新型コロナウイルス感染症は、長期にわたり、この度の感染爆発は経済的に社会的にも極めて深刻な影響を与えており、中小企業にとっても、切迫した事態となっています。
中小企業家同友会全国協議会(中同協、47都道府県にある中小企業家同友会の協議体、2月1日現在の会員数45,949名)では、2020年2月に新型コロナウイルス対策本部を立ち上げ、これまで第9次にわたる緊急要望・提言を中小企業庁や国会議員に提出してきましたが、このたび政策委員会と連携して、第10次の緊急要望・提言を発表することとなりました。
今回の要望・提言作成にあたっては、会員にアンケートを実施し、2月1日~15日までにグループウエアやFAXなど47都道府県から1,941件の回答が寄せられました。以下、結果の概要をお知らせします。
「新型コロナウイルスに関する国への緊急要望アンケート」概要
回答企業の5割がコロナ前と比べて業況は悪化しており(図3)、横ばいも3割となっている。特に運輸・倉庫業は悪化が著しく、サービス業、流通業が続く。他の業種に比べ専門サービス業は比較的良好。(図4)
新型コロナの実質無利子・無担保融資は63%の企業が受けており(図5)、製造業、建設業は4社中3社が同融資を受けている(図6)。返済が始まっている企業は45%に上る(図7)。45%中11%が「資金繰りが厳しい」としており、4社に1社は返済に苦慮している。また今後返済が始まる55%中17%、3社に1社がリスケもしくは借り換えを希望している。情報通信、運輸・倉庫業に特に厳しさが現れている。(図8)
「資本性劣後ローン」の活用は6%にとどまり「検討中」が5%、28%が「制度がよくわからない」としており(図9)、今後、無・無融資の借り換えや新たな設備投資の際に金融機関からの助言や経営者側の理解を広げる必要がある。
「雇用調整助成金特例措置」の今後の活用について、「活用したい」「活用を検討している」あわせて35%、今後も3社に1社は活用することが考えられる。(図10)
消費税インボイス制度への対応は、制度を理解できていないとする企業が29%、適格請求書等発行事業者登録をして対応を進めている企業は16%程度。規模別には10人未満の企業の対応が遅れている(図11)。「国への要望」のコメントで、自社だけでなく取引先のインボイス制度への対応の不安、事務負担増加、廃業も懸念されており、電子帳簿方式とともに凍結・延期を求める声が多い。
価格転嫁問題については「原材料費の高騰分」(図13)と「賃上げ」(図16)に分けて聞いた。いずれも8割を超える企業が価格転嫁にいたっていないことがわかる。原材料費の転嫁は運輸・倉庫業が最もできておらず、次いで専門サービス業となっている。専門サービス業の業況は良い方だが、仕事が増えている割に採算がとれていないことが見て取れる(図14)。「賃上げ」分の転嫁は、さらに価格転嫁が難しく、全く「転嫁できていない」企業が49%で(図16)、「原材料費の高騰分」が「転嫁できていない」とする32%を大きく上回っており、「一部転嫁」も21%程度で原材料費36%よりも15%も下回っている。
「事業再構築補助金」の活用は1割程度の企業にとどまる。11%の企業は「制度がよくわからない」としており、申請したが活用できなかった企業が7%もある。(図19)
「支払いを受取手形で受けている企業が34%あり、そのうち4割以上が現金での支払いを希望している(図20)。受取手形の割合の減少、サイトの短縮化の傾向があるが、一部に割合の増加やサイトの長期化もある(図21)。また、ファクタリング経由での支払いもあり、今後注視していく必要がある。
「コロナへの不安」は感染者や濃厚接触者が増えて、自宅待機を一定期間することで、在宅勤務などできない現場を抱える企業の業務に支障・不安が広がっており、どこでもだれでもいつでもPCR検査が無料で受けられ、迅速にその結果が通知されることが望まれている。ワクチン接種の加速化も同様。オミクロンに関しては感染症2類から5類への変更を求める声も一定程度あるが、変異種、さらなる長期化への不安も拡大しつつある。(図22)
国への要望では、原材料・資材・石油の価格高騰の抑制、雇用を維持するための社会保険料の減免、納税猶予期間の延長など求める声が多い。また、新事業展開にあたってのデジタル化、DX化の支援や事業再構築補助金、事業復活支援金の枠の拡大を求める声もある。(図23)
2022年3月1日
中小企業家同友会全国協議会