中小企業施策「骨太化」の目玉政策
「新連携」とは何か―計画から事業化までを個別支援
「新連携」は、今年度の中小企業支援政策の目玉政策として取り組まれています。新連携事業認定計画(昨年12月15日現在、118件)の中には、同友会会員企業が積極的に取り組んでいる事例も数多く見られます。そこで本紙では、会員企業の新連携事例を連載(毎月5日付)で紹介し、同友会の視点から新連携政策の具体的な活用法と課題を考えていきます。今回はシリーズの総論として、「新連携とは何か」を概観します。
新連携とは、異なる分野で事業を行っている複数の中小企業が、各企業が持つさまざまな強みを持ち寄ってゆるやかなネットワークを形成し、あたかも1つの事業体のように振る舞って、単独企業ではなしえなかった高付加価値の商品・サービスの提供を行う事業形態を指しています。
新連携の根拠となる法律は、中小企業新事業活動促進法。同法では、異分野の事業者が連携し、その経営資源を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ることとされています。
支援対象となる「新事業活動」とは
ここで言う「新事業活動」とは、「新製品・新商品」展開とどこが違うのか。同法によれば、新事業活動とは、「新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動をいう」と定義されています。したがって、必ずしも新しい「製品・商品」を作らずとも、その生産方法が新しいなどにより、新たな事業活動となることがあります。
ただし、「新たな生産又は販売の方式」でも新規性があることが要件となり、「地域又は業種の観点から新しいと認められるもの」とされています。地域や業種において、すでに相当程度普及している技術・方式の導入や研究開発段階にとどまる事業については支援対象外になります。
「新たな事業分野の開拓」とは
また、「新たな事業分野の開拓」とは、具体的な販売活動が計画されているなど事業として成り立つ可能性が高く、継続的に事業として成立することが求められるとしています。
財務面では、新連携支援策として融資や補助金(3000万円を上限として、補助対象経費の3分の2以内)を受けることができることから、10年以内に融資返済や投資回収が可能なものであり、資金調達コストも含め一定の利益をあげることが必要とされています。新連携ビジネスの成立のイメージは、認定後1年ほどで売上が立ち、2年後で営業利益が出ている状態を想定しています。
連携体を支援
新連携政策がこれまでの政策と大きく違うことの1つは、企業を直接支援するのでなく、事業形態としての連携体を支援することです。
連携体の条件は、(1)連携グループ内に対外的な責任主体となりうる中核的(コア)企業が存在すること、(2)2つ以上の中小企業が参加すること(大企業や大学、研究機関、NPO、組合などを加えることも可能)、(3)規約等により責任体制が明確化されていること、です。規約については、フォーマットはなく、各企業の役割分担、工程管理、利益配分等がペーパーの形ではっきりしていれば構いません。
市場化に向け後押し
これまでの政策と違うことのもう1つは、連携体プロジェクトを市場化に向けて後押しする次の仕組みをつくっていることです。
(1) 全国9カ所のブロックに「新連携支援地域戦略会議」を設置し、新連携案件を支援します。したがって、問い合わせ・申込み窓口は、都道府県ではなく、同戦略会議事務局または地方経済産業局になります。
(2) 戦略会議事務局には、ビジネスに精通し、さまざまな支援機関とネットワークを持った者をプロジェクトマネージャーやサブマネージャーとして設置し、これを中核に個別支援チームをつくり、事業計画の策定から認定後の市場に製品・サービスが提供される段階まで、一貫してフォローアップを行います。
(3) 注目されるのは、個別支援チームに金融機関の参加をめざし、計画認定とともに円滑な資金調達が可能になることをねらっていることです。連携事業を通じ、金融機関の目利き機能の向上とリレーションシップバンキングの実現を図るねらいもあります。
なお、これから新たに連携体を組もうという中小企業は、連携体構築にかかる費用を補助するフォーメーション補助金(連携体構築支援事業、上限330万円、補助対象経費の3分の2以内)を活用できます。
新連携は産業クラスターの出口
以上のように、新連携政策は、案件ごとに専門家で構成する個別支援チームがきめ細かく支援し、なんとか事業化までこぎつけようとするねらいが明確にされています。その背景には、これまでさまざまな中小企業支援政策が実施され、政策資金も投入されてきましたが、なかなか事業化段階にまで至る成果を生み出し得なかったことがあると考えられます。事実、「新連携は産業クラスターの出口」と位置づけられています。
「産業クラスターの中では、連携体や研究開発が行われているものの、実際に事業として収益をあげるレベルまで達しないままである案件が多いと考えております。新連携スキームにおいては、このような案件のうち、実際に事業化に結びついていくレベルのものについて、支援を行い、クラスターに参加している企業の具体的な出口として活用できるものと考えております」(新連携支援地域戦略会議ホームページQ&Aより)と述べています。
さらに、1999年の中小企業基本法改正以来、新連携政策に至るまでに有効な政策を打ち出せなかったという政策当局の「反省」も背後に見えてきます。
「(前略)中小企業基本法改正により、中小企業施策の政策理念は…大きく転換されました。しかし、その後の景気低迷等を受け、かかる理念を具現化するために必要な各種施策について、総合的かつ抜本的な検討は十分なされていませんでした」(中小企業庁事業環境部企画課「中小企業新事業活動促進法の概要について」『中小公庫マンスリー』2005年5月号)という「告白」が注目されます。
このような経過から政策当局は、新連携政策を「中小企業施策の骨太化」(同前)に資する「総合的かつ抜本的な」政策と位置づけています。各同友会においても、新連携政策の不備な点や問題点、課題を指摘しつつも、今後さらに多くの会員企業が「新連携」施策に挑戦し、成果に結びつけることが期待されます。
■中小企業庁ホームページ/経営サポート「中小企業新事業活動促進法」
>> http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shinpou/
■新連携支援地域戦略会議ホームページ
>> http://www.smrj.go.jp/shinrenkei/
「中小企業家しんぶん」 2006年 1月 5日号から