「我等はここに新たなる日本中小企業家同友会を結成するに当り、我等の会は中小企業家の、中小企業家による、中小企業家のためのものであることを宣言する」これは、1957年4月26日創立された日本中小企業家同友会(現東京中小企業家同友会)設立趣意書の冒頭の文章です。新たな会を創ろうとする先人の情熱が伝わってきます。創立総会は東京・赤坂プリンスホテルで開かれ、会員数は70名でしたが、その勢いは天を突くばかりした。
設立趣意書では、「天は自ら助くるものを助く」の精神を強調し、自主・自力で生き抜こうとする企業家精神をうたっています。また、会運営においても「沈滞とボス化」を避けるための民主的運営の提起であるとか、共通の課題にもとづく他団体との協力、提携、かつ「政治的には特定の党派に偏することなく、あくまで中小企業家としての利害に基き、協力を要請するもの」と明記しています。この趣意書の内容は、先の「全中協」以来の優れた伝統の継承をはかりつつも、さらに歩を進めて、新しい時代に対応した中小企業運動を展望する意欲と使命感を盛り込んだものでした。その後確立される「同友会3つの目的」や同友会理念の基礎となる内容です。
同友会創立の年の秋、第2回総会の頃に入会した田山謙堂氏(中同協顧問)は「難しい論議をしているので面食らった」そうです。しかし当時日本は「開放経済体制に突入する入口に立っており、内外情勢も流動的で中小企業とっても厳しさは増すばかり。社会とか政治の観点から世の中を見ておかないと、自分の経営の見通しもたたないという切実感があった」と語っています。(中同協発行『同友会運動の発展のために』より)
同友会は1957年東京で創立された翌年大阪で、62年愛知、63年福岡、65年神奈川と設立されていきました。5つの同友会の代表者は、相互に連絡を取り合い、代表者会議を重ねながら、今後の運動の進め方について論議しました。確認されたことは、中小企業家自身による中小企業のための組織が同友会運動の本筋であり、そのためには自主的で民主的な運営をすること、大企業偏重の経済政策をただし、日本経済の民主化、中小企業の社会的地位向上をめざすことなどでした。そのためにも会を大きくし、全国組織を結成しようとする気運が高まってきました。全国協議会の設立には、その後12年の準備期間を要することになります。
「中小企業家しんぶん」 2002年 5月 5日号より