経営へのマイナス影響55%、影響なしも増加 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等に取り組んだ企業は約2割
中小企業家同友会全国協議会(中同協)は、新型コロナウイルスの中小企業への影響調査を実施(2月8~26日)し、21同友会2,397社分の集計をまとめました。この調査は3月、5月、7月、9月に続いて5回目です。調査結果の概要は以下の通りです。
1.マイナスの影響「出ている」企業は55%。製造業(66%)、流通・商業(64%)で負の影響大
新型コロナウイルス感染症拡大による経営へのマイナスの影響が「出ている」と回答した企業割合は55%、「今後マイナスの影響が懸念される」は22%、「マイナスの影響はない」は14%という結果でした。過去4回の調査を通してみると、「今後マイナスの影響が懸念される」企業割合は減少、「マイナス影響はない」と回答した企業割合は増加しています。マイナスの影響の具体的な内容として「商談遅延」「イベント・展示会の中止や延期」「来店数の減少等による売上減少」を指摘する企業がいずれも3割を超え、2021年1月に再発令された緊急事態宣言も影響していると見られます。(図1、2)
2. 2021年1月の売上、前年同月比で「減少」企業が半数
2021年1月の売上(前年同月比)は、「増加」した企業が26%、「減少」した企業が50%、「ほぼ変わらない」企業は24%でした。年間を通してみると、全体で「増加」28%、「変わらない」16%、「減少」56%と2020年を通して半数以上の企業でダメージを受けていたことが分かりました。特に製造業、流通・商業で減少割合が高くなっており(製造業:72%、流通・商業:61%)、厳しい状況にあります。(図3、4)
現在の営業キャッシュフローについてたずねたところ、半数が「黒字」、「トントン」と「赤字」がそれぞれ四分の一という割合でした。資金繰りのために「新規融資」を行った企業が75%、その内訳は民間金融機関が43%、政府系金融機関が32%となっています。また、「各種給付金・補助金等の活用」も31%の企業が行っていますが、「特にない」も29%と各企業の対策は分かれているようです。
3.「持続化給付金」は2社に1社が利用
利用した国の支援策は「持続化給付金」48%と最も多く、「政府系金融機関の融資制度」33%、「雇用調整助成金」31%、「セーフティネット保証」31%、「民間金融機関の実質無利子・無担保融資」25%、「家賃支給給付金」22%で利用されています。利用した結果「大変役にたった」「ある程度役立った」と回答した割合が7割あった一方で「もっと拡充してほしい」「手続きが煩雑」への回答割合も増加しています。「企業の売上規模・雇用者数に応じた支援が必要。業種別一律支援では体力が削がれる」「融資枠の拡大はありがたいが、返済期間を長くしてもらいたい」「雇用確保の観点から、社会保険料や厚生年金の猶予でなく減免もお願いしたい」といった声もあるように、新型コロナの影響の長期化を見据え、支援策の一層の充実、利用しやすい仕組みづくりなどが求められています。(図5)
4.新分野展開や業態転換、事業・業種転換等に取り組んだ企業は約2割
新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取り組みについて、「実施した」企業は22%、「検討中」28%、「今後検討する予定」19%、「実施しない」25%となっています。また、取り組む上での課題として指摘された項目は「人材確保」45%、「技術力・ノウハウ」36%、「市場調査・情報収集」34%、「営業力」32%の順となっています。中でも、建設業では「人材確保」が56%、製造業は「技術力・ノウハウ」46%、「市場調査・情報収集」40%と他業種と比較して突出した割合となっており、付加価値を高めるために注力する課題として意識されたものとみられます。(図6、7)