はじめに

2001年6月、中小企業家同友会全国協議会(以下、中同協)に同友会活動における情報化の検討組織「情報化促進検討会」(現在は改組され、情報化推進本部)が幹事会の諮問機関として誕生し、同年に発表された「同友会活動におけるインターネット活用にあたっての考え方」にもとづいて、一気に同友会としての全国的な情報インフラが整備されてきました。

中同協が現在インターネット環境を通して、各同友会に提供しているものには、DOYU.JPの統一ドメインはじめ、各同友会のホスティング(WEB、MAIL)の対外発信・通信環境、ホームページ簡単更新システム、同友会ごとのメールマガジン送信システム、e.doyuなどの組織活動支援システム、Jobway共同求人活動支援システムなどがあります。それらに各同友会の会員データを連携させるシステムなどまで入れると、中同協が運営しているシステムは10を超えています。

中同協が情報化に取り組むきっかけは、一方で90年代前半からの基幹業務(各同友会では会員管理や例会運営、中同協では全国行事参加者管理、調査集約、編集など)の合理化であり、もう一方で戦略的に90年代後半からの同友会らしいネットワークづくりの試行と組織強化(発信と情報共有)でした。そして、これから全国会員すべてのネットワーク作りが、日本の経営者団体として初めて実現することになります。

1980年代からの中同協の未来構想の中にうたわれてきた情報化推進の歴史、各システムがどのような経緯から誕生し、中同協が現在のような情報センターとなってきたのか、また今後どのような展開が予定されているのかを紹介します。

なお、本稿の執筆に当たっては、中同協事務局次長の平田美穂氏が担当しました。本稿が同友会活動における情報化推進に貢献することを期待しております。

中小企業家同友会全国協議会情報化推進本部長 中村 高明

ここでいう「情報化」とは、IT(情報技術)を利用して、さまざまなデータをデジタル化し、汎用性のあるものとして活用していくことをいいます。

<目次>

  1. はじめに
  2. Ⅰ.概観
  3. Ⅱ.ビジョン検討が、中同協での「情報化」のはじまり(1980年)
    1. 1.1980年、中同協ビジョンに描かれた「情報センター」
    2. 2.バブル崩壊後1993年時の中同協ビジョンに描かれた、情報のシステム化
  4. Ⅲ.中同協における情報化の位置づけと展開~全国ネットワークを生かして
    1. 1.各同友会事務局での実務の合理化と相互交流による連携
      1. (Ⅰ)80年代急激な会員数の増加へ~OA化急ぐ
      2. (Ⅱ)90年代前半からはじまった実務交流会
    2. 2.各同友会間や中同協間の通信手段としての活用
      1. (Ⅰ)90年代からの中同協のIT化~ファイル管理やDTPへ
      2. (Ⅱ)90年代後半、電子メールの活用からはじまった情報共有
    3. 3.全国レベルでの情報共有と発信
      1. (Ⅰ)2001年中同協情報化促進検討会の発足~統一ドメインへ
      2. (Ⅱ)事務局間から役員との情報共有へ~「ITを駆使する経営者団体」めざす
        1. ① 運動への思いを共有するメーリングリストとグループウエア
        2. ② 全国行事参加者ネット登録システム「Netpro」の誕生
        3. ③ インターネット上におけるハード環境の整備
      3. (Ⅲ)会員間経済交流の検討から生まれた「全国会員データベース」
  5. Ⅳ.同友会の組織活動の支援~対外的発信と組織戦略への組み込み
    1. 1.対外発信:中小企業家同友会のポータルサイト「DOYUNET」の誕生
      1. (Ⅰ)DOYUNETオープンとともに更新情報の配信、メールマガジンへ
      2. (Ⅱ)「中小企業家しんぶん」バックナンバーの全文検索サイトの構築
      3. (Ⅲ)金融アセスメント法制定運動を支援した金融サイト
      4. (Ⅳ)ホームページ簡易更新システムの構築と提供
      5. (Ⅴ)DOYUNETの更なる進化
    2. 2.各同友会の活動を支援する仕組みとして~中同協ASP構想
      1. (Ⅰ)2003年から「全国広報・情報化交流会」へ
      2. (Ⅱ)全国の共同求人サイトJobway~ASP構想の先駆け
        1. ① KYUJIN.DOYU.JP(初期Jobway)からJobwayへ
        2. ② 本格的なシステム備えたJobwayへ~全国の共同求人ネットワークの強化
    3. 3.同友会の活動スタイルを変えた、組織活動支援システム「e.doyu」
      1. (Ⅰ)導入の意義
      2. (Ⅱ)先進事例をもとに、全国どの同友会でも使えるシステムへ
      3. (Ⅲ)初期仕様とパートナー企業の選定~中同協で初めての入札制度の導入
      4. (Ⅳ)2005年9月、5300名からの利用開始~経営者がITに親しむきっかけに
      5. (Ⅴ)e.doyu全会員導入によって変わる同友会運動
        1. ① 事務局中心の情報収集発信を役員と事務局の共同で
        2. ② リーダーの発信力の強化
        3. ③ 情報共有で波のある活動から積み重ね型への活動へ
        4. ④ 質の高い事務局へ実務軽減
        5. ⑤ アンケート機能で声の集約・発信~対外的訴求力強まる
        6. ⑥ 企業のIT化促進にも
    4. 4.「情報化促進検討会」から「情報化推進本部」へ~政策対応も
      1. (Ⅰ)情報化推進を組織的に進めるために「本部化」
      2. (Ⅱ)個人情報保護問題を取り扱うことで、経済産業省の審議員も
        1. ① 2004年に「個人情報保護に関する指針」「マニュアル」作成・啓蒙
        2. ② 経済産業省・個人情報保護ガイドラインのパブリックコメントへ意見書提出
  6. Ⅴ.企業経営支援へ~企業変革支援プログラムの搭載とSNS
    1. 1.企業変革を促す「企業変革支援プログラム」のe.doyuへの搭載
    2. 2.SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の可能性
    3. 3.経営情報サイト「実践!社長学」(仮)の構築
  7. Ⅵ.今後の展開に期待されるもの

別添:年表(1980~2009年)