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【第1次産業を地域再生の光に】(2)「亜麻の里」復活を目指す~北海道亜麻ルネッサンスプロジェクト

(有)亜麻公社 代表取締役 橋本 眞一氏((株)北海道技術コンサルタント代表取締役)
執行役員内藤 大輔氏((株)北国生活社代表取締役)
(有)ウィズユー・コーポレーション 代表取締役 濱田強氏
(有)大塚農場代表取締役 大塚 利明氏

プロジェクトの皆さん

亜麻工社

 北海道・当別町で、亜麻栽培の復活に挑戦し、新連携や農商工連携による商品開発、亜麻まつりが観光資源となるなど、地域おこしを進める「北海道亜麻ルネッサンスプロジェクト」を紹介します。

 亜麻は、繊維原料として榎本武揚が開拓使時代の北海道に持ち込んだといわれ、昭和40年代まで各地でさかんに栽培されていました。しかし、化学繊維の普及に伴ってその姿は消えてしまい、今では札幌市内の麻生などの地名に、その名残りをとどめているに過ぎません。

 40年近い亜麻の空白時期を越えて、現(有)亜麻公社の橋本眞一氏と内藤大輔氏は、亜麻栽培の復活と商品化に挑戦し、2001年に橋本氏が社長を務める(株)北海道技術コンサルタント内に「起業推進室」を新設。亜麻製品の商品化を模索しました。調査・研究中に、亜麻仁油には健康に良い成分があることも分かりました。2004年には商品化の目処が立ち、国内唯一の亜麻加工業者として(有)亜麻公社を設立しました。

 その後、北海道同友会札幌支部農業経営部会・産学官連携研究会(HOPE)で出会った3社が亜麻事業の構想を膨らませていきます。無農薬栽培による亜麻の原材料供給は当別町の(有)大塚農場、種子から亜麻仁油の抽出および製品化は(株)亜麻公社、販路拡大は(有)ウィズユー・コーポレーション。3 社がそれぞれの得意分野でのノウハウを持ち寄り連携体を構築しました。商品の管理面では北海道立工業試験場、マーケティング面では小樽商科大学のアドバイスを受けながら商品開発を進め、2005年度には、新連携対策補助事業・連携体構築支援事業(北海道経済産業局)に採択され、「北海道亜麻ルネッサンスプロジェクト」を開始しました。また2007年には、農林水産省・経済産業省の「地域資源活用売れる商品づくり支援事業」にも認定されました。

よみがえった亜麻栽培

亜麻の花

 40年近い空白期間のある亜麻栽培は、油糧用亜麻の栽培技術の蓄積が無く、当然マニュアルもない中での未知への挑戦でした。

「突然、内藤君が訪ねて来て何か良く分からんけど、5時間くらい亜麻のことを熱くしゃべっていった。俺も、自分の若いころ思い出したっていうか、まあ、この若者の夢にのってやろうかと。たまたま1反(10アール)だけ土地も空いていたので」と、大塚利明さん((有)大塚農場)はそのきっかけを語ります。

 栽培を始めてからは、花が満開に咲いたときの景観の美しさと、黄金色に実った実、かつて見たこともないほどの夜盗虫の異常発生、台風のとき実が全部飛んでしまうなど、喜びと驚きの連続でした。現在まで亜麻事業が継続しているのは奇跡的なことなのです。2007年には、大塚社長が中心となって当別町の10戸の農家で当別町亜麻生産組合を発足させ、亜麻の生産面積は8ヘクタールまで拡大しています。

販路拡大に向けて

亜麻仁油サプリメント

 薄紫色の亜麻の花が畑一面に広がる6月下旬から7月上旬は、とてもきれいです。8月には種子ができ、その亜麻の種子から抽出した亜麻仁油は、古代ギリシャ時代から健康によいものとして飲用され、中国では漢方薬の材料として使用されるなど、高い保健機能が知られていました。最近の研究では、血液をさらさらにし、皮膚につやを与え、生活習慣病の予防と改善効果、アレルギー抑制効果があることも明らかになってきています。

 濱田社長は大塚社長や橋本社長との出会いから、亜麻公社がつくる亜麻仁油製品の総代理店として販売に関わっています。「北海道の農林水産品をそのまま出荷するのではなく、付加価値をつけて北海道経済に貢献しよう」。濱田社長は、亜麻プロジェクトを通じて少しずつその思いを実現していきます。

 農商工連携などのプロジェクトは、販売段階でつまずきやすいとも言われます。北海道亜麻ルネッサンスプロジェクトは、亜麻の生産者、製品メーカー、販売者の3者間で取引が発生するだけでなく、製品がお客様の手に渡ってはじめてビジネスとして成立するということを強く意識して、マーケティングに力を入れてきました。

 亜麻仁油サプリメントは、商品として世に出して1年間で売れたのはわずか数百個。2007年から、既存の流通網に頼らず、ダイレクトに消費者へ商品価値を訴える方向に転換します。多様なメディアに取り上げられ、お客様から高い評価も得てきました。今では販売量が1万個以上に伸びています。

当別の観光資源になった亜麻まつり

 当別町は、人口1万9000人。札幌市に隣接し、米と切り花の生産が盛んな町です。

 2008年7月、この町で第1回亜麻まつりを開催しました。会場は廃校になった当別町の旧東裏小学校。大塚社長はじめ、多くの亜麻栽培農家の母校です。

 隣接する畑で美しい亜麻の花を見てもらおうと、開花時間に合わせて開催しています。天気はどうだろうか、場所が分かりづらいから迷わないか、開花は間に合うかなど、たくさんの不安を抱えて迎えた当日。朝から天気もよく、見事な花が咲きほころび、来場者は700人を数えました。

 翌年の第2回亜麻まつりでは、町長をはじめ役場職員の協力も得られるようになり、前年より1000人多い来場者で会場は賑わいました。亜麻の取り組みが、しっかりと地域に根を下ろしてきていることを実感できるようになっています。

 今年は、「当別町開基140周年記念」とした第3回亜麻まつりが7月11日に開催されます。

 亜麻まつりでは、旧東裏小学校校舎内の展示会場に、亜麻の歴史、亜麻繊維の特長、亜麻仁油の特長、1885年当時の亜麻工場の写真などを展示しています。そのほか、後世に伝えたい言い伝えや生活史などのデジタル絵本の原画、亜麻の茎を焼いた灰を釉薬にした陶器なども飾っています。

 また、毎年50~100点に及ぶ応募がある亜麻フォトコンテストも開催し、薄紫色の亜麻畑の中にたくさんの人が入り、思い思いに写真を撮っています。

 昨年は「亜麻色の髪の乙女」カラオケコンテストも行いました。審査委員長は、本家のヴィレッジシンガーズのリードボーカル清水道夫さんです。会場と亜麻畑を往復する循環バスを用意し、亜麻畑見学も実施。きれいな風景を楽しむ来場者でいっぱいになりました。

 亜麻の焙煎種子粉末をおそばの麺に練りこんだ独特の風味を持つ亜麻そばや、亜麻の焙煎種子が入ったチキンとおからでできた亜麻バーガーも販売しました。当別町産の野菜や特産品も販売して完売でした。亜麻商品では、サプリメントやドレッシングのほか、観賞用亜麻種子や苗も販売しました。

 体育館を含む一部教室では、家具工房「旅する木」が作る素敵な家具をギャラリーで公開。雰囲気も独特の落ち着きも体験してもらいました。この家具には天然塗料として亜麻仁油でオイル仕上げしています。亜麻仁油で仕上げると、シックな雰囲気になり、アトピーの症状を軽減する効果も含まれることから、外国では病院や住宅の塗料や床材に使用されています。

 開花時期の景観と亜麻の実を使った全国に発信できる新たな商品開発による地域産業作りを進め、農業と地域経済の活力が高まることを目指す亜麻プロジェクト。地域にしっかりと根を張ろうとしています。

「中小企業家しんぶん」 2010年 6月 15日号より

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