地球防衛軍! 〔環境問題〕わが社の取り組み【富山】中小企業だからこそできることがある

本業生かし、地域から地球環境に貢献

 富山同友会の会報『同友とやま』12月号が、「地球防衛軍! 環境問題、わが社の取り組み」と題した座談会を特集。環境問題への取り組みが熱く語られ、広報委員長からは、「環境部会を作ってほしいですね」の声も聞かれるほどでした。同誌より転載・紹介します。

座談会参加者

桶 茂行((有)オケ商事会長)/木材チップ・オガコ製造販売、産業廃棄物処理業
岸田 毅(岸田木材(株)社長)/製材業
竹内正明((株)カネソ社長)/太陽光発電とオール電化リフォーム
高橋雅幸(ヤマト電産(株)社長)/アイドリングストップ装置施工などエコ経営支援
森 弘吉((株)エムダイヤ社長)/ リサイクルプラント全般の設計・製作・販売
司会/稲垣英優((有)ピュア・ハウジング社長)

稲垣(司会) 企業経営において、環境問題はますます重要度を増し、避けて通れないテーマとなってきました。今回は、『同友とやま』を読んだ方が「自分も何か行動を起こしてみよう!」と思って頂けるよう、経営者としての熱い思いや自社での取り組みについて、大いに語って頂きたいと思います。

省エネ・リサイクルなどで温暖化ガス削減

稲垣 温暖化ガスを削減するためには、排出量を減らすという方法と、吸収源である森林を再生するという方法があります。前者について北陸での電化普及率は、他の地域に比べても促進しているようですね。

太陽光発電、オール電化を提案

竹内 当社は、太陽光発電とオール電化を用いたリフォームでの省エネと二酸化炭素削減を提案しています。オール電化については、富山県は北陸3県でもトップです。太陽光発電については、今年から購入補助金制度が始まり、当社では契約件数が伸びています。さらに11月1日より売電単価が24円から48円になり、太陽光発電はこれから伸びると思います。
 また、社内で3カ月間の環境実施計画を終えて、12月にはエコアクション21の認証申請をします。これからは環境のことを考えないと、個人も企業も生きていけないと思います。

エコドライブを推進

稲垣 先日エコドライブの研修を受けたところ、燃費が1リットル当たり13・7kmから18・7kmになり、効果の大きさに驚いています。
高橋 当社は、自動車用部品・用品卸売や自動車出張点検サービスを行っています。自動車業界では、今後ハイブリッド車や電気自動車への切り替えが進んでいます。その移行期間中に何か環境に良いことができないかと考えていた2年ほど前に、アイドリングストップ装置に出会い、その販売・施工を始めました。
 5秒以上の信号待ちのときにアイドリングストップを行うことで、燃費向上と温暖化防止の効果が確認されています。「エコドライブ10のすすめ」が提唱されていますが、それをアシストするための機械だと考えています。自分も従業員もエコドライブを心がけるようになりました。日本全国のガソリン車の半分が、1日10分アイドリングをやめることによる年間の二酸化炭素発生抑制量からみれば、17万8000本もの杉の木を植えなくてもよいことになるのです。
 当社は、一般貨物の運送、産業廃棄物の中間処理や収集運搬、木材チップ・オガコ製造販売と有機肥料販売をしています。当社でもエコドライブに取り組んでデータも採取しており、取り組み1ヵ月目で従業員は皆5%をクリアーしています。従業員への意識づけのためにもハイブリッド車を2台使っています。
 もともと製材所から出る木片をチップにして製紙工場へ運送するだけでしたが、今はチップダストはきのこ用培地として、きのこ栽培業者へ納入し、粉砕おが屑は牧場へ畜産用敷材として納入しています。また、近江広報委員長が経営されるラーメン店から出る使用済み割りばしを洗ってもらい、原料として受け入れています。
 建築解体の依頼があったときは、他の産廃業者を紹介しています。引き取ることよりも、多方面のつながりを持ち、木を生かしてやれるところに持って行き、木が持つ命を完結させてやりたいと考えています。ロゴも、リサイクルをイメージするものにしています。

中小企業ならではの力を最大限発揮して

稲垣 森さんのところではリサイクル設備を開発されており、展示会等でも大きな反響を呼んでいるそうですね。
 当社はもともとプレス機や工作機械等の油圧機器を中心とした修理業務や、廃材のリサイクル装置の販売を中心に行っていました。2008年より、1台で分離と破砕が同時にできるシュレッダーを開発・販売しています。「砕く」のではなく「そぎ取る」ことができる独自の回転刃を用い、さらに小型化した機械を、中小企業などで従来廃棄物として処分していた不良品等を自社でリサイクルすることができます。
 今は光ケーブルに注目しています。光回線は2000年ごろから普及し始め、ここ数年で交換時期に入っていますが、鉄心、樹脂、光ファイバーケーブルの分離が難しく、90%以上は埋め立てるか燃やしているのが現状です。
稲垣 今後の展望として廃タイヤ、光ケーブルの次には何をお考えですか。
 レアメタルを用いている携帯電話ですね。携帯電話店に機械を置かせてもらえればありがたいですね。
稲垣 その場で処理してしまえば流通コストがかからないから良いですね。
 さていよいよ岸田さんですが仕事柄、二酸化炭素を吸収する森林に注目しておられますね。

製材業として自社の力を森林再生に

岸田 当社は米国産・ロシア産・ニュージーランド産・国産木材を製材し、建築・土木・産業資材用に販売しています。同友会で経営指針を作らせてもらったときに、「森林再生には、岸田木材の力を活かせますよ」と言われました。
 京都議定書でも温暖化ガス削減目標6%のうち森林吸収源から3・8%期待されていますが、遅々として進んでいないのが実情です。木は、二酸化炭素を固定しています。切り倒した状態では、森は荒れ果ててしまいます。どんな木でも、多少なりとも、お金になりますので、山からの搬出をお願いします。
 昨年から、地域の森を守る活動を社員と始めました。昨日も氷見市上田の「木霊(こだま)の森」にコナラの苗木50本を植林しました。森を守ることは氷見の水産資源を守ることにつながります。ただ、植林や下草刈だけでなく、森でいかに楽しむか、森林浴のようにリフレッシュするという視点から考えることが重要です。

企業の環境保全責任を本質から考えよう

稲垣 今回、富山同友会に環境を真剣に考え実践している方がおられることを知り、とてもうれしいですね。
竹内 環境、環境とお題目を言っていてもダメで、岸田木材さんのように社員さんと体を使って取り組むことが大切だと思います。
 当社でも、会社周辺のごみ拾いと草むしりをしています。今、太陽光発電が注目されていますが、儲かるということだけでやり始めてもうまくいきません。そういう動機だけで始めると、少しうまくいかないとすぐにやめてしまうことになります。
高橋 環境によいことを行うことを、まずは費用対効果から見る経営者が多いですが、これからは企業の環境保全責任から考えることが大切だと思います。
稲垣 エコポイント制度があるうちに電気製品を買い替えようというふうに、手段が目的になりがちですが、本質を考えることが大切ではないかと思います。
 住宅業界でも、住宅の寿命を長くして、スクラップアンドビルドからストック型社会への転換を進める政策の一環として、長期優良住宅だと普通の住宅よりも税が優遇される措置が始まっています。お客さまに長期優良住宅を勧めるのであれば、単に費用対効果の観点だけではなく、なぜこのような制度があるのか、環境のことなどを含め、1から説明することが大切だと思っています。
 常に本質を考えながら物事を進めていくことが当たり前の社会になれば素晴らしいですね。

「中小企業家しんぶん」 2010年 2月 15日号より