Ⅰ.概観

中同協が情報化を推進するきっかけは、中同協を構成する個々の同友会の展開が前提にありました。しかし、1980年からの中同協ビジョンの過去の議論の中に情報化の課題があり、それらを実現するための財政的裏付けが数年にわたり蓄積されてきていたことがなければ、この10年間行われてきた情報化にかかわる投資は実行することができませんでした。

1992年から中同協主催で同友会事務局の実務交流会が開かれ、業務の洗い出しと合理化のための交流が行われ、コンピューターなどのツールの活用が事務局には必要であると提起されました。90年代後半からはインターネットの普及とともに、各同友会でホームページや電子メールの活用が一気に進んでいきました。

組織的には2001年から中同協幹事会の諮問機関として「中同協情報化促進検討会」(代表・鋤柄修氏、現在は中同協会長)が設置され、全国の同友会を結ぶ中同協としてのIT活用が検討・開始されます。さらに03年の中同協常任幹事会で「IT(情報技術)を駆使する経営者団体になろう」と提起され、05年には検討会が改組され、「情報化推進本部」となり、検討提案だけでなく、普及・運用推進が図られてきいきました。

各同友会でホームページやメールの活用が進む中、各同友会独自にシステムを構築・維持する費用と手間を省くために、2004年から中同協が「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)構想」(中同協がネット上からシステムを提供し、各同友会はその利用に応じて利用料などを払う)のもとに、e.doyuやJobwayを生み出していきました。

いまや統一ドメインは47同友会中42同友会で、e.doyuは42同友会23000IDで運用され、e.doyuを全会員で運用されている同友会では、支部活動をはじめ小グループ活動などを役員が独自に組織運営する重要なツールとなり、基幹システムとなってきています。

またこれら情報化の進展に伴って、個人情報保護問題も顕在化してきたことから、個人情報保護法本格実施前に中同協として指針やマニュアル、チェックリストを作成するなどして、内部への啓蒙をおこないました。その一方で本法案が中小企業経営にも大きく影響するため、経済産業省との懇談やパブリックコメントへの意見提出などを繰り返すうち、経済産業省ガイドライン見直しの審議会に委員を送ることにもなりました。

中同協は、統一ドメイン構想を提示した2001年から、インターネットの普及が加速するに従って、ネットワーク上ではデータおよび情報システムの一極集中と各同友会での分散管理・処理が並行し、情報センターとしての役割は強まってきています。