日本に中小企業憲章を根づかせよう

「中小企業憲章」の閣議決定へ向けて

 本紙で逐次紹介してきたように中小企業庁の研究会で検討されてきた「中小企業憲章(案)」(以下、「憲章(案)」と略)が閣議決定される予定です。パブリックコメントには173通の意見が寄せられましたが、中同協の意見(本紙6月5日付に掲載)をはじめ各同友会、会員から相当数の意見が提出されたと推測されます。

 「憲章(案)」は、これらの意見と研究会委員の意見を受けて修正され、5月31日の中小企業政策審議会で再修正のうえ承認され、経済産業省政務3 役会議に報告された後、閣議決定の予定です。

 私たちは、中同協として「中小企業憲章草案」(本紙6月5日付に掲載、「憲章草案」と略)を発表しましたが、その主旨が今回の「憲章(案)」にかなり反映されました。「憲章(案)」の内容や決定過程にはまだ課題はありますが、私たちが7年前から取り組んできた中小企業憲章が、願いがかない閣議決定にまで到達しつつあることを、憲章制定運動の成果として率直に喜びたいと思います。

 政府の「憲章(案)」は次の点で注目されます。

 第1に、「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と中小企業の経済的社会的役割を高く位置づけていることです。また、「国家の財産ともいうべき存在」、「変革の担い手」という表現も出てきます。

 私たちの「憲章草案」では、「中小企業は、日本経済の根幹である」と位置づけ、経済・社会・文化などでの中小企業の役割を強調していますが、その意を汲んだものと評価できます。

 第2に、前文で「どんな問題も中小企業の立場で考えていく」、「基本原則」の項では「中小企業の声を聴き、どんな問題も中小企業の立場で考え、政策評価につなげる」と述べていますが、政府が中小企業の立場に立って問題に対処する姿勢を明確にしていることも画期的です。

 第3に、「憲章(案)」の検討過程で「行動指針」に「8.中小企業への影響を考慮し政策を総合的に進め…」が挿入され、補強されましたが、「憲章草案」の前文の「中小企業への影響を第一に考慮した総合的な政策を実行するとき…」が採用されたと考えられることです。

 これは、ヨーロッパ小企業憲章や2008年制定のヨーロッパ小企業議定書で強調されている「ThinkSmallFirst」の原則が日本でも据えられたことを意味します。

 その他、パブリックコメントに出した中同協の意見の採用など、多くの「憲章草案」等の反映が見られます。

 問題は、政府の「憲章(案)」をどのように国民の間に広め、諸法令の整備・充実や政策の具体化に活かしていくのか、というところにあります。また、中小企業憲章の実効を高めるための仕組みも重要です。

 その実現のために、「中小企業憲章」を閣議決定に止めず、国会決議をめざすことや、首相直属の「中小企業支援会議」を設置し、省庁横断的な機能を発揮して、中小企業を軸とした経済政策の戦略立案等を進めること、中小企業担当大臣を設置することを要望する取り組みが求められています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 6月 15日号より