新型コロナウイルス感染拡大による中小企業への甚大な影響の広がりを踏まえ、中同協では3月31日に「中小企業の倒産・廃業を避けるために~新型コロナウイルスに関する第2次緊急要望・提言」を国会議員や中小企業庁に届けました。
中小企業の倒産・廃業を避けるために 新型コロナウイルスに関する第2次緊急要望・提言
私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。 今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は、あらゆる地域や業界に深刻な影響と大きな打撃を与えており、多くの中小企業が倒産・廃業に追い込まれる切迫した事態となりつつあります。 当会では、3月4日に緊急要望・提言を発表して関係省庁・各政党などと懇談を行い、その一部は政府の「緊急対応策・第2弾」にも反映されました。しかし、多くの中小企業の経営はまさに瀬戸際に立たされており、一層の支援策が早急に必要となっています。 私たちは、国民や地域と共に歩む中小企業家としてその社会的責務を果たし、日本経済と中小企業が発展できる環境をつくるために、下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。
1)緊急対策
1.中小企業をつぶさない強い覚悟と決意を
さまざまな経済・社会活動の自粛が相次ぎ、多くの中小企業が深刻なダメージを受けている。中には倒産・廃業の危機に瀕している企業もある。政府として1社もつぶさない覚悟と決意で臨んでいただきたい。中小企業の社会的・経済的役割などを示しながら、政府として改めて「中小企業を守る」「一人にしない」ことを関係機関・地方自治体などに宣言し、中小企業支援施策の意義を全体に徹底するとともに、思い切った大規模な経済対策を速やかに実施すること。業種別、業界ごとに的確な経済対策を講じること。
2.徹底した資金繰りの支援を
売上減などの影響を受けた中小企業の最も緊急な金融支援は疑似資本の供給であり、第一に既往債務の「返済凍結」、第二に「手形貸し付けの拡充」、「当座貸し越し枠の拡大」を金融機関に促すとともに、窓口体制の強化、迅速な対応、手続き・審査の簡略化を徹底すること。窓口体制強化の一つとして代理貸付の仕組みを検討すること。次に、景気の見通しが立たない中、融資をこれ以上増やすことは困難な企業も少なくない。借換保証制度を抜本的に拡充し、複数の返済の一本化、据え置き期間の延長などを可能とすること。既往債務の条件変更を行った企業に対し、格付け変更など不利な扱いをしないこと。また、今後の売上を確保するため、販路開拓などを支援する助成金制度を創設すること。
3.返済不要の給付金の支給を
ドイツは「私たちは誰も一人にしない」というタイトルで中小企業への緊急支援策を発表した。従業員10人以下の企業などを対象に、3カ月間で最大9,000ユーロ(日本円約110万円) ~ 15,000ユーロ(日本円約180万円)の返済不要の給付金を支給する。日本でも中小企業を対象に同様の制度を創設すること。
4.公正な取引条件の確保、現金支払いの徹底
新型コロナウイルス感染症の影響など、やむを得ない理由により納品の遅れなどが生じた中小企業に対して、親事業者が損害賠償請求を行うなどの優越的地位の濫用を行わないよう、ガイドラインを整備すること。大手企業の下請代金支払いを手形ではなく現金とすることを徹底すること。
5.雇用調整助成金の抜本的な拡充
雇用調整助成金については、経済悪化の深刻さを踏まえ、対象の拡大、支給限度日数の延長、助成割合の引き上げ(10分の9)など抜本的に拡充して雇用を守ること。東日本大震災時と同様に、最近1カ月の生産量、売上高などがその直前の1カ月又は前年同期と比べ5%以上減少していれば対象とすること。また一定期間については、1カ月の生産量などが減少する見込みでも対象とすること。
6.社会保険料や税金の減免
地域経済の崩壊・底割れを防ぐため、売上減少などの影響を受けた企業に対し、社会保険料の免除や固定資産税・法人税等の減免または納税猶予の特例措置を実施すること。
7.学校や公共施設の休業などによる突然の取引停止状態となった中小企業への補償
感染拡大防止の一環として、政府や自治体の突然の判断により、学校や公共施設が休業となり、中小企業が納品を予定していたものがキャンセルされる事態がある。一部の自治体ではその補償を行っているが、すべての自治体でも行うように支援すること。
8.衛生用品の市場への流通確保
マスク等の衛生用品が不足し、企業の業務にも支障を及ぼしている。政府などの備蓄品を開放するとともに、増産・供給体制を支援し、必要な業界には優先的に流通するような仕組みをつくること。
9.働く親の子育て支援~安心して働ける環境の整備を
学校や幼稚園の休校・休園により、社員が休暇を取らざるを得ない事態の中で、中小企業は業務に大きな支障が出ている。小さな子どもを持つ働く親は、学童保育や保育園の体制が十分でないなどにより、安心して働き続けられる環境が不十分である。学童保育や保育体制の拡充など、至急体制を確立すること。
10.正確な情報開示や基準等の明示による不安の払しょく
先行きの見えない不安感が社会に広がる中、過剰な自粛ムードも生まれ、経済活動の委縮・縮小に拍車がかかっている。政府・自治体による正確な情報開示と適切な発信を進めること。専門家の意見も参考にしながら、イベント・会合などの開催について、できるだけ明確な基準を示すこと。また定期的に政府方針を発表することを明示し、企業経営の今後の見通しが立てやすいような形で情報を発信すること。
11.中小企業の声を緊急施策に反映すること
国家の一大事でもあり、中小企業のひっ迫した状況と要望を把握するため、中小企業団体などから中小企業の声を聴く機会を設けるとともに、施策情報の発信を綿密に行うこと。地方の状況に応じた柔軟な支援施策を進めるため、中小企業団体も含めた幅広い分野の団体による連絡会議を定期的に開催し、地域の総合力で危機を乗り切ることを支援すること。
2)経済対策、今後の対策
1.国や地方自治体の地元中小企業への発注の増大
地域経済・社会の担い手である中小企業を守るため、国や地方自治体は地元中小企業への発注を大幅に増加させること。
2.消費税の減税・インボイスの導入見送り
景気の大きな減退が予測される中、消費を喚起し、日本経済の立て直しを図っていくために、消費税減税を行うこと。その際には、中小企業のレジ設定や料金表・ホームページ改訂など必要な対応を支援すること。中小・小規模事業者の死活問題である適格請求書等保存方式(インボイス)の導入を見送ること。
3.国民の健康と安全を保護する体制の強化・拡充
今般の新型コロナウイルス感染症の流行を教訓とし、米国の疾病対策センター(CDC)のような統一的で機能的な組織を築くこと。また、医療・介護現場では、特に地方ほど慢性的な人員不足の中、今回の感染症対策に取り組んでいる。平時から地域医療を強化し、緊急事態への備えを高めること。
以上
2020年3月31日
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜泰久
*PDF版は下記をご覧ください。
・中小企業の倒産・廃業を避けるために 新型コロナウイルスに関する第2次緊急要望・提言(PDFA4サイズ・2P))