中小企業憲章と私

しっかりと自立した企業のネットワークで

大阪同友会代表理事 堂上 勝己 (梅南鋼材(株)社長)


 わが社は大阪市西成区で鋼材の販売と加工の仕事をしています。主に、機械メーカーやプラントメーカーの下請けの鉄工所に材料の供給をしています。

 西成区を含む大阪湾臨海部は、鉄鋼関連の中小製造業が集積しています。基幹産業の大企業の下で戦後の高度経済成長を底辺から支えてきました。反面、その大半は自社で完結できず、互いに協力、連携しながらこの地域で共生しています。いわば、伝統的な古いタイプのネットワークとクラスターが形成されている地域です。

 とくにバブル崩壊後、親企業の海外進出などのため、この地域の仕事量は激減しました。

 わが社は同友会で学んだとおり、提案型の営業を心がけてきましたが、究極の顧客ニーズは「何か仕事がないか?」でした。これだけは、品質改良やサービス向上と違い、わが社だけの努力では解決できない要求でした。

 しかし、あきらめませんでした。考え抜いた結果、わが社の取引先ネットワークを活用した仕事の回し合いを思いつきました。そこで取引先に「仕事の話があれば、貴社の都合(能力、価格、納期など)で断らずに必ず弊社に相談してください」とお願いしてまわりました。すると、この話が広がり、今までは無かったようなところから、さまざまな引き合いの話を頂けるようになりました。ただ、問題は決済方法でした。これにはわが社が間に入り、発注先への支払をわが社が肩代わりすることにしました。

 そのうち、仕事を受ける側の問題も分かってきました。従来、特定の親会社の下で言われたとおりの仕事をすることに慣れきっており、新しい注文主からのちょっとした要求でも、こたえるのが大変だと文句を言うのです。

 現在は鋼材価格が高騰し、どの取引先も注文主に価格転嫁できないと悩んでいるのですが、本当の問題は、この適応力の無さ、わがままが、親会社にものを言えない理由なのではないかと思うようになりました。同友会の会員企業からは想像もつかないことですが、大多数の中小企業は自立できていないのです。

 現在、この西成区でも後継者不在などの理由で廃業が相次いでおり、集積状態の維持そのものが危機にさらされています。

 集積が完全に崩れてしまう前に、ネットワークをより強力なものにすること、そのためには1社1社の中小企業がしっかりと自立すること。まさに中小企業憲章の言うところではないでしょうか。

「中小企業家しんぶん」 2006年 1月 15日号から

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