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【05.04.23】第11回京都経営研究集会で中小企業憲章・地域振興条例を学ぶ(京都)

これでいいのか日本経済! 閉塞感を打ち破り中小企業が主役の時代を創る

50名が参加して運動の主体者として意見交換をした京都経営研究集会第6分科会

【『同友京都』184号(2005年5月)より】

第6分科会
「これでいいのか日本経済!閉塞感を打ち破り中小企業が主役の時代を創る
 〜産・官・学から迫る「中小企業・地域振興条例」と「中小企業憲章」〜

パネラー 岡田 知弘氏 京都大学大学院経済学研究科 教授
      高野 祐次氏 墨田区地域振興部商工担当産業経済課長
      井上 誠二氏 建都住宅販売梶@代表取締役(左京支部)
コーディネーター 藤沢 敏明氏 泣ニティー企画 代表取締役(上京支部)

◆報告の概要

 当分科会では上記テーマによる基調報告が三氏のパネラーにより行われ、その後藤沢コーディネーターからの補足質問への各氏の回答という形式で、全体像を把握し易くする為の方策がとられた。何しろ、当会としても初めての取り組みであり馴染みの薄いテーマである故、せめて本日の参加者だけにでも理解して貰おうという配慮だろう。

 まずは、パネラー一番手の京都大学大学院経済学研究科教授の岡田知弘氏から要約して行こう。氏は当会景況調査にも携わっておられるが、専門の調査、統計データ図表を駆使し、京都経済そして地域経済の集積である日本経済の現状を分析し、中小企業の果たせる役割について話された。

 製造業・中小零細企業・消費型産業のウエイトの高さ故、急激に後退し疲弊した京都経済をいかに立て直すか、それは、地域産業の実情に合った個性的な物づくり、活動、地域社会づくりの為に努力し、域内循環型のまちづくりを進めることである。そこには、今迄欠如していた自治体による京都に合った中小企業政策(例えば中小企業・地域振興条例)導入の視点が必要である、と。

 また、「二重の国際化」等(グローバル化・規制緩和・バブル崩壊後遺症・産業構造・政策欠如)により衰退していった地域経済・社会の再生の担い手として、今こそ地域に根ざした中小企業、その共同組織(例えば当会)が主役となりうる時である。その潜在的可能性を努力により実現すべく、上記条例を制定させ、産学公連携のもと地域再生を図ることが求められている、と。

 続いて、地域振興条例の近畿ブロック推進委員でもある当会の井上誠二氏は、上述の重複部を割愛し簡潔に、新中小企業基本法等で地域密着との美辞麗句を唱えているのとは裏腹の、中小企業政策の貧困さを訴えた。
 バブル崩壊後、大企業と中小零細企業の収益力の格差が益々拡大しつつある現状や、国の中小企業政策費が2003年度には、1729億円と一般歳出費の僅か0.36%にまで減少している事実。そして京都市にあっても、本年度の商工振興対策費はマイナス予算であることを。だからこそ、是非とも我々同友会がリーダーシップをとって、市民運動として条例制定を実現させていこう、と。

 最後は基礎的自治体と認定されている特別区の東京・墨田区より、地域振興部商工担当産業経済課長の高野祐次氏。
 区の概要・製造業(日用消費財中心)のウエイトの高い、中小零細中心の産業のアウトライン・予算と組織等々の説明があり、盛り沢山な産業振興施策のあれこれへと報告は展開されていく。

 75年、公選された新任区長が街の衰退ぶりにショックを受け、産業施策の必要性を強く感じ、直ちに実態調査に取りかかり、79年には全国でも先駆けとなる墨田区中小企業振興基本条例を制定。これをバックボーンに、支援施設の整備、専門相談員の配置、ビジョン策定、新しいすみだ「3M運動−小さな博物館・マイスター・工房ショップ−」、産学官連携の取り組み″全国初の大学(早稲田大学)と地域の包括的協定等″等々、魂を入れる活動を、産業振興会議が中心となって、現在も進行形だ。至れり尽くせりの様だが、チャレンジする企業を応援したいという姿勢に揺るぎはない。七十二名の担当職員も現場に密着し、嬉々として働き、行政と企業の一体化がはかられている、と。まさに、行政が手腕をフルに発揮している墨田区である。


◆グループ討論の特徴、私の感想・学んだことなど

 グループ討論では活発な討議が様々な視点からなされ、建設的な意見が沢山出ていたと、その質問から推察される。当分科会では、各グループからの質問にパネラーが応じる形をとり、テーマを深耕することに主眼を置いた運営だった。墨田区の事例に、″もし、その条例がなかったとしたらどうなっていただろう″という観点からも、条例の必要性、重要性が導き出されていた。

 中小企業憲章のタイトルに惹かれ参加したのだが、結果的には殆ど触れられずじまいで騙された感もある。が、基礎自治体の最高法規であるこの条例の各地での積み重ねが、国家レベルにおいては中小企業憲章となる、という理解をし、支部をはじめ各会においてこの重要性を広め学び、運動体の主体として取り組んでいかなければならない課題であると認識した。(下京支部 辰巳和弘)

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