1.中小企業の変革を促す「企業変革支援プログラム」の搭載
経営者自ら企業の立ち位置を明確にし、企業の成熟度の経年変化をたどり、全国的な傾向値を知ることができる「企業変革支援プログラムステップ1」が、中同協経営労働委員会のプロジェクトで作成されました。
このプログラムは、同友会運動が長年の間に培ってきた、企業づくりにかかわる見解(たとえば「中小企業における労使関係の見解」(労使見解)や「21世紀型中小企業づくり」など)と、経営指針づくりや社員教育、共同求人などのさまざまな活動や、会員の経営実践などの教訓をもとにまとめられています。ステップ1とステップ2の2つの構成からなり、ステップ1は企業の定性分析の指標ともなる内容で、5つのカテゴリーと22の項目から構成されています。
同友会では、ステップ1を全会員に行うことで、会員の経営実態をリアルにつかみ、同友会の例会のテーマ設定や学びの体系づくり、経営指針成文化運動、政策活動などにも活用できると期待されています。
2009年度には、そのプログラム「ステップ1」の回答・集計結果表示システムをe.doyuに搭載し、入力データが瞬時にグラフ化され、会員の経営課題が分かりやすく提示される環境を作りました。
2009年5月20日に日本経済新聞で紹介され、中小企業の定性分析ができる指標とそのデータの集積が、過去にはなかったことから、行政や金融機関、研究機関などから注目されてきています。
2.SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の可能性
2008年からe.doyu上にSNSによる同友会の枠を超えた会員同士の交流の場を設けることが試験運用されました。まず兵庫同友会で試験運用され、12月からは複数の同友会による広域で試験運用を実施しています。
SNSは、中同協情報化推進本部で2006年からe.doyuへの搭載の可能性が検討されてきました。「その地域にあって仕事が成り立つ会員の出会いの場づくり」をテーマに、企業間連携の可能性を探るため、兵庫同友会のワット神戸や滋賀同友会のHipなどのヒアリングも行われています。
だれもがコミュニティー(テーマ別掲示板)を設定し、自由に交流できる仕組みをつくることで、会員間交流を促す半面、トラブルも起きやすいことが予想され、その管理主体や事務局のかかわり、e.doyuとの連携の必要性や開発コストなど、3年越しの議論を経て、2008年度から試験運用となったもの。
これまでのe.doyuは、組織・グループに仕切られた中で会員が組織活動のために必要なプログラムをそろえ活用されてきましたが、SNSによって支部や都道府県の垣根を越えたコミュニケーションが可能になりました。
コミュニティーによる広域の会員交流ができるようになること、実名であるため信頼性の高い運用が可能であること。会員自身の自己紹介や日記を書くことができ、自らの思いを会内に紹介できること。などがその特徴です。
SNSを導入することで、会員自身がe.doyuにかかわり発信する機会が増え、広域の事業連携のきっかけを生むインフラとなる可能性もでてきました。さらに同友会の課題別運動の普及促進効果が飛躍的に高まる効果も期待されています。
兵庫同友会での試験運用(2008年2月25日~6月30日の約4カ月)では、母数:1326名中、666名(50.2%)がSNSにアクセス。e.doyuログイン回数は前年比3倍。コミュニティー数:51(支部、委員/部会、学びのサークル、経営課題別、経営テーマ別、趣味や興味別 等)。e.doyuの利用が活発になっています。
e.doyuのSNSでは、コミュニティーは以下の3種類が提供されています。
- グローバルコミュニティー(全国の会員が参加可能なコミュニティー。例:同友会の運動課題、事業連携など)。
- ローカルコミュニティー(公開、ローカルを対象とするが、全国に公開し、全国会員の閲覧も可能。例:ローカルの話題:生活・食・スポーツ・地元の興味など)。
- ローカルコミュニティー(非公開、ローカルのみを対象とし、他府県に公開しない。例:ローカルの組織課題、狭域交流、地元の仲間づくり など)
3.経営情報サイト「実践!社長学」(仮)の構築
2009年度中には、中同協としてすべての中小企業経営者を対象とした経営情報サイト「実践!社長学」を構築する。構築する目的は「会の内外を問わず、よい会社を作ろうと考えている経営者の期待にこたえられるサイトとし、これまでの同友会の企業づくりの資産を学べる内容とする」こと。(第12回中同協情報化推進本部確認事項)
同友会がこれまで蓄積してきた中小企業経営にかかわる教訓や実践の資産を集成し、実例も豊かに取り入れ発信するとともに、経営環境にかかわる課題を提起する内容として立ち上げる予定となっています。
メインに中小企業経営者(同友会役員)の経営コラムを週替わりで掲載するとともに、中小企業経営に直結するような外部環境などの変化に対して集約された経営者の声などの調査(同友会で取られた調査)を紹介していく予定となっています。
これ以外にカテゴリーは、経営者が関心を持ちそうな「経営戦略」「資金調達(金融)」「後継者育成」「社員教育」「新卒採用」「国際化」「ワークライフバランス」「IT化」「障害者問題」「地球環境問題」「企業間連携で市場創造」などが考えられています。