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【11.01.13】【中小企業振興条例をどう活かすか】(4) 中小企業振興基本条例制定32年【東京都墨田区】

「現場主義」貫く行政と協働

 2012年春、高さ634メートルの世界一高いタワー「東京スカイツリー」が開業する墨田区。日ごとに伸びてゆく建築中のタワーを見ようと連日観光客でにぎわっています。

 これを契機に「ものづくりと観光」を融合させたまちづくりに取り組む墨田区は、32年前の1979年、丹念な中小企業の実態調査をもとに、全国に先駆けて「墨田区中小企業振興基本条例」を制定。以来、中小企業者と学識経験者、区職員が参加する産業振興会議を中心に、「現場主義」を貫く職員が中小企業の現場に足を運びながら、中小企業と行政が協働でまちづくりを進めてきました。

「3M運動」も産業振興会議から

 1985年に始まった「3M運動」も産業振興会議から生まれた施策です。3M運動とは、墨田区を象徴する産業や文化に関係のあるものを作業場などに展示し、実際にものづくりにかかわる人と交流しながら墨田を知ってもらおうという運動で、小さな博物館(ミュージアム)、マイスター、工房ショップ(マニファクチャリングショップ)の頭文字をとった3Mです。この運動に参加し、産業振興会議の委員を務めたこともある(株)片岡屏風(びょうぶ)店の片岡恭一社長(東京同友会会員)は、次のように話します。

 「すみだマイスターに認定されたマイスターによる創作大賞コンテストでは、異分野の職人が組んで新たなものを創造し、審査員の前でプレゼンしました。伝統産業の融合で新たなものづくりに挑戦する試みであると同時に、ものづくりは得意でもその良さをアピールすることが苦手な職人にとって、そのことを学ぶ機会となりました。

 1991年に墨田区から話があり、工房の一部を小さな博物館として開放しました。区発行の『すみだ新発見ものづくり探訪』で紹介されるだけでなく、区が旅行会社にも発信し、地元はもちろん、ものづくりに興味を持つ方が全国から訪れるようになりました。修学旅行のものづくり体験でも利用されています。多くの人に訪れてもらい、話を聞く中で、屏風の新しい世界が広がっていきました。

 私は、江戸小紋や桐箪笥(たんす)、江戸べっ甲、羽子板などのマイスターと墨田の職人グループ『パルティーレ』をつくって新たなものづくりに挑戦し、毎年展示会で発表しています」。

ものづくりと観光の融合めざす

 墨田区では、このほか異業種交流や早稲田大学との産学連携、ものづくりの後継者を育成する「フロンティアすみだ塾」などの施策を展開。「すみだ地域ブランド戦略」も始まっています。

 昨年9月30日に東京同友会の墨田・江東・台東支部合同例会「東京スカイツリーと地域活性化」で、墨田区の鹿島田和宏・産業観光部産業経済課長は、「東京スカイツリーの商標権は東武鉄道にありますが、産業が活性化するよう、区内の中小企業に限り、スカイツリーに関する商品化権について1企業あたり売上総計1億円までライセンス料を無料とすることで合意した」といい、「都内有数の産業集積地・墨田ですが、事業所数・工場数が減っており、スカイツリーをきっかけにビジネスチャンスを広げてほしい」と呼びかけました。

 スカイツリーから徒歩5分の片岡屏風店では、来年夏までには「パルティーレ」の共同展示や、ものづくり体験できるフリースペースを備えた工房に改築する予定で、「スカイツリーを訪れた観光客にも、すみだのものづくりを体験してもらえれば」と話しています。

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