年末までに緊急の政策対応を!【談話】

年末までに緊急の政策対応を!
中小企業家同友会全国協議会 会長 赤石 義博

 赤石義博・中小企業家同友会全国協議会(中同協)会長は、11月2日の第2回幹事会で承認された、「急激な景気悪化から中小企業経営を守るための緊急政策対応」について談話を発表しました。(提言の全文はこちら)

 「急激な景気悪化から中小企業経営を守るための緊急政策対応」は、急速な景気後退と本格的に進められつつある不良債権処理の影響で、これから迎える年末、年度末に多くの中小企業が経営危機に直面する可能性があることから、緊急の政策対応を強く要望しているものです。

 特に、長引く不況に加え、米テロ事件・報復戦争による旅行観光業者への打撃や、狂牛病問題による食品関連、飲食業等への影響など、突発的なリスクが中小企業を直撃しており、緊急融資などの対応が求められています。

 要望書は、最重点要望として第1に、従来の制度融資とは別枠の「緊急特別保証制度」(仮称)の創設を掲げています。第2には、来年4月に迫るペイオフ解禁の実行猶予措置を求めています。

 中同協は、金融アセスメント法制定の取り組みとともに、当面する危機打開のための政策対応を求めて要請行動を進める予定です。

緊急要望
急激な景気悪化から中小企業経営を守るための緊急政策対応を

2001年11月2日
中小企業家同友会全国協議会 会長 赤石義博

 日本経済は、21世紀の幕が開けてから景気後退の様相を深めています。当会が実施している2001年7~9月期の景況調査(DOR)によれば、業況判断DI(好転マイナス悪化の割合、前年同期比)がマイナス29に急落しました。今回は、1997年4月以来のバブル崩壊後3度目の景気後退ですが、中小企業経営にとってはこれまで以上に厳しい局面を迎えています。

 第一に、バブル崩壊以来の長引く経済不況により、財務体質の劣化など多くの中小企業は経営体力を弱らせ、体力の限界に近づきつつあることです。第二に、国内産業の空洞化やデフレ経済化など構造的要因が進み、中小企業経営に打撃を与え、その経営の活路を狭めつつあることです。第三に、アメリカでのテロ事件と報復戦争や狂牛病騒動など予期しないリスクが中小企業を直撃していることです。例えば、テロ事件の影響で海外旅行や観光客が激減し、旅行業者や沖縄などの観光業者の打撃となっています。また、狂牛病問題では、関係する酪農経営や食品生産加工業、流通業、焼肉店など飲食業等の中小企業が企業存亡の危機に立たされています。

 私たち中小企業は今、急激な景気後退への対処と上記のような突発的なリスクへの対応が迫られています。加えて、不良債権「早期処理」の本格化の影響で、今年度の年末・年度末は多くの中小企業が経営危機に直面する可能性があります。私たちは当面、下記の金融面から地域と中小企業経営を守る緊急政策対応を強く要望するものです。関係各位のご協力、ご支援を切望致します。

1、中小企業経営を守る緊急金融政策対応(最重点要望)

(1)2001年3月まで実施された「特別信用保証制度」は、「貸し渋り」緩和に大きな効果をもたらしたと同時に中小企業への「最後の貸し手」の役割を果たした。不良債権「最終処理」期間から金融システムが安定化するまでの一定の期間、同様な制度でより中小企業が利用しやすい「緊急特別保証制度」(仮称)を創設すること。

(2)ペイオフ解禁は、中小企業にかかわりの深い地域金融機関の預金の流失を促進させ、そのことが原因となって中小企業への融資の引き上げ、事業資金の中断などの可能性が高いばかりでなく、地域金融機関の存立を危うくする懸念があるので、2002年4月施行の預金保険法の実効猶予措置を直ちに宣言すること。

2、緊急金融政策対応の当面の具体策

(1)不良債権「最終処理」の中小企業への影響を最小限に抑えるため、国は次の措置をとること。

1.既に利用している制度融資の返済について、一定の要件のもとで返済猶予期間を延長する措置、又は最大10年まで返済期間の延長措置を認めること。
2.連鎖倒産で健全企業まで倒産に追い込まれることのないよう対応措置をとること。倒産防止共済制度は、共済金の貸付けの償還期間を5年から10年に延長すること。
3.「破綻懸念先」の中小企業を不良債権処理する際に銀行は、当該中小企業の経営改善への最大限の支援を銀行に義務付けるとともに、5年以内の改善可能性があれば、直接償却を猶予すべきこと。
4.事業者と金融機関の融資上の取引トラブルを調停あっせんする緊急の機関・窓口を金融庁又は都道府県に設置すること。
5.中小企業が倒産した場合、個人の最低限の財産保障と再起できる条件を整備するため個人保証を有限責任化する措置をとること。また、経営者が倒産した際に家族との生活を維持し、再起ができるための「経営者失業共済制度」又は「経営者失業保険制度」の創設を検討すること。

(2)中小企業向けの政府系金融機関は、不良債権「最終処理」に際して中小企業金融のセーフティネットの役割が期待される。政府系中小企業金融機関の整理統合・民営化を中止し、設立時の原点に立ち返って拡充を図ること。

(3)金融機関の合併・破綻によって生じる取引先中小企業に対する事業資金のパイプを細くすることなく、資金供給の継続を保証する法制化措置を緊急にとること。

(4)制度融資の保証料の引き下げを実施すること。また、ペイオフ解禁に備えた自治体による公的預金の保全対策として金融機関への預託金方式の制度融資の見直しが進められようとしているが、預託金方式又は利子補給方式のいずれにせよ、いっそうの安定的な低利融資に努めること。

3、中小企業向けの「金融検査マニュアル」の作成を

 金融庁の「金融検査マニュアル」は中小企業金融を人為的に不安定化させている。したがって、中小企業向け融資の場合には、金融庁は中小企業の実情に沿った別の基準の「マニュアル」を速やかに作成し、それを適用すること。

4、金融アセスメント法の制定を

 「地域と中小企業の金融環境を活性化させる法律案(金融アセスメント法)」の制定を進めること。(詳細は「金融問題&金融アセスメントのテーマサイト」で)