学習資料(中小企業憲章)

「中小企業憲章」学習運動推進のために

2005年6月1日 中同協・中小企業憲章学習運動推進本部

1.中小企業憲章とは何か ― 中小企業が世の光となる時代を

  • 近年、経済のグローバル化が進展する中で、産業や地域の空洞化、地域経済の衰退が顕著になってきました。このままでは、日本経済の健全な発展と国民生活の安定は望みようがありません。日本経済を草の根から再生するためには、中小企業・自営業が元気になり、その本来の力が発揮できるような環境を整えることが必要です。
  • 中小企業憲章とは、日本の経済・社会・文化及び国民生活における中小企業・自営業の役割を正当に評価し、豊かな国づくりの柱にすえることを国会が決議し、憲章の精神を実現するために、現行の中小企業基本法をはじめ、諸法令を整備・充実させる道筋を指し示すものです。
  • すでに、EUでは、2000年に「欧州小企業憲章」を制定し、中小企業を「ヨーロッパ経済の背骨」「雇用の主要な源泉であり、ビジネス・アイデアを産み育てる大地」であるとの理念を掲げ、ヨーロッパ経済戦略の中核に中小企業を位置付けています。日本でも、2004年版『中小企業白書』は、「中小企業は過去も現在も将来も経済社会を先導する存在である」と記しており、中小企業を正しく評価する気運がおこりつつあります。
  • 「国民や地域と共に歩む」ことをめざす中小企業家同友会では、中小企業憲章の制定を広く国民運動として提起していこうと考えています。併せて、地域経済の活性化を促す、「中小企業振興基本条例」の制定、あるいは時代にそくした条例の見直しを各自治体に呼びかけていこうとするものです。
  • 21世紀の中小企業・自営業は、人間がより人間らしく生きていくことが可能な社会を構築する大きな人類史的使命があるといえます。そのためには、中小企業・自営業が世の光となって輝くことのできる環境が必要であり、「中小企業憲章」の制定が切望されるのです。

※もともと、憲章には次の3つの語義が挙げられます。(1)契約的性質をもつ国家の根本法に付される名称。例えば、13世紀イギリスの大憲章(マグナカルタ)。(2)国家間の文書による合意で、特に多数国間の条約に付される名称。例えば、国際連合憲章。(3)公的な主体が一定の理想を宣言する重要な文書に付された名称。例えば、日本の1950年制定の児童憲章(内閣法制局法令用語研究会編『有斐閣法律用語辞典』)。中小企業憲章は、(3)を基本としますが、宣言するだけでなく、(1)の根本的で実行性のある性格をもったものをめざします。

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2.憲章に盛り込まれる内容 ― 私たちの願い

 憲章の理念・目的を実現するために、私たちは次の内容を提起し、国民の合意をめざすことが大切ではないでしょうか。

(※以下の文章の“私たちは”とは、中小企業で働く人々はもちろん、政府、国民すべてを呼称することをめざしています。)

  1. 私たちは、中小企業が日本経済の発展に寄与してきた役割を認識し、新しい時代ニーズに対応しつつ、その能力と活力を生かす形で21世紀の新たな日本経済を築くことに努力します。
  2. 私たちは、中小企業が自主的に経営し、自立的に発展できることを確信し、大企業はその存在にふさわしい責任を果たすことを要望します。
  3. 私たちは、中小企業がNPOやコミュニティ・ビジネス、SOHOなどの新しい事業形態とともに発展していくと考えます。
  4. 私たちは、中小企業の理解を深め、その姿を正確に伝えるように努力します。
  5. 私たちは、中小企業が消費者・国民の信頼を集め、あてにされ、社会の期待にこたえることを希望します。
  6. 私たちは、女性の社会参加を励ます中小企業の貢献を重視し、また、女性企業家を支援します。
  7. 私たちは、障害者の自立した生活の基礎となる雇用を生み出し、「だれもが共に暮らせる」共生社会をつくる中小企業を支援します。
  8. 私たちは、中小企業のネットワーク活動や企業間連携が活発化し、経営活動における連帯が高まることを期待します。
  9. 私たちは、中小企業が雇用確保や納税、地域づくりなど地域社会の期待にこたえ、地域経済の主役であることを認識します。
  10. 私たちは、地域の中小企業を中心とした産学官や金融機関、市民が学び合い、生かし合い、創造の輪を広げることを促進します。
  11. 私たちは、日本の農林水産業の再興に中小企業の知恵と技術を活用し、食料自給率の改善に貢献できるように支援します。
  12. 私たちは、中小企業家が政策の立案と実行協力の能力を高め、立法・司法・行政との新たな協力関係をつくることを期待します。
  13. 私たちは、中小企業の国際貢献を支援します。とくにアジアとの経済的な共生に努力します。
  14. 私たちは、地球環境の保全に果たす中小企業の役割を重視し、支援します。
  15. 私たちは、教育において豊かな労働観を養うことを重視し、企業経営の魅力と意義の理解を広げ、起業への関心を高めることに努力します。
  16. 私たちは、中小企業が科学の成果と技術の発展を有効に活用できる環境をつくります。
  17. 私たちは、中小企業の意見が集約され、その努力が公正に評価される環境をつくります。

 こうした願いを広く集め、憲章制定に向けて、国民の世論を大きく高めていくことが望まれます。

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3.なぜ同友会は中小企業憲章の制定を提唱するのでしょうか

 では、次になぜ同友会が中小企業憲章を提唱するのかを考えてみましょう。

 第1に、同友会はめざすべき企業像としての「21世紀型企業」やあるべき日本経済の方向など、憲章の目標となる内容を明らかにしてきました。それは、経営指針づくりや「労使見解」(中小企業における労使関係の見解=中同協)をベースにした社員教育活動など強じんな体質の企業づくり活動、その原動力となる経営者の自己革新の推進、中小企業の経営努力が報われる経営環境改善活動を、同友会3つの目的の総合的実践として進めてきたからです。つまり、国民の理解と共感を得る実践を積み上げてきた実績があるといってよいでしょう。

 第2に、国民の中小企業に対する認識を変えることが求められていること。これも同友会運動のなかで痛感させられてきました。共同求人活動、インターンシップ活動等を通して、教育者や学生、父母の中小企業に対する正確な見方と信頼を確かなものにすることの重要性です。憲章制定は、国民の中小企業に対する意識の変革を促すことになります。

 第3に、各同友会で取り組まれている産学官連携、共同開発グループ等の新しい仕事づくりや地域づくりが、中小企業の活路を展望する憲章の精神を実践で示していることです。これらの新しい地域ビジネスモデルや政策モデルが同友会運動の中から育ちつつあることによって、憲章が抽象的な言葉ではなく、実践に裏付けられた先行事例を含めて提起できるのです。

 第4に、金融アセスメント法制定運動の広がりに見られるように、同友会の政策・提言内容とその実現をめざす運動が、国民的運動へと発展しうる広がりと深さを増してきていることです。

 2004年の中同協第36回定時総会の「総会宣言」では、「私たちは、中小企業憲章の制定が、同友会運動の歴史の中で創造的に形成され、発展してきた理念にもとづく必然的な運動方向であることに確信を持ち」としていますが、まず、私たち自身がその認識に立つことが大切です。

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4.「中小企業憲章」制定運動を進めるための4つの柱

 中同協は、昨年8月の第1回常任幹事会で憲章学習運動推進本部(本部長・赤石会長)を設置、今年1月の第3回幹事会では8名の推進委員を選任しました。推進本部では「中小企業憲章」制定運動を進めるために次の方針を提起しています。

憲章制定運動を進めるための4つの柱

 第1の柱は、憲章の大学習運動をおこすことです。学習の中身は、自社が置かれている業界と地域の問題点―何が経営発展の阻害要因となっているのか、どんな経営環境が望ましいのか―を大いに語り合う、さらには、日本経済における中小企業の位置づけ、欧米諸国との政策比較、今後の政策課題(中小企業基本法との関係)等を深め、憲章に盛り込む内容についての認識を高めることです。

 第2の柱は、各同友会で「中小企業振興基本条例」制定運動に着手することです。県及び支部単位で地域経済を分析し、自治体の状況をよくつかみ、自治体、研究者、他団体とも協力して、地域経済の活性化をめざし、条例の制定または抜本的見直しに着手することです。

 第3の柱は、憲章、振興条例づくりの運動を同友会3つの目的の総合的実践としてとらえ、各同友会のビジョンとの関係を明確にしつつ、新しい仕事づくり、地域づくりへ挑戦し、組織の強化、前進をはかることです。2010年、全国5万名会員の目標実現に連動していきます。

 第4の柱は、個々の会員企業と憲章との関係をより明確にすることです。経営指針の中に自社と地域や業界とのかかわり、展望を盛り込み、労使が共に自社と日本の未来に夢を描く、「わが社と憲章」「私と憲章」の視点で熱い思いを語り合うことです。

 このような壮大な憲章制定運動を進めていきましょう。

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