社員の士気高め「ピンチをチャンスに」

 昨年1月15日号から開始した本シリーズは、今号で15回となりました。中小企業として、少子化問題をどのように考え、具体的な取り組みができるのか、これまで本シリーズで紹介した企業の実践事例を振り返り、まとめてみました。次回は、本課題に中小企業が取り組む意義についてまとめます。

顧客満足度高いWLB推進企業

 会員企業の実践から、地域の暮らしを支えている中小企業の姿がみえてきます。

 33年前に成文化された「労使見解」(中同協「中小企業における労使関係の見解」)には、経営者として「なによりも実際の仕事を遂行する労働者の生活を保障するとともに、高い志気のもとに、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力が決定的に重要です」とあります。

 紹介した事例から、社員が子育てしながら働きつづけられる「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス、WLB)」の推進は、「労使見解」の実践でもあることが見えてきます。厳しい時代だからこそ「ピンチをチャンスに」、社員の士気を高めることで、顧客の信頼感も増しています。

生活者としていきいき働く

 「社員が主役の会社」をめざす、(株)ファースト・コラボレーション(社長・武樋泰臣氏、高知同友会会員、不動産業)では、06年から「働くママさん計画」をスタート。フレックスタイム制導入や託児ルームの設置などの工夫をし、子育て中の社員を支援。

 3店舗中2店舗の店長が二十代の女性で、「地域になくてはならない会社にしたい」と思いを語っています。(08年1月15日付)

 「同じ生活者だから」と、住宅地にあるトータル・ソフトウェア(株)(社長・今給黎(いまきいれ)正己氏、鹿児島同友会会員、情報産業)は、学校のPTAで社長と社員が顔を合わせる身近な関係です。

 「地域の中でも社員それぞれが大切な存在」とし、社員との毎日の交換日記や細やかな社員研修で社員の帰属意識を高めています。(4月15日付)

子育て支援企業は地域貢献企業

 中堅ゼネコン・藤田建設工業(株)(社長・藤田光夫氏、福島同友会会員)では、「過去3年間に出産した女性従業員の育児休業取得者割合が100%」「女性労働者への役職者への登用」などの取り組みが認められ、福島県「仕事と生活の調和」推進企業認証を受けました。

 有資格者は社員の7割に及び、男女にかかわらず、現場に出し、教育を徹底。公共事業入札時に地域貢献の加点を受けるなど、地域からの信頼感を高めています。(6月15日付)

 水処理業の(株)エステム(会長・鋤柄修氏、愛知同友会会員)は、業界でも早くから女性社員を戦力化し、現場に活力を与えました。

 子育てしながら働き続けられる環境を整備し、幹部として育成。働き続けられる会社にしていくことで、「厳しい時代も社員とともに乗り切れる」としています。(9月15日付)

(11月15日号に続く)

中同協事務局次長 平田美穂

WLB推進を無料でコンサル【中小企業庁】

 中小企業庁では今年度の予算で、「ワーク・ライフ・バランス対応経営普及委託事業」を実施。関東圏で希望する10社に対し、無料でコンサルティングを行い、典型例をつくるなどして実践企業を広げようとしています。

 しかし、締め切りを過ぎても応募する企業がほとんどなく、本テーマへの理解と施策の告知に課題を抱えています。現在は締め切りを延期して募集中です。

 問い合わせは、受託企業の東京海上日動リスクコンサルティングのホームページから。
http://www.tokiorisk.co.jp/

 また、本シリーズでも紹介した、公共事業の入札時の加点や次世代育成支援企業の応援施策など、各都道府県でもさまざまな「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス、WLB)」推進の施策が実施されています。

 最寄りの労働局や商工労働部などにご相談ください。

「中小企業家しんぶん」 2008年 10月 15日号より