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【08.02.06】中小企業振興基本条例の制定状況について【北海道/全国の状況】

中小企業振興基本条例の制定状況について

 中同協は、昨年12月15日に中小企業憲章制定運動推進本部主催の2007中小企業振興基本条例制定運動交流会を開催するなど、全国的な中小企業振興基本条例(以下、振興条例)の制定推進を支援しています。本稿では、2008年4月から施行される新しい札幌市中小企業振興条例の紹介と、現時点での振興条例の制定状況を概観し、同友会がどのようにかかわっていく必要があるのかをまとめます。

しい札幌市中小企業振興条例を制定〜条例のあり方を提言し続け、全面改正【北海道】

中小企業の役割と振興の意義が明確に

 「札幌は、事業所のほとんどを中小企業が占めるまちであり、中小企業が経済の基盤をなしている。中小企業は、経済活動の全般にわたって重要な役割をはたしているだけでなく、その振興により、働く人の収入が増え、消費が活発化し、雇用が創出される。さらに、市の税収が増加して福祉や教育などの市民サービスが向上し、まちづくりが発展するなどの好循環が生み出される。このようなことから、中小企業の振興は、単に中小企業だけにとどまるものではなく、札幌の産業、経済と市民生活全体にかかわる課題といえる。」

 この文章は、昨年の12月12日、札幌市議会において全会一致で可決された新しい「札幌市中小企業振興条例」(2008年4月1日施行)前文の冒頭部分です。旧条例を全部改正し、まったく新しい条例を制定したものであり、この種の条例の制定は、政令指定都市としては初めてです。北海道同友会がかかわったものとしては、帯広市につぐものです。

 本条例は、前文で中小企業の役割とその振興の意義を明確にし、基本理念、市の責務、中小企業者等の努力、大企業者の役割、市民の理解と協力、市は中小企業者等の受注機会の増大に努めることなどが謳(うた)われ、同友会が目指しているものと基本的に一致する内容となっています。

会員との業種別懇談会をもとに要望・提言

 北海道同友会札幌支部(会員数1850社)では、中同協の提起を受け、政策委員会が中心となって中小企業振興基本条例の改正・制定に取り組んできました。2005年2月には、「データでみる札幌市の特徴と今後の可能性」をまとめ、札幌市の全体像を把握。2006年2月から「建設関連業」「食品関連業」「印刷関連業」「機械・金属関連業」の会員との懇談会を 順次開催、そこで出された意見を条例の改正とあわせて札幌市への要望・提言として整理してきました。

 それらをもとに、2005年、06年に同友会と「札幌市経済局長との懇談会」を開催。福井経済局長は条例改正に積極的な姿勢を示し、一昨年、担当職員を北海道同友会の「全道研究集会」の中小企業振興条例分科会(帯広支部の事例報告)に派遣しました。

「条例見直し検討会」と同友会のかかわり

 一方、旧条例に基づく札幌市中小企業等振興審議会委員である三神北海道同友会代表理事、清水昭子理事(札幌支部政策副委員長)が、審議会で条例改正を働きかけてきました。その結果、一昨年12月、審議会内に「条例の見直しに向けた検討会」が設置され、その委員に同友会から出ている清水氏も選ばれ、昨年1月から5月までに3回の検討会が開かれました。

 清水委員を、三神・守・本郷の3代表理事、土屋札幌支部長、政策委員会が全面的にバックアップ。条例のあり方を提言してきた努力が実ったものです。

 なお、昨年12月の道議会でも、北海道同友会の意見が一部反映された「北海道経済構造の転換を図るための企業立地の促進及び中小企業の競争力の強化に関する条例」が可決されています。

北海道同友会 経営・政策局長 西谷博明


【全国の状況】振興条例制定の気運が加速〜現場の声を反映させる仕組みづくりを

 振興条例は、県レベルでは2002年に「埼玉県中小企業振興基本条例」、2004年に「茨城県産業活性化推進条例」が制定されていました。各同友会が行政や議会に条例制定を働きかけ、かかわりを深める中で、2005年に「三重県地域産業振興条例」、2006年に「福島県中小企業振興基本条例」、そして2007年には、「千葉県中小企業振興に関する条例」と「熊本県中小企業振興基本条例」、「北海道経済構造の転換を図るための企業立地の促進及び中小企業の競争力の強化に関する条例」、「青森県中小企業振興基本条例」が相次いで制定されました。

 また、沖縄県が2008年2月県議会に「沖縄県中小企業の振興に関する条例(案)」を上程する予定であり、神奈川県は2008年度中の制定をめざしています。両県の同友会は県の担当部局との懇談を重ねるなど同友会の意見・提案が盛り込まれるよう働きかけを強めています。

 さらに、奈良県と徳島県県知事も振興条例に積極的に取り組むことを表明。両県とも急ピッチで制定準備が進められ、両県の同友会も年末年始に条例への意見・提案作成など、その対応に追われました。2月県議会での制定をめざしています。

 このように、以前は振興条例を制定することに消極的であった自治体も含め、振興条例制定の気運が加速する状況にあります。2007年は県レベルだけでなく、市町村レベルでも振興条例制定が次々と進められるとともに、地域の独自の課題を振興条例に組み込むものが目立ち、量と質ともに振興条例制定のうねりが新たな段階に達したものと評価できます。

同友会がかかわった振興条例の特徴と教訓

 同友会が深くかかわって制定された千葉県と北海道帯広市の事例を整理すると、以下の特徴と教訓があります。

 第1に、条例理念の形成にこだわり、理念を高く位置づけていることです。千葉県と帯広市の両事例とも、条例理念として中小企業振興と豊かな地域づくりは密接不可分の課題と捉えています。また、国内の他の振興条例のみならず、EU小企業憲章など欧米の中小企業政策理念もよく研究・整理し、振興条例の理念や条文に反映されていることが注目されます。

 第2に、条例文づくりを自己目的化させず、地域ビジョン・戦略論議を先行・並行して行うことで、地域戦略に関して共通の認識のもとに振興条例を作成していることです。

 第3に、条例作成・制定のプロセスに十分時間をかけ、丁寧に行政や議会、中小企業団体などの関係者の共通認識をつくる努力を重ねていることです。

 第4に、行政が中小企業の現場の声・意見を聴き、反映させる仕組みを大切にしていることです。

 第5に、条例を作りっぱなしにせず、条例に基づいた施策・事業の実施という次のステップに移る仕組みと合意があることです。

 第6に、行政のキーパーソンを見出し、同友会のリーダーがキーパーソンや行政トップと適切な関係、信頼を築くことができたことです。

 第7に、条例制定に同友会の果たした役割が大きく、あてにされる同友会として地域で確固たる地歩を占めつつあることです。

 第8に、中小企業憲章の学習と大局的視点があったからこそ、振興条例づくりをリードできたことです。

 今後、振興条例と中小企業憲章の取り組みの相乗関係がより意識して取り組まれることが期待されます。

中同協政策局長 瓜田 靖


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