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【08.07.14】【欧州小企業憲章視察記】(2) 新しい社会づくりに挑戦する「小さな国」

社会に醸成された信頼関係

中同協が5月18〜25日に行った「中小企業憲章ヨーロッパ視察」の視察記2回目は、欧州小企業憲章の精神が生きるフィンランドを紹介します。(中同協政策局長 瓜田靖)

ヨーロッパ小企業憲章が生きる国フィンランド

 今回視察したフィンランドでは、「ヨーロッパ小企業憲章」の精神が生かされた国づくりをしているのを目の当たりにしました。ヘルシンキでは、テクノポリス(Technopolis)というサイエンスパークと、ヘルシンキ・ビリウム・フォーラム(HVF)という行政や企業、大学、市民ボランティアが参加する社会実証実験プロジェクトを視察しました。

 今回視察したフィンランドでは、「ヨーロッパ小企業憲章」の精神が生かされた国づくりをしているのを目の当たりにしました。ヘルシンキでは、テクノポリス(Technopolis)というサイエンスパークと、ヘルシンキ・ビリウム・フォーラム(HVF)という行政や企業、大学、市民ボランティアが参加する社会実証実験プロジェクトを視察しました。

ヨーロッパ最大のテクノロジーセンター

 テクノポリスは、自治体の出資でスタートしましたが、今は民間の出資も受け入れて株式上場しています。現在8カ所に(ロシアにも1カ所)あり、1200社(内、600社がハイテク関連)が集まるヨーロッパ最大のテクノロジーセンターとのこと。

 ヘルシンキのテクノポリスは、空港から700メートルの至近距離にあり、国際的な展開を前提にした立地戦略をとっています。地元工科大学と連携して中小企業を育てていくインキュベーター機能も備えています。

生活の場から産業化進めるリビング・ラボ

 HVFでは、「リビング・ラボ」という、生活の場において研究開発から産業化・実用化を進める実証実験のプロジェクトを見聞。ヘルシンキ市や公的機関、大学、企業、そして市民4000人が参加して、交通、教育、医療などの分野でデジタル情報サービスについて一体となって実験開発に取り組んでいます。

 個人の生活の場で公私一体となり、実証実験とマーケティングを一体的に進める社会システムをつくっているという話に驚かされ、日本とは違う信頼関係が社会に醸成されているのかもしれない、という感慨を持ちました。

 おそらく個々の技術ではフィンランドよりも日本の方が優位にある技術が多いでしょう。しかし、フィンランドが人口520万人の「小さな国」であるがゆえに、国家が一体となって戦略をもってデジタル社会の形成と新しいビジネスの創造に邁進している姿が印象的でした。

 もちろん、世界最大の携帯電話メーカー、ノキアの存在感はどこでも大きいのですが、オープンマインドな姿勢と国民的な信頼感は日本の大企業とはだいぶ違うようです。

 また、国内市場が狭いがゆえに、中小企業も初めから海外市場を視野に入れた展開をしています。視察先では「フィンランドはアジアに最も近いヨーロッパ」であることが盛んに強調されました(日本からヘルシンキまで片道10時間)。彼らが日本や中国などアジアのマーケットを熱いまなざしで見ていることがよくわかりました。

キーワードは対話

 今回の視察先で頻繁に出てきたキーワードが対話(Dialog)。ヨーロッパの歴史の教訓から、争いをどう克服するかという姿勢とともに、違いを前提として共通点を見出そうという知恵を感じました。この対話の精神こそが、本連載の次回に予定しているフィンランドの教育で発揮されています。そして、その教育で育った人材が市民社会を形成し、フィンランドの産業を支えていると考えれば、フィンランドの世界最高水準の競争力の真の源泉はこの辺にあるのかもしれません。

(つづく)

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