労働者数の80%以上を占める中小企業が、日本経済の裾野です。日本経済が富士山のように裾野を広げて磐石になるためには、中小企業に働くわれわれがプライドと使命感を持って働き、元気になることが必要です。

 そのためには、中小企業憲章制定運動を通して、われわれ中小企業を地域の皆さんに正しく認識してもらい、地域のあるべき姿を共に語り合い、地域経済の再生に地域の皆さんと共に力を合わせていくことだと考えます。それは、同友会の「3つの目的」を具体的に実現するための運動でもあると思います。

 われわれの後に続く子どもや後輩に、夢と希望に満ちあふれた社会と会社を残すためにも、憲章制定運動をライフワークとして取り組む覚悟です。

「中小企業家しんぶん」 2005年 5月 15日号から

このページのトップへ ▲

同友ネットに戻る