【20.03.04】新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言を提出

 新型コロナウイルス感染拡大により、中小企業への深刻な影響が広がってきています。中同協では3月3~4日に「中小企業憲章・条例推進本部と政策委員会の合同会議」を開き、「中小企業の倒産・廃業を避けるために~新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言」を作成。4日午後には国会議員や中小企業庁に届けました。

中小企業の倒産・廃業を避けるために 新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言

 私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。
 今回の新型コロナウイルス感染症の拡大とそれへの対応は、観光関連や飲食サービス業などに底の見えない深刻な影響を与え、学校の休業に伴う給食の停止などは、食材を扱う中小企業に大きな打撃を与えています。日本全体が自粛ムードにある中、いまやすべての中小企業に影響が及び、多くの中小企業が倒産・廃業に追い込まれる切迫した事態となりつつあります。いま官民が協力して感染の終息に向けて総力を挙げて取り組んでいますが、「経済を牽引する力であり、社会の主役」(中小企業憲章)としての中小企業に対して、緊急な支援施策が求められています。
 私たちは、国民や地域と共に歩む中小企業家としてその社会的責務を果たし、日本経済と中小企業が発展できる環境をつくるために、下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。
 さらには、リーマンショックを超える景気の減退が懸念される中、日本経済の立て直しを図っていくためには、消費税減税も検討していくことが必要と考えます。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。

1.中小企業をつぶさない
 観光やイベントのキャンセルなどが相次ぎ、影響を受けている関連業のすそ野は広く、深刻なダメージを多くの中小企業が受けている。中には倒産・廃業の危機に瀕している企業もある。1社もつぶさない覚悟で臨んでいただきたい。以下にある融資の早急な拡大だけでなく、新たな事業展開の際の助成など今後の支援策は「真水」の対応が必要である。

2.緊急融資の創設および既往債務の返済条件緩和
 売上減などの影響を受けた中小企業の企業存続のため、実情に応じた緊急融資と既往債務の返済条件緩和又は「返済凍結」を実施すること。緊急融資は原則無担保とし、貸付金利も状況に応じ軽減すること(甚大な影響の場合は無利子)。セーフティネット保証4号の適用が発表されたが、保証制度を利用する場合は保証料率の軽減等を行うこと。融資や保証制度利用の際は、経営者保証ガイドラインの趣旨を踏まえ、できるだけ経営者保証を不要とすること。

3.雇用調整助成金の助成割合引き上げ
 雇用調整助成金については、支給要件の緩和などが行われているが、状況を踏まえ、対象の拡大、支給限度日数の延長、助成割合の引き上げ(5分の4)など柔軟な運用で雇用を守れるようにすること。東日本大震災時と同様に、最近1カ月の生産量、売上高などがその直前の1か月または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象とすること、また一定期間については、1カ月の生産量などが減少する見込みでも対象とする特例措置の拡大を求める。

4.社会保険料の免除や法人税等の減免
 地域経済の崩壊・底割れを防ぐため、売上減少などの影響を受けた企業に対し、社会保険料の免除や法人税等の減免または納税猶予の特例措置を実施すること。

5.学校や公共施設の休業などによる突然の取引停止状態となった中小企業への補償
 感染拡大防止の一環として、政府や自治体の突然の判断により、学校や公共施設が休業となり、中小企業が納品を予定していたものがキャンセルされる事態がある。特に給食関連では、食材が他に転用できないものもあり、大量のフードロスが発生する事態が生じている。仕入れ済みの食材を買取する、行政として活用するなど補償すること。

6.衛生用品の市場への流通確保
 マスクなどの衛生用品が不足し、企業の業務にも支障を及ぼしている。政府等の備蓄品を開放するとともに、増産・供給体制を支援し、不当な買い占めや高価転売などの防止策を強めること。

7.働く親の子育て支援~安心して働ける環境の整備を
 学校や幼稚園の休校・休園により、社員が休暇を取らざるを得ない事態の中で、中小企業は業務に大きな支障が出ている。小さな子どもを持つ働く親は、学童保育や保育園の体制が十分でないなどにより、安心して働き続けられる環境が不十分である。学童保育や保育体制の拡充など、至急体制を確立すること。

8.公正な取引条件の確保
 新型コロナウイルス感染症の影響など、やむを得ない理由により納品の遅れなどが生じた中小企業に対して、親事業者が損害賠償請求を行うなどの優越的地位の濫用を行わないよう、ガイドラインを整備すること。

9.正確な情報開示
 風評被害や過剰反応の自粛ムードが広がり経済活動の委縮・縮小に拍車がかかっている。政府・自治体による正確な情報開示と適切な発信を進めること。

10.事業継続計画(BCP)策定支援体制の拡充
 今後、今回のような緊急事態が起こった場合に備え、中小企業が事業の再開と継続が迅速にできるよう平時から「事業継続計画(BCP)」の策定支援、専門家に相談できる制度を一層充実させること。

11.国民の健康と安全を保護する体制の強化・拡充
 今般の新型コロナウイルス感染症の流行は我々にさまざまな教訓を残した。なんといっても、初動の対応と体制が決定的である。米国の疾病対策センター(CDC)のような統一的で機能的な組織を築くこと。また、医療・介護現場では、特に地方ほど慢性的な人員不足の中、今回の感染症対策に取り組んでいる。平時から地域医療を強化し、緊急事態への備えを高めること。

12.中小企業の声を緊急施策に反映すること
 国家の一大事でもあり、中小企業のひっ迫した状況と要望を把握するため、中小企業団体などから中小企業の声を聴く機会を設けるとともに、施策情報の発信を綿密に行うこと。

以上

2020年3月4日
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜泰久