合い言葉は「百姓、百商、百笑」 (有)シュシュ社長 山口 成美氏(長崎)

合い言葉は「百姓、百商、百笑」
農産物直売所から42万人が訪れる観光ファームに
(有)シュシュ社長 山口 成美氏(長崎)

 農業と地域を活性化させたいと、長崎県大村市の農家8人で始まった「おおむら夢ファーム シュシュ」。11年前、農産物直売所「新鮮組」をオープン、その後、レストラン、体験教室など次々と広げ、今では年間42万人が訪れる3000坪の観光ファームに成長しています。(有)シュシュ社長の山口成美氏(長崎同友会会員)が、宮崎同友会の中小企業経営フォーラムで行った報告より、抜粋して紹介します。

「農損」を「NO損」に

 農村というと、なにか暗いイメージがあるとよく言われますが、どうも「農村は農損」というイメージがあります。ここを何とかしないと後継者は育っていきませんので、損がなくなるように、「NO損」を目標にしています。

 いまは生産だけしていてはなかなか利益が出ないという状況ですので、加工なりサービスなりの事業まで取り組む。1次、2次、3次産業で、6次産業と考えています。すなわち100の商売をしよう、自分たちも喜び、お客さんにも喜んでいただける100回笑える仕事にしていこうと、「百姓、百商、百笑」を合い言葉に飛躍をしようとしているところです。

 私どもの場所は長崎空港から車で15分、高速から6分、標高100メートルのところにあります。こういう施設を造る前は、本当に田舎でした。その中でお客さんを呼び込んでいくためには、やはり攻める姿勢が事業には大切だと思います。ないものねだりより、あるものを探そうという考え方で、地域にあるもの、地域にしかできないものという話題を提供しています。

シュシュ設立へ

 まず農産物の直売所をはじめました。私は、農協で畜産指導員をしていました。卵、牛乳というのは物価の優等生ですが、それを生産する農家がどんなに努力しても経営不振に陥って辞めていく姿をずっと見ていました。そこで、付加価値を高められるものをと考え、アイスクリームの製造に取り組みました。1997年10月10日にオープンしましたが、初日から1000人以上が押し寄せ、昼間だけ製造をしたのでは追いつかない状態になりました。

 そのうち、農業交流拠点施設という事業があるということで、全国の施設をお役所と一緒に見て回りました。第3セクターではなく、農家や地域の人がやっているところは成功していることを見せつけられ、自分たちでやるか、ということになりました。

 総額4億円の投資をし、2000年に「おおむら夢ファーム シュシュ」がスタートしました。一昨年には洋菓子の工房もオープン、直売所も増設し、現在の姿になりました。「シュシュ」とはフランス語で「お気に入りの」という意味です。

直売所でPOSシステムとメール配信

 農産物直売所では、つくった人の顔が見える直売所ということで、写真を飾っています。ナシやイチゴなどの果物も生産者の名前が見えるように、値段と名前が入ったシールを貼りますが、お土産にもなるようにと、シールにミシン目を入れ、値段のところだけ切り取れるようにしています。

 直売所で一番の欠点は、朝にはたくさんあっても、昼から行ったら何もないということ。私どもではPOSシステムとメール配信サービスを行い、いつ、だれの何がいくつ売れたというメール配信を一時間ごとに送ることで、ロスなく販売できるようになりました。

 アイスは、地元でできる旬の材料を使って、年間に60種類ほど販売しています。牛乳も付加価値を高め、農家が通常出荷する価格より高めの価格で仕入れます。そうすることで、農家は意欲を持って働くようになります。パン工房も、地元の米粉を使った米粉パンやムラサキイモパンなどをつくっています。

 レストランでは、地元の食材を利用した郷土料理やバイキングをやっています。ブライダルや法事もそこで行っていますが、地元の食材を使った郷土料理というコンセプトは崩さないようにやっています。

オリジナル商品で話題づくり

 農家の後継者や青年部では、自分たちが作った小麦で「イケメンうどん」を作ったところ、爆発的に売れました。

 地元の高校、工業技術センターと連携して、米粉、小麦粉、卵、それと地元特産の黒田五寸ニンジンを使ってカステラを作りました。これが、長崎県の新商品の新作展で知事賞と、全国の一村逸品大賞の優秀賞もいただきました。

 少し見方を変えるだけで話題性のある商品も作れます。少し葉先が黄色くなったバラを花だけにして、バラ風呂用に1袋100円のパッケージにしたところ、ヒット商品になりました。

 マスコミが追いかけてくれる話題を作ることも大事です。

 イチゴ狩りでは、ハウスから体験教室の場所まで走って2分。あらかじめ練っていた生地に包めば、収穫から3分後にはイチゴ大福になる。「おそらく日本一新鮮なイチゴ大福」と話題になる。この取材では、生放送でうちのスタッフが間違って「世界一」と言ってしまい、努力せずに世界一のイチゴ大福になりました。

 今話題の究極の手作りハンバーガーは、新入社員のアイデアから出た体験教室です。

農業の未来は地域の未来

 今のままでは農業の未来がない。嫁の来てがない、後継者がいない。農村は寂れていきます。しかし、そこにアイデアを出して加工していく。そうやって農業を若手が入ってくる事業にしていきたい。「農家に嫁ぐならぜひ大村へ」ということでがんばっており、わたしどもの背中を見て、後継者もぞくぞく育っています。

【会社概要】
設立
 1998年
資本金 1500万円
社員数 52名
業種 野菜・果物直売所、レストラン、パン・洋菓子製造販売
所在地 長崎県大村市弥勒寺町
TEL 0957-55-5288
URL http://www.chouchou.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 2月 25日号より

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