中小企業の魅力広げ、教育・求人の一環として
2004年6月1日 中小企業家同友会全国協議会
(2018年1月26日 改訂)
1、インターンシップの背景と現状
1997年旧「文部・労働・通産」の三省が「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」をまとめ、産学連携による人材育成の観点からインターンシップが普及していきました。三省合意は「学生(生徒)が在学中に自らの専攻・将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」としています。学生(生徒)に対して職業意識・職業観の醸成、自己の職業適正・将来設計を考えることを促すための「キャリア教育」や人事戦略としての「採用直結型」などインターンシップはさまざまな形態で広がってきました。近年では、IターンやUターンを視野に学生(生徒)に地域の企業を知ってもらうことで雇用を増やすという、地域創生の観点からも産学協働で取り組むインターンシップの役割が重要視されてきています。
反面、現状では、国際的にも見ても学生(生徒)の参加率が特に低く、事前・事後学習の不十分さや、短期間のプログラムで実施されるインターンシップに企業や学生(生徒)の参加が集中するなど教育効果の低下が課題となっています。企業にとっては、受け入れによる負担、大学側では受け入れ企業の確保の負担、学生(生徒)においては認識の低さや単位の有無など、実施にあたって大学・企業・学生(生徒)それぞれに課題があります。
インターンシップにおける主役は学生(生徒)です。就業前に企業(社会)での職業体験をすることで、職業選択や働き方に幅があることを知り、将来を真剣に考えるきっかけとなります。また生産年齢人口が2050年までに半減し、地域間格差も広がっていく中、地域の雇用につながるという観点から、学生(生徒)だけでなく企業、地域にとっても大きな価値を生むことになります。将来の日本を担う若者が人生設計できる雇用の場をつくりながら、若者を育成するという視点に立った、大学と企業が連携したインターンシップが注目されています。
2、インターンシップ取り組みの意義
中小企業を日本経済の主役と位置付ける「中小企業憲章」を推進する同友会にとって、インターンシップへの取り組みは、産学官連携の一環であり、「同友会理念」を柱にした、共に学び育ちあう環境を地域につくっていく活動です。
そのことは、中小企業に対する正しい認識や魅力を教育機関と連携しながら地域に広め、若者を残し、育てられる地域をつくる社会教育運動です。運動を広める会員企業にとっては、社員の意識の変革を促し、自社を見直すきっかけとなります。具体的には、
(1)学生(生徒)にとって
- 自立を促すきっかけとなる
- 働くことの楽しさを実感する
- 就職、企業のイメージが豊かになる
- 問題意識がみがかれ、学習意欲が引き出される
- コミュニケーションの大切さを理解する
- 中小企業を知る機会になる
- 企業家精神を学ことができる
(2)学校にとって
- インターンシップでの学生(生徒)の変化、成長を通して学校教育の内容を再考するきっかけとなる
- 進路指導にあたる先生や、学校自体の視野が広がる
- 中小企業についての理解を広げ、日本の経済社会についての認識を深める
- 地域の課題を中小企業と一緒に解決する契機となる
(3)企業にとって
- 経営者が経営理念を改めて考えるきっかけになる
- 自社の人材育成につながる
・受け入れ体制を整備することで社内体制見直しの契機になる
・学生(生徒)に仕事をわかりやすく説明するために、経営理念と自らの仕事のかかわりを見直す
・社会や地域に貢献することの理解が全社的に広がり、仕事に誇りを持てるようになる - 自社を見直す契機に
・社内業務の整理、マニュアル化
・学生(生徒)の提案に基づく改善 - 中小企業についての正しい理解が広がり、学生(生徒)が就職対象として中小企業を考えるようになる
- 自社についての正しい理解が広がり、学生(生徒)が就職対象として考えるようになる
(4)地域にとって
- 学生(生徒)に地域に根付く産業や企業を知る機会となり、地域の雇用につながる
- 地域の教育機関、行政、地元企業の連携が促進され、産官学が一体となった地域づくりにつながる
(5)同友会にとって
- 同友会の活動への理解を広げ、教育機関や行政、地域との信頼関係を築いていくものとなる
- 中小企業についての正しい理解が広がり、学生(生徒)が就職対象として中小企業を考えるようになる
- 同友会理念を学校や学生(生徒)を通して社会に広げ、企業観、社会観、職業観などを変えていくことにつながる
- 学校や行政との対応で役員や事務局自身の力量が試され、成長の機会となる
以上のように整理することができます。
実施のポイント
- 同友会として取り組む意義を役員会で論議して明確にし、状況に応じて、かかわり方を決め、取り組みましょう。
- 社員教育活動、共同求人活動、産学連携活動と連携した取り組みとなるよう、配慮しましょう。また、役員は学校とのかかわりを継続的に持ちながら信頼関係を築き、学校教育についてともに考えていく環境をつくるよう工夫しましょう。
- 受け入れ企業となることは、企業体質の強化につながり、優れた学生(生徒)に選ばれる魅力ある企業づくりへ脱皮する契機となります。経営者自ら学生(生徒)に接して、経営理念を語り、学生(生徒)と育ちあう環境をつくりましょう。
- 学校との事前の打ち合わせを重視し、自立を促すためにも学生(生徒)を主人公にした取り組みとしながら、成果を双方で共有できる体制を作りましょう。
- 同友会として参加学生(生徒)の集合研修を行い、インターンシップへの学生(生徒)の心構えを固め、レポートを提出してもらうことで成果を確認しましょう。