<< 中同協・各地の活動の目次に戻る印刷用画面 >>

【10.09.08】【中小企業振興条例をどう活かすか―『憲章』の閣議決定を受け次のステップへ】(1)

 「中小企業憲章」が6月に閣議決定されました。憲章制定運動と並行して、各地域においては中小企業振興基本条例の制定運動が進められてきました。今後、憲章を地域の中で活かし、実践していく点では、すでに条例が制定された地域での経験や知恵、教訓から学ぶべきものがあると考えられます。

 今回からシリーズで各地域での条例の制定過程と制定後の変化、制定の意義と成果、課題などを紹介します。第1回は、千葉県の事例を紹介します。

中小企業の発展が豊かな地域づくりにつながる

千葉同友会中小企業振興基本条例・中小企業憲章学習推進本部副本部長 杉山 武氏(トーク税理士法人 代表社員)

 2010年6月18日、政府は「中小企業憲章」を閣議決定しました。中小企業家同友会が目指してきた中小企業憲章制定運動の成果として本当に喜ばしいことです。

 これに先立ち千葉県では2007年3月に「千葉県中小企業の振興に関する条例」が制定されています。憲章、条例とも「ヨーロッパ小企業憲章」の精神を取り入れ、憲章では「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」、また条例では「千葉県の中小企業は、本県経済の成長を支える存在として、地域社会の担い手である」と規定しており、それぞれ中小企業の経済的・社会的役割を高く位置づけています。

 千葉県の振興条例制定の経緯では、千葉同友会も深く関わることができました。2002年から毎年「中小企業振興条例の制定」を県への政策要望で取り上げるとともに、2005年11月には「中小企業振興基本条例・中小企業憲章学習推進本部」を立ち上げ月1回のペースでこの問題に取り組んで来ました。

 当時の県知事は振興条例制定に積極的であり、トップのリーダーシップにより県商工労働部による「地域勉強会」が開催され、県職員の方が、地域の中小企業者の集まりに40回以上出向き現場の声を条例に反映させるべく努力されました。千葉同友会の支部との「地域勉強会」にも7回参加されており、同友会の考え方を伝えることができたかと思われます。

 地域勉強会の結果を踏まえ、千葉の中小企業が元気になり地域が活性化するためにはどうしたらいいのかを検討する研究会が設置されるのですが、22 名の委員のうち3名が同友会メンバーであったことや、最終的にまとまった「ちば中小企業元気戦略」の起草委員会にも1名参加できたこともあり、同友会の理念を主張することができました。

 この中小企業振興の理念と施策の継続性を保証し担保するものとして条例が制定されたわけですが、ほぼ私たち同友会が要望していた内容になっており、積み重ねてきた努力が実ったものだと思っています。

 条例制定後3年が経過し、「元気戦略」の見直しが現在行われていますが、その内容が県民に十分浸透しているとは言い切れず、施策の有効活用が今一歩という状況です。千葉同友会でも千葉県行政との「共催」による経営研究集会の開催、また「元気戦略」の項目ごとの勉強会をシリーズで行うなどその普及に努力していますが、その活用に向けて今後も一層の働きかけをする必要を感じています。

 従来の「中小企業基本法」のもとでは、ベンチャー支援や“やる気”のある中堅企業を育成することに傾きがちであった中小企業施策が、中小企業憲章が制定されたことにより、家族経営の小企業を含めての中小企業全般の活性化を求める施策への転換が期待でき、国の方針に影響を受ける千葉県の元気戦略も内容が変わるものと考えます。

 一番重要なことは、千葉同友会の第6次中期ビジョンのテーマであった「私たち中小企業の発展が豊かな地域づくりにつながる」ことを本気で考え、中小企業経営に誇りと自信を持って進むことではないかと思います。今後もこの観点に立って力を注ぐ決意です。

<< 中同協・各地の活動の目次に戻る印刷用画面 >>

同友ネットに戻る