中小企業問題全国研究集会(長崎)声明文
「決して悪徳商人にはならない」
私たち、中小企業家同友会全国協議会に結集する14都道府県の中小企業家同友会は、1974年2月16、17の両日、長崎市に於て第4回中小企業問題全国研究集会を開催しました。
この研究集会は(1)中小企業問題・中小企業運動を整理し、政策化、理論化を図る。(2)参加者の指導能力を高め活動家を養成する。(3)全国的な交流により、各地同友会の水準を高める。(4)現状の正しい認識と将来の展望を明らかにするとともに会の要望を内外に示す。という目的をもち更に現在の中小企業をめぐる諸情勢にかんがみ特に今回の重点として、環境の激変に対処する中小企業家の正しい認識と展望を明らかにし、あわせて長崎の中小企業の繁栄を願って実施したものです。
この集会には全国各地14の同友会と8の準備会・世話人から計290名が集り、八つの問題についての分科会でそれぞれ討議を深め、全体会議でそれぞれ体系づけ強固にしました。こうして地元長崎県同友会の設営の努力とあいまって、この研究集会は大きな成果をおさめました。
集った人数の上でも、討議の内容のひろがりと深さの上でも過去3回の研究集会の規模・内容に比べて格別の進歩があっただけでなく、このように中小企業家が自らに関連の深い諸問題を具体的に、かつ高い理論水準で参加者一人残らず真剣にしかも自主的に討議に参加したということは恐らく全国的にもまれなことではないかと、この集会の成功を自負するものです。
分科会及び全体会議での発言を通して浮きぼりにされたことは、今日の中小企業経営の諸困難は、個々の中小企業家の経営能力では解決しえないほど根ぶかく、しかもそれが複雑にからみあっているということでした。それは石油危機にみられるように外交・経済政策における自主性の欠如、大企業・大商社の石油危機を口実にしたやりたい放題の悪徳商法、それについて有効適切な手をうち得ない政府の無策などのもとで、中小企業は、原料・資材の不足、あっても手が出ないほどの高値、在庫品値崩れの不安と需要不振、金融引き締めの直撃、慢性的な人手不足と74年春闘を背景にした賃金の高騰、更には仕入れ、販売の選択の自由を奪う物不足をテコとした系列化。中小企業分野への大企業の参入など、経営努力をこえた諸困難が山積していることが強調され、それだけに、経営体質を一そう改善し、経営者の総合的能力を高めるとともに、経営環境の是正につとめるという同友会の三大目的を深く確認しました。
中小企業家同友会全国協議会はじめ、各地同友会は、各政党、政府諸省庁及びそれらの各地方の出先機関や地方自治体に対し、陳情・要望をくりかえし、又国民や他の中小企業団体に共同の行動を呼びかけ、この窮状打開につとめていることが報告されました。その効果はまだ充分といいきれないうらみがありますが、このつみ重ねは必ずや、私たちの経営に有利にはね返ってくるものと参加者は一致して確信しました。
私たちはこの研究集会を通じて自らの力の小ささを痛感し、いっそう同友の輪をひろげ、全国津々浦々に中小企業の当然の要求の声を高め、共同の行動をつみ上げ、ひろめねばならないと決意するとともに、一、中小企業はこの国民総困難のときにあたって、国民とともに生き、決して悪徳商人にはならないことを呼びかける。二、国民・中小企業を困難に陥れている諸原因を排除するため力を合せてふんとうすることを声明するものです。
1974年 2月 17日
第4回中小企業問題全国研究集会