【21.02.12】新型コロナウイルスに関する第7次緊急要望・提言を提出

 新型コロナウイルス感染拡大による中小企業への甚大な影響の広がりを踏まえ、中同協では2月12日に「中小企業の倒産・廃業を避け、雇用と日本経済を守るために~新型コロナウイルスに関する第7次緊急要望・提言」を国会議員や中小企業庁に届けました。

中小企業の倒産・廃業を避け、雇用と日本経済を守るために
新型コロナウイルスに関する第7次緊急要望・提言

 私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展を図るとともに、中小企業をとりまく経営環境の是正に努めて参りました。
新型コロナウイルス感染症は、既に経済的にも社会的にも極めて深刻な影響を与えておりますが、緊急事態宣言の延長などによってその影響がさらに拡大することが懸念されています。全国の中小企業にとっても、とりわけ影響の大きい飲食業や観光サービス業およびその関連業は言うに及ばず、あらゆる業種において倒産・廃業の危機に追い込まれかねない切迫した事態となっています。

 現下のきわめて厳しい環境下にあっても、中小企業の多くは支援施策等も活用しながら社員の生活と雇用を守るために必死の努力を続けています。しかしながら、影響の長期化も予想されることから、支援施策を一層拡充していくことが求められています。雇用と地域社会を守り、日本経済の崩壊を防ぐためには、中小企業の維持・発展が不可欠です。

 政府は2019年に「中小企業の日」および「中小企業魅力発信月間」を設け、その目的を「中小企業・小規模事業者の存在意義や魅力等に関する正しい理解を広く醸成する機会を国民運動として提供していくため」としています。その趣旨に照らし、政府はコロナ禍を乗り切ろうと奮闘している中小企業・小規模事業者に対して、「1社もつぶさない」「雇用を守る」という姿勢を貫き、中小企業の存在意義と重要性を国民に訴えるとともに、従来以上にスピードを上げて支援の取り組みを進めることを強く希望します。

 以上の観点から、私たちは下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。

《Ⅰ.緊急対策》

1.自粛・営業時間短縮・休業による売上減少などに対し、規模に応じた補償を
(1)自粛・営業時間短縮・休業要請などに対する補償を万全に行うこと
 営業時間短縮や休業などの要請は、その実効性を高めて感染拡大を抑止するためにも、補償と一体となっていることが必要である。要請によって生じた売上減少などの中小企業の損失に対しては、欧米諸国の事例(前年度売上額の70~80%を補償)も参考にしつつ、企業規模や損失実態に見合った補償基準の明確化と補償の迅速化を図ること。その際、補償額は雇用調整助成金と併せて固定費相当分とするなど規模に応じたものにすること。また、地域の実情に応じて柔軟に活用できる制度とすること。業種・業態を特定する場合は、関連業も含めること。

(2)十全な補償のない中での罰則規定(過料など)の実施には反対する
十全な補償が講じられていない時点で、特別措置法の改正によって要請に応じない事業者に過料などを課すことには反対する。

(3)政策決定に際しては十分な説明と終了条件などの見通しを明確にすること。
 営業時間短縮や休業要請などに係る政策を決定する際には、中小企業や国民の意見を十分に聞いた上で、科学的根拠および終了条件の明確な見通し等について丁寧な説明を行い、多くの国民が納得して協力できるようにすること。

2.給付金の拡充・強化
(1)一時支援金(持続化給付金)の継続・拡充
 1月に中小企業庁が発表した「一時支援金」を「持続化給付金」の2回目としているが、従来の給付金も含め、申請から支給まで迅速な対応を求める。また、コロナ禍で影響を受けているより多くの企業を対象とすること。創業して間もない企業も利用しやすい制度とすること。一律給付ではなく、企業規模に応じた給付(1-(1))とすること。

3.雇用調整助成金特例措置の大幅延長を
 雇用調整助成金の特例措置(緊急対応期間)を、緊急事態宣言終了の翌月まで延長することが示されたが、そのことが十分に周知されていない。至急、広報周知の徹底を図ること。また、10都府県の緊急事態宣言延長などを勘案すると、今後、影響が一層長期化することも懸念されるため、ワクチン接種普及等により感染症収束の見通しが立つまでの期間、あらためて大幅な延長を行うこと。

4.きめ細やかな金融支援施策の拡充・強化と円滑化を
 全国には多種多様な中小企業が存在することを踏まえ、その多様性に対応できるきめ細やかな金融支援施策の一層の拡充・強化を進めること。また円滑に制度運用が進むよう、金融機関の対応を促すこと。
(1)長期資本性ローンの拡充
 「新型コロナ対策資本性劣後ローン」については、金利の低減や、協調融資時の保証協会の保証制度活用および期限の延長や借り換えが行えるようにあらため、金融機関が一括償還まで資本とみなす制度とすること。また借り手が返済期限を決められる長期資本性ローン(永久劣後ローン)を創設すること。
(2)「コロナ特別短期貸付」および「コロナ特別短期保証制度」の創設
 今後、影響の長期化などにより追加的に資金調達が必要となる局面も想定されるため、迅速に資金を調達することができる貸付制度・保証制度として「コロナ特別短期貸付」「コロナ特別短期保証制度」を創設すること。
(3)きめ細やかな金融支援施策の拡充・強化
 実質無利子・無担保融資制度の継続、既往債務の条件変更や借り換えの促進、新継続型短期保証制度の拡充等、きめ細かな金融支援を継続・強化すること。
(4)金融機関は伴走支援型融資を
 金融機関、特に地域金融機関に対してはベンチマークの活用等によって金融仲介機能の発揮を促し、既存貸出の伴走支援型融資「専用当座貸越」へのシフト等、積極的な活用を促し、中小企業への支援体制の強化に努めること。

5.税金・社会保険料などの減免
 現状では「持続化給付金」「家賃支援給付金」「雇用調整助成金」等は課税対象となっているが、これらはそもそも納税の前提となるはずの経営の継続そのものの困難に陥った企業を支援することを目的にしている。したがって上記給付金などは非課税にすること。
 また、地域経済の底割れを防ぐため、売上減少などの影響を受けた企業に対しては社会保険料の免除や法人税等の減免(一例として、賞与に関わる社会保険料の一定期間の免除など)を実施すること。

《Ⅱ.経済対策、今後の対策》

1.事業再構築への強力な支援体制の構築を
 中小企業の事業再構築に対しては、「事業再構築補助金」や「中小企業生産性革命推進事業」が実施されることとなっている。しかし、予算規模は大きいものの対象企業数などに制限があり、多くの中小企業にとって利用しやすい制度とは言えない。中小企業の事業再構築を効果的に促すためにも、希望する中小企業にとって一層利用しやすい制度に改めること。

2.国や地方自治体は、地元中小企業への発注を増やすこと
 国や地方自治体は、地元中小企業への発注を大幅に増やすこと。受注企業が下請企業に発注する場合は、発注先も地元中小企業に限定にすること。

3.地方分散型社会への転換、地域内の経済循環を促進する制度の支援
 国や自治体は、ポストコロナを見据えた地域経済再生の中期・短期の計画を速やかに立案し、実行すること。また、地方分散型社会への転換を進めるために、その主たる担い手である中小企業の役割を中小企業憲章・中小企業振興基本条例にもとづいて明確に位置付けること。
 Go To キャンペーンについては、中小の飲食店や生活関連サービス等における消費を効果的に促すとともに、より経済の域内循環に資するものとすべく制度設計を見直すこと。

4.中長期のビジョンの提起や議論
 国や自治体は、デジタル化や地方分散型社会が経済格差解消や人間尊重の社会につながることを示し、持続可能な経済社会や国民が安心して暮らせるライフスタイルを中長期的なビジョンとして提示すること。またその実現に向けた政策を推進し実行すること。
以上
2021年2月12日
中小企業家同友会全国協議会
会長 広浜 泰久

※当会が3月4日(第1次)および3月31日(第2次)、4月20日(第3次)、5月25日(第4次)、10月13日(第5次)、1月8日(第6次)に発表した緊急要望(当会ホームページ参照)についても、未実現の内容については、引き続き実現に向けて取り組んでいただくことを重ねて要望します。
https://www.doyu.jp/news/infection.html