第1回人を生かす経営全国交流会 2008年11月21日

「人を生かす経営全国交流会」アピール

 私たちは、「人が育つ企業と地域をつくる~「労使見解」の精神を柱にした企業の総合的実践をすすめよう」のテーマのもと、11月20日~21日の両日にわたり、「人を生かす経営全国交流会」を、近江商人発祥の地・滋賀で開きました。折しも、景気が一気に後退局面を迎え、世界的な信用収縮や円高等、内外情勢が激しく揺れ動き、経営環境がますます厳しくなる中で本交流会は開催されました。

 本交流会は、「中小企業における労使関係の見解」(1975年発表、以下労使見解)の精神の普及と労働環境改善、経営指針成文化運動を担当する経営労働委員会、社員をパートナーに共に育つ企業づくりを進める社員教育委員会、地域に人を残し、新卒採用ができる企業を増やしていく共同求人委員会の三委員会が担当し、同友会がめざす企業のありようを真剣に論議し、謙虚に学びあいました。

 私たちは厳しい状況の中でこそ、労働環境を整備し、経営者は経営姿勢を確立し、明確な経営指針のもとに労使の信頼関係を築くことが何よりも大事であると説いた「労使見解」の精神を再確認することができました。

 競争至上主義の経済社会が破たんしはじめ、経済活動は国民の暮らしのためにこそあるべきとの認識が高まってきました。その中で私たちは、中小企業こそが、国民の暮らしを支え、地域に活力をもたらし、日本の未来の担い手であるとの自覚をいっそう高める必要があります。これは、同友会が提唱してきた「21世紀型中小企業づくり」が、さらに強く求められる時代となってきているということでもあります。

 そのためには同友会で学び、経営指針を作り、社員と共に育ちあい、若者に雇用の場を与えながら新たな事業を切り開いていく、全社一丸の経営の実践が何よりも大切であるとの確信を深めることができました。

 私たちはいつも地域の発展と平和で民主的な、人間尊重の社会を願っています。そのために経営者が学び続け、自己変革を図り、企業を改革していく努力を惜しんではならないと考えます。

 安定した持続可能な社会へ向けて、国民の70%以上の雇用を担う中小企業が元気になること、そのためにも小さな仕事づくりを始めやすくする仕組みを、地域(行政、研究機関、金融機関など)とともに考え、行動していくことが求められています。

 これらの時代の要請にこたえるため、私たちは1993年に提起された「21世紀型中小企業づくり」の実践の上に立ち、本交流会で提起された「人を生かす経営」の課題を次の3点にまとめ、この3点の総合的実践の必要性を確認しました。

第1に、社員とともに自社の存在意義を問い直し、明確な経営指針を持ち、指針にそって実践し、新たな仕事づくりに挑戦していくこと。

第2に、労使が共に育ちあい、信頼関係を確立し、社員一人ひとりが誇りと喜びを持って、自主的・主体的に働くことで自らを成長させ、社会的使命感を持って働くことを通じて、地域貢献できる社風を確立すること。

第3に、若者が将来に希望が持てる雇用の場を提供し、行政・教育機関と連携し、企業間ネットワークを強化し、持続可能な社会づくりの輪を広げていくこと。

 今こそ、この厳しい経営環境に経営者が社員とともに立ち向かい、正規雇用を維持し、新たな仕事づくりをしていくため、「人を生かす経営」を同友会活動の全ての柱に据えて学び実践していくとともに、本交流会のアピールを全中小企業経営者、地域づくりや人育てにかかわるすべての機関に発信し、共に「人を生かす」時代をつくっていくことを呼びかけます。

2008年11月21日
中小企業家同友会全国協議会 人を生かす経営全国交流会