地域で望まれる中小企業団体のあり方

ある委託調査に見る商工団体の現状

 経済産業省の委託調査で「地域の商工団体等に関する調査報告書」(委託事業者・みずほ情報総研株式会社)という興味深い報告書がホームページに公開されています。これは、商工会議所と商工会の実態を把握し、今後の地域中小企業支援における商工団体のあり方を検討する材料とすることを目的とした調査です。

 同報告書の調査によれば、会員あたりの総予算規模は、商工会議所が平均一3万4000円、商工会が平均一5万8000円ですが、国と県の補助率では、商工会議所が平均48・8%、商工会が平均66・9%と、かなり補助金に依存しています。

 国は、2005年度の三位一体改革により、商工会議所と商工会が経営指導員を配置し実施している経営改善普及事業など小規模事業者支援施策は、都道府県が責任を持って行うことになり、税源移譲をしました。

ところが、報告書では、都道府県の商工予算が最近大幅に減少している実態を指摘しています。都道府県の商工関係予算は、2005年度の3兆2402億円から2008年度の2兆9340億円へと、わずか3年で1割近く縮小。一般会計予算に占める商工予算の比率でも6・7%から6・3%に縮小しています。

 このように、地域経済の衰退と厳しい予算制約などにより、地域の中小企業と商工団体は極めて厳しい状況にあります。

商工会議所・商工会に求められる役割への期待も強いものがあります。しかし、報告書は両団体の現状に対する会員の率直な意見や要望も紹介しています。

所属団体の利用状況について、商工会議所・商工会とも「あまり利用しない」と「全く利用しない」を合わせた比率は、それぞれ60・5%、77・0%と、過半数を超えています。最も高い不満は、「事業・サービスがマンネリ化している」(31・3%)、次いで「会員との接点が少ない」(19・6%)、「専門的な相談に応じられない」(13・6%)となっています。

 アンケートの自由記入欄では、「あたり前のことを言う人、正当なことを言う人、若い人の意見、ベテランの重みのある意見、生かされない体質である」「今の商工会は会費を徴収するだけで会員の要望を聞くために各社を巡回したりはしない」という意見などが紹介されていることが目を引きました。

 そういえば、商工会議所などの役員も務めている同友会の役員が「同友会でよく会員訪問が十分できていないという声を聞きますが、会員訪問をしてくれる経済団体は同友会だけですよ」と言っていたことを思い出しました。自省しつつも、同友会がやっていることを他団体との比較で意味や意義を考えることも大切であることに気づかされます。

 報告書は今後の方向性として、「商工会議所においては、中小・小規模企業に対するきめ細かい支援と地域全体の底上げを両立させていくことが必要である」と提言しています。

このような視点は、中小企業振興基本条例の理念とも重なります。中小企業家同友会と方向性を共有できるものであり、今後、協働の可能性が広がっていくと期待したいと思います。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 2月 15日号より