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【08.12.05】経営者の生の協議を反映〜条例制定までの道 帯広市中小企業振興ビジョン提言を終えて

 北海道帯広市では2007年に制定された「中小企業振興基本条例」の実行エンジンとして、中小企業振興協議会を設置しました。この協議会では、論議の結果を中小企業振興ビジョンとしてまとめ、帯広市に提言しました。協議会の渡辺純夫会長(東洋農機(株)代表取締役会長、北海道同友会帯広支部副幹事長)に、今までの経過も含めて寄稿いただきました。

北海道同友会帯広支部副幹事長 帯広市中小企業振興協議会会長 渡辺純夫・記

同友会中心に「振興条例」の検討プロジェクトが発足

 2005年秋、「第24回北海道中小企業家同友会全道経営者“共育”研究集会」(道研)が帯広で開催されました。

 当時、落合帯広支部長と岩橋幹事長は、支部の活動方針を「地域と共に生きる中小企業」とし、同友会の金融アセスメント法制定運動後の重点課題を「地域の中小企業と共に歩む同友会活動→中小企業の経営環境の改善」と定め、道研の1つの分科会として中小企業振興条例研究を設けました。

 分科会報告には東京都墨田区の高野課長(当時)を招き、その機会を生かして帯広市の関係部署との条例に関する懇談も実現。これを契機に2006年1月、帯広支部における「中小企業振興条例の検討プロジェクト」が発足、私が座長をお引き受けすることとなりました。

商工会議所、帯広市と協働三位一体の体制作り進める

 プロジェクトの進め方の協議過程で、今回のプロジェクトには地域産業界として帯広商工会議所と協働することが不可欠との意見から、帯広市も参画をした「三位一体」の体制づくりを進めることとなりました。

 地域の課題・中小企業振興の方策・地域財政の状況と将来の見通し等、討議の範囲は極めて広かったのですが、条例文面をどうするのかの討議より、討議の経過が重要との認識から、記録を大切に残すことを重点としました。

 その結果(1)条例の理念を示す前文を設けること、(2)条例目的の明示、(3)中小企業振興政策の継続性を明示する市長の責務等の条項を設けること、(4)条例を地域産業振興の中核と位置づけるために、条例の名称を「帯広市中小企業振興基本条例」とするよう行政サイドに強く要望しました。

 2006年10月に開催された「市長とのふれあいトーク」の場において帯広市から条例を新条例の制定で進めることを中心に、わかりやすい「概念図」で骨格が示されました。内容は検討プロジェクトの要望内容に添うものであることがわかりました。

 プロジェクト発足から12回の委員会開催を経て、2007年3月27日、帯広市より提案された新条例が帯広市議会において決議されました。

 順調な過程を経て新条例が施行された要因としては、(1)帯広商工会議所と協働して討議・要望が進められたこと、(2)会議所の主要議員の多くが同友会会員であり、同友会理念の理解が得られやすかったこと、(3)市役所の担当部署が、以前から条例改定の認識があったこと、(4)プロジェクト委員の多くが過去から行政との交流があり、意見交換が進めやすかったことなどが挙げられます。

条例制定後のエンジンとして中小企業振興協議会を設置

 7月20日には「帯広市中小企業振興基本条例」第4条(市長の責務)を具体的に実現するための施策の議論の場として、「帯広市中小企業振興協議会」が発足、会議所・同友会の推薦、中小企業団体・金融機関・関連行政機関の代表が委員に就任しました。

 協議会の検討を進めるために4つの部会「創業・モノづくり部会」「経営基盤・人材部会」「交流部会」「産業基盤部会」が設置され、中小企業経営者を中心に部会員が活動に参画し、40人の関係者による協議会・部会討議が進められました。

 各部会の主要協議項目は、産学官連携、産業クラスター形成、地域人材の育成、人材確保や求職者とのマッチング支援、インフラ(産業集積)&共用設備、事業環境整備などで、取りまとめた論点の具体策が「中小企業振興ビジョン提言」の骨格となりました。

帯広市職員の意識も変わる今後の施策に大きな期待

 検討の基盤のための研修会を含めると、提言に至るまでに委員会・部会の開催は(1回平均一50分)実に74回におよび、そのための出席はすべて無報酬でした。

 8月27日、提言書は砂川帯広市長に手渡しされたが、提言事項は帯広市が策定する「帯広市産業振興ビジョン」作りの重要な参考となり、その骨格が平成22年度から長期政策の基本として帯広市において遂行する「帯広市第6次総合計画」(仮称)の産業振興分野に位置づけられることになっています。

 今回「帯広市中小企業振興基本条例」の制定から、「帯広市中小企業振興協議会」までの一連の活動は、産業界・行政が一体となって進めたことから、40人の各委員が、中小企業の経営環境作りについて共通のベクトル合わせに協働することができ、地域人的資源の向上に結びついたと感じています。

 行政関係では、約20人前後の帯広市職員が、「経営者の生の協議」を聞き捉(とら)えたことから、論議のまとめや資料の用意など膨大な事務局業務の中で大きく成長したと感じています。

 この面から私は、今後の有効な政策遂行を大きく期待しているものです。

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