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【08.08.11】【欧州小企業憲章視察記】(4) 憲章の成果と深化の方向性

日本の強みを再認識し、課題を探求した旅

中同協が5月18〜25日に行った「中小企業憲章ヨーロッパ視察」の視察記4回目(最終回)は、視察全体を通してのまとめです。(中同協政策局長 瓜田靖)

 今回の視察の成果を筆者なりにまとめてみました。

求心力を持ち続ける欧州小企業憲章

 第1に、今回の視察は日本での中小企業憲章を考えるうえで、タイムリーな企画であり、多くのヒントを得ることができたことです。

 特に、EUのヨーロッパ小企業憲章は想像以上に加盟各国の政策に位置づけられており、小企業憲章の継続的な求心力は衰えていない印象を持ちました。例えば、2004年からは「憲章会議」が毎年開催されており、今年はスロベニアに官民の関係者が300人ほど集まり、各国の小企業憲章での経験や成果を交流しています。また、小企業憲章の行動指針に基づく政策や制度の優良事例集も毎年発刊されています。

憲章の進化・深化示す欧州小企業議定書案

 第2に、小企業憲章の法的拘束力を強化するためのSBA(欧州小企業議定書)案を担当官から直接説明を受けたこと。SBA案では、“Think Small First”(小企業を第一に考えること)原則の徹底などが謳(うた)われていますが、小企業憲章が進化・深化しつつある場面に立ち会うことができたことは視察のタイムリーな成果でした。正式なSBA案は帰国後の6月末に発表されており、その翻訳は「視察報告書」に収録する予定です。

欧州最大の中小企業団体と交流

 第3に、UEAPME(欧州クラフト・中小企業同盟)という欧州最大の中小企業団体と交流し、彼らのEUに対するロビー活動の状況や問題意識に触れることができたのも成果です。

 当同盟は同友会と同じく自由加入原則で自前の財政を持つ組織ですが(三井先生によると傘下組織の中には政府から補助を受けている団体もあるとのこと)、そのような独立した組織がヨーロッパの中小企業団体では主流を形成し、EUのソーシャルパートナーとして政策決定に中小企業を代表して参加しています。その意味で、同友会のような自主・自立の中小企業団体の普遍性を再確認した視察にもなりました。

 また、視察記(1)で紹介したように、当同盟は「小企業」に政策的こだわりをもっていました。そこからは欧州企業の93・4%が10人未満のマイクロ企業であるとの現実に根ざして要望し、政策を追求する健全な運動団体としての姿勢を垣間見ることができました。

フィンランド・モデルから多くの知見・示唆

 第4に、フィンランドの視察からは、いまだに整理しきれないほどの知見と示唆を得ることができました。

 特に、90年代前半の金融バブル崩壊と最大の貿易相手国・ソ連の崩壊による経済危機から立ち直り、国民の結束を固めて「小さな強国」を築いてきた戦略性に、多くの学ぶべき教訓がありそうです。教育、福祉、医療などの無償と平等、雇用の安定を実現しながら、世界有数の産業競争力を形成しているところに世界的な関心が集まっています。また、フィンランド・モデルは小企業憲章が活(い)かされた国づくりでもあることが注目されます。

憲章の歴史的背景を考える

 第5に、視察の中で問題意識が刺激され、帰国後に学習意欲が高まったことも思わぬ成果でした。特に、今回の視察では、ヨーロッパと日本の違いを強く意識させられましたが、その歴史的背景を考えることの大切さを学びました。

 最後に、ヨーロッパとの比較で日本の強み・弱みを考え、日本の良さ・強みを再発見、再認識するきっかけとなったことも貴重な成果であり、その探求は今後の中小企業憲章制定の課題でもあります。


(おわり)

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