「信用補完制度のあり方に関する検討小委員会とりまとめ(案)に対する意見」

パブリックコメント「信用補完制度のあり方に関する検討小委員会とりまとめ(案)に対する意見」
2005年6月6日
中小企業家同友会全国協議会

私たち中小企業家同友会全国協議会は、中小企業政策審議会に「信用補完制度のあり方に関する検討小委員会」が設置され、金融機関の保証協会付融資の保証範囲を8割程度に圧縮する方向等の検討に着手していとの報道に接して以来、このような制度の改定に反対である旨を表明してきました。2月初旬には、国会にて自民党、民主党、公明党、共産党、社民党の各党の国会議員および中小企業庁金融課の方々と懇談し、信用保証を縮小することは、金融機関の「貸し渋り」を引き起こす可能性があることを訴え、理解を求めてまいりました。この度、検討小委員会より「とりまとめ(案)」が発表されましたので、その評価できる点と懸念される問題点を指摘し、下記に意見を述べます。

1.評価できる点
保証協会の運用改善による利用者の利便性向上では、次の2点を評価し賛同する。

a)経営支援の強化

(該当個所)p8~9「経営支援・再生支援のための体制整備」「審査の合理化」

(意見内容)
保証協会の信用保証理念に基づく中小企業者への経営支援等は保証協会の責務でもあり、金融機関と連携して支援することは効果が期待される。

(理由)
『信用保証協会事業の基本理念』によると、信用保証協会は「(1)事業の維持・創造・発展に努める中小企業者に対して(2)公的機関として、その将来性と経営手腕を適正に評価することにより、企業の信用を創造し、「信用保証」を通じて、金融の円滑化に努めるとともに(3)相談、診断、情報提供といった多様なニーズに的確に対応することにより、中小企業の経営基盤の強化に寄与し、(4)もって中小企業の振興と地域経済の活力ある発展に貢献する」と明記されている。まさに、中小企業者への経営支援等は保証協会の責務である。特に、小規模な中小企業など経営の不安定な企業にとって保証協会と金融機関、自治体等との連携した支援は、零細事業者を育て、事故を減らすことにより、利用者の満足度を高くし、保証協会や金融機関等にとっても利益となる。

b)求償権の放棄・譲渡について

(該当個所)p10~11「求償権の放棄・譲渡について」「求償権先への新規保証について」、およびp17~18「回収の合理化」(求償権整理措置)

(意見内容)
「保証協会における運用を見直し、求償権の放棄などをより弾力的に行うことが望まれる」という指摘は重要であり、中小企業の再起・再建が有効に進められる条件整備の実現方が望まれる。なお、保証付き債権の譲渡にあたっては、保証協会と金融機関、借り手中小企業者の三者の十分な話し合いうえで進めることを前提とすること。

(理由)
中小企業が倒産や再建する場合、再起できる法的な条件整備がすすめられているが、例えば倒産後に担保処理した後の残債として保証協会の求償権が残ることが再起・再建にとって問題となっている。『2005年版中小企業白書』では、今般の新破産法や包括根保証契約に係る民法改正などにより、「中小企業経営者の事業リスクが軽減され、ひいては人々のリスク回避志向の修正と創業意欲の喚起につながっていくことが期待される」としているが、求償権の放棄もこのような社会的な要請に応えるものとなろう。

2.懸念される問題点
保証料率の弾力化や部分保証制度等の導入ついては、中小企業、特に小規模企業に対して金利と保証料の負担を重くし、場合によっては企業の継続を困難にすることも懸念され、反対する。

a)料率の弾力化について

(該当個所)p14~15「料率の弾力化」

(意見内容)
とりまとめ(案)は、「保証協会は、中小企業者の信用度を定量的・定性的に評価した上で、これを適切に考慮した保証料体系を構築する」とし、[1])経営状況の良好な中小企業者に対して安い保証料で融資を提供できるようになる、[2])より幅広い中小企業者に保証を利用できるといったメリットにつながると述べている。しかし、経営状況の良好な中小企業者に対して安い保証料で融資を提供できることは結構なことではあるが、そのような企業は民間金融機関からプロパー融資を受けることができる。また、良好な中小企業者に対して保証料を安くした分を良好でない中小企業者から取るとも読める。問題は、「相当信用リスクの高まった中小企業者」に「リスクに応じた適正な金利と保証料」を課して経営の安定的な継続ができるか、ということである。激しい競争の中で、低い利益率で経営を維持してきた中小企業者にとって保証料率の引き上げは命取りになる可能性もある。このような中小企業層に対してこそ政策的対象として政策金融を厚くするべきである。当面、基本的な保証料率の目処を示すことは維持されるべきである。

b)部分保証制度と金融機関の負担金方式の選択制について

(該当個所)p19~21「保証協会と金融機関の責任分担の必要性」

(意見内容)
とりまとめ(案)は当面、「部分保証制度」又は金融機関が部分保証制度と同等の責任分担を行う「負担金方式」のいずれかを選択して用いることができるようにし、一定期間後に制度の実施状況や利用者の声を踏まえて、方式の統一の適否について検討することが適当であるとしている。これは、金融機関の自己資本比率の低下要因となり、債権管理コストなどの新たな負担を増やし、中小企業貸出を抑制するので反対する。私たちは、この立場から次の案を提案したい。地域や中小企業の規模等により毎年算定する平均代弁率等を参考に目標となる代位弁済率を設定し、その範囲内に収まっている金融機関は全部保証とし、超えている金融機関を負担金方式とする案を検討すること。この案であれば、金融機関の貸出先へのモニタリングや経営支援のインセンティブが強く働き、借り手中小企業者と保証協会、金融機関の三方一両得を期待できる。さらに、通常の保証限度額2億8千万円のうち例えば、無担保保証の8千万円については部分保証や負担金方式の対象外とするなども検討すべきである。

c)導入の対象となる保証制度や時期など

(該当個所)p21「中小企業者への配慮」

(意見内容)
「中小企業金融における信用補完制度の重要性に鑑み、その導入の対象となる保証制度や時期等については、柔軟に検討することが望まれる」としているが、各種の中小企業の景況調査では低水準で一進一退を繰り返しており、回復の傾向が見られない現状では慎重の上にも慎重を期さなければならない。また、金融機関とともに利用者である中小企業者の意見を十分に聴取する必要があるが、「とりまとめ(案)」のパブリックコメントの意見募集期間がわずか2週間という設定は、利用者である「中小企業者への配慮」があると言えるのか、その姿勢の問われるところである。中小企業者の意見を十分に聴取する場と期間を設けるべきである。

3.私たちの希望する信用保証制度
私たちは、信用保証制度のあり方について下記の事項を要望している。

(該当個所)とりまとめ(案)全体

(意見内容)
a)間接金融が発達した日本において優れた役割を果たしてきた100%保証の信用補完制度を維持し、先に引用した『信用保証協会事業の基本理念』を文字通り体現する制度とすること。
b)保証枠を拡大し、中小企業の資金需要等へ対応するなど信用保証理念に基づき中小企業のニーズに積極的に対応すること。特に、第三者保証人の徴求をしないこと。
c)経営の発展に努める経営姿勢や誠実な返済姿勢、地域での信頼などの信用力を評価するとともに、企業の経営理念・方針・計画の確立や将来性を汲み取った信用保証を行うこと。
d)保証協会は、金融機関や自治体等と連携して中小企業を支援し、特に創業者や零細事業者等に対して相談、診断、情報提供といった多様なニーズに的確に対応することにより、育てていく姿勢を明確にすること。
e)保証協会は、中小企業の実情に適切に対応した期中管理と支援を行うこと。当初の返済条件を履行することが困難になった場合でも、返済条件の変更に柔軟に対応すること。また、債務超過などの要注意先企業でも金融機関と協力して再生支援する「ランクアップ協調支援」保証制度等を設けること。
f)『信用保証協会事業の基本理念』において「もって中小企業の振興と地域経済の活力ある発展に貢献する」と明記されているように、保証協会は地域経済の持続的発展の視点を確立すること。

以上