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【14.07.23】【特集】憲章・条例推進月間

 中小企業憲章が2010年に閣議決定され4年となりました。中同協は6月を「中小企業憲章・条例推進月間」として、6月3日には「中小企業憲章・条例推進月間キックオフ集会」を開催(本紙6月15日号既報)。月間にあわせて各同友会でも多彩な活動が行われています。北海道・岩手・神奈川・中日本6同友会合同・岐阜・京都での取り組みを紹介します。

中小企業憲章4周年記念セミナーで北川長官が講演【北海道】

北川長官 北海道では中小企業憲章制定4周年記念セミナーが6月23日に開かれ、全道の同友会会員、行政や関係団体、大学から130名が集いました。今回は共催として、中小企業基盤整備機構北海道本部、また、経済産業省北海道経済産業局、北海道、北海道商工会議所連合会、北海道商工会連合会、北海道中小企業団体中央会、北海道商店街振興組合連合会、北海道中小企業総合支援センターの後援を受けての開催となりました。

 当日は「中小企業憲章の理念と、中小企業振興のための新しい政策展開」と題して、中小企業庁の北川慎介長官が演壇にたちました。

 直近の3年間で約35万社の中小企業・小規模事業者の減少が続いています。

 北川氏はこれまでの中小企業政策について触れ、「時代の要請に応じて基本理念が見直されつつ、金融制度、振興政策などのさまざまな支援施策が整備・充実されてきた」と述べました。

国の強みを支える中小企業

 少子高齢化や過疎化・都市一極集中、雇用問題など中小企業を取り巻く環境が大きく変わる状況を踏まえて、北川氏は「ブルガリアやペルーなど、世界的には資源大国と言われている国は、中小企業が国の経済の中心ではない。日本のように中小企業や小規模企業が経済の中心である国は世界的にもそれほど多くはない。これからはきめ細かな中小企業・小規模事業者支援が必要不可欠だ。地域を支えているのは中小企業であり、中小企業が元気になれば、国が豊かになる。圧倒的多数を占め、わが国の強みを支える中小企業と小規模事業者が、ものづくりやサービス、海外展開などの新しい挑戦を応援していくことが必要だ」と強調し、具体的な中小企業政策を例示し中小企業憲章制定後の中小企業政策の方向性について語りました。また、北川氏は中小企業・小規模企業の果たす役割や魅力を中小企業経営者自らが次代に伝えてほしいと話し、協力を求めました。

 北海道では2014年6月現在、中小企業憲章の理念を生かした中小企業振興基本条例は16の自治体で制定され、道内人口の62%が住む自治体で制定されています。

初めての4団体主催―中小企業憲章4周年のつどいin岩手 それぞれの胸の中に余韻が残ったグループ討論【岩手】

杉原氏 6月10日、盛岡で開催された中小企業憲章4周年のつどいin岩手は、岩手県商工会議所連合会、岩手県商工会連合会、岩手県中小企業団体中央会、岩手同友会の初めての4団体主催共催で行われました。当日は中央会からは谷村会長が、また久慈商工会議所からは向会頭が出席。4団体はじめ県議会議員、盛岡市議会議員、県職員など80名が一堂に会しました。

立場を超えて意見交換

 基調報告では、大阪同友会の副代表理事、憲章・政策本部長の杉原五郎氏(アルパック(株)地域計画建築研究所会長)から、「東日本大震災からの復興と地域の再生、エネルギーシフトに向けて〜大阪同友会の憲章・条例運動の現状到達点と今後の取り組み〜」をテーマに報告がありました。

 はじめに大阪同友会が点から線、面に展開し取り組んできた条例運動、地域づくりの実践を披露、その後岩手に置きかえて復興、そして直面する人口減少・少子高齢社会にどう向き合うか提起がありました。中でもこうした地域課題を希望に転じる鍵が、エネルギーシフトにあること、条例運動とエネルギー問題を一緒に考えていくことの必要性にも触れ、域内でいかに貨幣と資源を循環させていくかが大切であることなどの報告がありました。

 参加者からは「導入が検討されている外形標準課税や、募集しても人が採れない岩手の現状を見たら、このままでは中小企業が無くなる危機。今こそ中小企業振興基本条例が必要だ、と強く感じた(県議会議員)」「議員も含めさまざまな立場の方とグループ討論をするという体験が初めてだった。互いに意見を出し合うことから新たな発想が生まれる(商工会職員)」など、立場を超えた意見交換の場が新鮮に感じられたようでした。

 まとめに立った中同協副会長佐藤元一氏は、「地域を救うのは中小企業とあらためて確認した。4団体が共にテーブルを囲み未来を語ったことに大きな希望を感じる」とメッセージを送り、胸の中に余韻が残るつどいとなりました。

環境と産業集積を両立させる「川崎モデル」を目指して【神奈川】

合同例会 神奈川同友会は憲章月間の取り組みとして6月17日、川崎市ユニオンビルにて「地域社会の主役として輝く中小企業をめざして!」をテーマに川崎支部・政策委員会・青年部・KDWOMEN(女性部)の合同例会を開催しました。当日は川崎市経済労働局からも参加があり、76名が参加しました。

 例会では緑川賢司・(株)ミナロ代表取締役を座長に、大林弘道・神奈川大学名誉教授、伊藤和良・川崎市経済労働局長、星野妃世子・(株)スタックス代表取締役社長がそれぞれ報告しました。

「川崎モデル」を目指して

 大林氏からは、憲章制定までの歴史と米国・欧州の中小企業政策についての比較を紹介。環境と産業集積を両立させる「川崎モデル」について川崎市の歴史的・地理的意義の説明のあと、製造業の存続とバランスのとれた産業構造という課題を提起しました。

条例は地域のルール

 伊藤氏からは、川崎市経済労働局は中小企業の現場の声を聞いていきたいとし、条例は地域のルールづくりであり、中小企業・行政・地域住民のみんなで作っていきたいと報告しました。川崎市は人口増加率日本一で大都市の中では生産年齢人口が高く、完全失業率が低いなどとても恵まれている地域であり、地域の実態に沿った条例を元に政策を展開し「川崎市から来ました」と誇らしく言える地域にしたいと力強く話しました。

地域の中小企業として

 星野氏からは、(株)スタックスの状況と市の条例作成委員会の委員に選ばれたことを報告。川崎市経済労働局とは早朝勉強会の実施や海外進出支援を通して関係ができてきたことに触れ、条例制定の動きが本格化し「ワクワクする条例づくり」を今回の参加者と共有し誰もが納得できる条例を作りたいと抱負が述べられました。

 3者の報告を受け、グループ討論を行いました。討論後、座長の緑川氏は「伊藤局長が中小企業に歩み寄り、中小企業の声を生かした条例づくりが進んでいます。行政は担当者が変わることもあります。しかし、伊藤局長の考える『川崎モデル』を引き継ぐ条例づくりを私たちで進めていきましょう」とまとめ、閉会となりました。

「中小企業憲章」を私たちの力に〜中小企業庁より横田次長を招いて【中日本6同友会合同】

中日本6同友会合同中小企業憲章4周年の集い

 2010年6月18日に中小企業憲章(以下、憲章)が閣議決定されて4年が経過しました。憲章の制定は同友会が長年訴えてきた要望であり、その後の中小企業政策にも影響を及ぼす歴史的な出来事でした。そこで今年も閣議決定の日に「制定4周年の集い」を開催し157名が集いました。

中日本6同友会で共催

 今回の集いは、愛知・石川・岐阜・富山・福井・三重の6同友会共催で行われ、講師兼パネリストに横田俊之氏(中小企業庁次長)を招きました。憲章の精神がどう具体的政策に生かされているのか、また中小企業に今、何が期待されているのか講演がありました。

 引き続き、横田次長、大林弘道氏(神奈川大学名誉教授)、加藤明彦氏(愛知同友会代表理事)によりパネル討論が行われました。

 3者の議論から、中小企業が社会を牽引している認識を広めること、指針書に憲章を反映させ、激動の時代を乗り越える強靭な企業づくりに各社が邁進することの重要性を確認しました。また、その精神、内容の具体化、そして憲章を国民の総意とする国会決議の必要性も話しあわれました。

社員や家族の幸せを願って

 また昨今、議論されている外形標準課税適用拡大などによる中小企業への課税強化の動きに対しては、加藤代表理事が「『中小企業憲章』の理念に反する中小企業の課税強化に反対します」のアピール文を紹介、パネリストや参加者一同の賛意を得ました。

 次に主催各県の憲章・条例の取り組みが報告されました。行政とどう連携していくかという問題意識を中心に、他団体とも協力して各地での中小企業振興基本条例制定運動が進められている様子が紹介されました。

 最後に豊田弘氏(愛知同友会副代表理事)は、「憲章は社会からの期待であり、それに応えられる経営努力が経営者には決定的に求められること、条例は作る事が目的ではなく、社員とその家族や地域の人々が幸せになることが目的である」とまとめました。

社員と家族の幸せにつながる『中小企業の幸せづくり運動』【岐阜】

豊田氏中小企業憲章推進月間学習会

 岐阜同友会では6月9日、「中小企業憲章推進月間」にあわせた学習会を昨年度に引き続き政策委員会が企画開催し、26名が参加しました。

 今回は、身近な同友会会員が経営と運動の両面から憲章・条例制定に取り組んでいる実践報告から学ぶ事を目的に、愛知同友会の中小企業憲章推進副本部長の豊田弘氏(知立機工(株)・社長)が報告しました。

 「社員と家族の幸せにつながる『中小企業の幸せづくり運動』」と題した報告で豊田氏は、「最初はこの運動がもつ意味がよくわからなかったのが本音。しかし今の経営環境で働く社員がこんなに頑張っているのに報われない現実。憲章制定運動とは、ここを何とかすること。自社では何ともできない環境を考えていく運動ではないかという思いに至った。社員とその家族の幸せを考える、そしてその街に住む人々の幸せを求めていくことが憲章、条例制定運動だと確信を持った」と報告。

 さらに、「基本は、自社経営の中で『どうも何かが変だ』を解決していくこと。運動の出発は、社員と世の中の矛盾や何か変と思うことを語り合うこと。大げさな事じゃなくていい。小さなできる事から始めよう」と強調しました。

 また、「県で条例が制定された愛知県では、行政の対応も変わってきて頑張る会社を応援する姿勢が見える。しかしそこがスタートで、逆に経営者は襟を正し覚悟を決め、誰かがやるだろうではなく、自分がやるという気概を持ってこの運動、経営に取り組まなければならない」と結びました。

運動は自らが行動してこそ

 参加者からは、「難しい問題だと思っていたが、社員の幸せのためと言われるとわかりやすかった」「憲章ができた後が大事で、そこからがスタートだという事を改めて認識し、すべての社員を幸せにするためには必要なものだと感じた」「憲章・条例制定運動は、本来の同友会運動であり、誰かがやってくれるものではない。自らが行動していくものであると強く感じた」といった声が聞かれました。

 政策委員会として今後は、県内各地域の会員や自治体と意見交流を深め、会内外に憲章・条例の意義を理解してもらえる活動に取り組んでいく予定です。

中小企業の社会性を自覚した 経営の強化・促進をはかろう【京都】

宮本昭彦氏『中小企業憲章』研修交流会2014

 京都同友会では6月16日、中小企業憲章推進月間の取り組みとして、一昨年、昨年に引き続き、京都府中小企業団体中央会・京都府商工会連合会・(一財)京都府中小企業センターと共催で「広めよう!生かそう!私たちの『中小企業憲章』研修交流会2014」を開催し、会内外から94名が参加しました。

 開会あいさつの後、今回の取り組みの趣旨説明を米田明京都同友会政策委員長がおこない、「本日の講演を通じて『中小企業憲章』の精神がどれだけ国の中小企業政策に生かされているかを確認し、中小企業の社会性を自覚した経営の強化・促進をはかり、地域経済・社会の振興を担う企業育成の機会としよう」と呼びかけました。

 講演は、まず経済産業省近畿経済産業局総務企画部長の宮本昭彦氏より「経済情勢と今後の見通し」の演題で行われ、続いて同局産業部中小企業課長の小菅修氏より「最近の中小企業・小規模事業者政策について」と題して行われました。

中小企業情勢と小規模企業政策

 宮本氏はバブル経済崩壊以降の概括的な情勢分析の後、景気の本格的な上昇のためには設備投資と個人消費が鍵を握り、今後どういった新しい成長戦略を描いていくのかが課題であると報告。その上で、女性の労働力など日本が活用しきれていない資源について問題提起がなされました。

 小菅氏からはこれまでの中小企業政策は時代の要請に応じて基本理念が見直されてきたことが紹介され、昨年改正された中小企業基本法に基づく小規模企業政策についての説明が重点的になされました。

 参加者からは、「今日の中小企業を取り巻く経済情勢について大きな視点で学ぶことができました」「国際収支の構造変化や小規模事業所政策について理解が深まりました」「まだまだ中小企業が経済を牽引する力であり社会の主役であるという位置づけにふさわしい社会的評価がされているとは思えないが、各企業、経営者、団体が徐々に自らの意識を高めて運動をすすめていくことが肝要だと思う」などの感想が寄せられました。

 また今回の研修会には地方議員が各会派より17名、行政機関より役職員14名が参加するなど、今後の運動の拡がりや連携の契機になりました。

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