日本初の電動チェーンブロック式足場用作業リフトを開発・レンタル~(株)アイル 社長 樋口 康治氏(福岡)

足場工事のコスト削減とともに、業界発展のため「安全・安心」を提供

 粗利益の減少に歯止めがかからない建築業界で、足場工事を手がける(株)アイルでは、社内のアイデアを元に開発した、コストダウンと安全を両立させる足場作業リフトのレンタルを開始しました。

歯止めのかからない粗利益減少のなかで

 (株)アイルは、新築・リフォーム工事等における作業用足場の工事・レンタルをされている会社です。

 もともと足場工事は、高所による危険作業を伴うため足場材の荷揚げは人海戦術による作業となり、経費が嵩(かさ)むことが課題とされていました。さらに近年では、建設市場の縮小に加え建築基準法の改正や足場基準の法改正等が重なり、粗利益減少に歯止めがかからない状況になっていました。

社内の改善委員会でアイデア募集

 経営指針づくりを社員も巻き込んで行っている(株)アイルでは、効率性や安全性を「見える化」する取り組みとして、社内に「改善委員会」が設け、アイデアの募集やさまざまな提案を取り入れて実践していました。この足場工事に関しても問題点を解決するため改善案を出し合い、約5年前から荷揚げ作業の機械化に取り組んでいました。

 当初、樋口社長の発案による簡易クレーンを開発しましたが、使い勝手が悪く、現場職人がなかなか使おうとはしませんでした。どうしたものかと頭を抱えていた樋口社長に、社員から「ボックス式のレールによるリフトを開発したらどうか」と提案がありました。早速、同じ福岡同友会筑紫支部に所属する和新工業(株)(森茂博社長・物流機器等のメーカー)に相談を持ちかけたところ、「ぜひ一緒に開発しよう」ということで話がまとまり、開発に着手。

同じ支部に属する和新工業と共同開発

 協力を引き受けた和新工業(株)にも、「新製品開発委員会」という部門があったことから、(株)アイルの「改善委員会」と合同会議を何度も開きながら、開発を進めていきました。約2年かけて試作機が完成しましたが、問題点がいくつか発生し、さらに和新工業と共に改良を重ねました。

 あわせて、同友会の活動の中で紹介を受け、関係づくりをすすめていた九州経済産業局や中小企業基盤整備機構、福岡県工業技術センターなどへも何度も相談に出かけ、支援やアドバイスを受けながら試行錯誤を繰り返し、2009年3月、ついに日本初の電動チェーンブロック式足場用作業リフトが完成。名称も社員に公募し、鳶職人を助けるという意味で「猿鳶(さるとび)太助(たすけ)」と命名しました。

コスト削減と「安全・安心」

 この作業リフト「猿鳶太助」は、当初は自社のコスト削減のための開発でした。しかし、足場工事業者におけるコスト削減(約30%減)はもちろんのこと、元請の建設会社や施主にとっても「安全・安心」を提供できることから、(株)アイルでは、7月から「足場作業革命」を旗印にレンタルも開始し、実際の使用状況を見た元請の建設会社からも、高い評価を得ているとのことです。

 現在特許を出願しており、今後、主力商品化をすすめていく予定です。樋口社長は、「この作業リフト「猿鳶太助」が我社の経営改善に役立つとともに足場工事の『安全・安心』となり、さらなる業界の発展につながることを願っています」と話しています。

会社概要

創業 1994年4月8日
資本金 1000万円
年商 2億5000万円
社員数 20名
業種 足場作業用リフト「猿鳶太助」のレンタル。各種足場の組立、解体。1側足場材料レンタル。
所在地 福岡市西区大字吉武333-3
TEL 092-811-8100
http://www.ill-rental.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2009年 9月 25日号より