神戸洗管工業（株）は、洗管業からビルメンテナンス業の会社です。そして、若い力で新分野のリフォーム事業へと乗り出し、価格決定権を持つ自立型企業へと変わっていきます。
自立型企業へ
中高層住宅や一般家庭、工場、病院などの壁や床には給排水にかかわる配管が施されています。利用者がその管を意識するのは、排水が詰まったときなどのトラブル時。能崎晴夫氏（神戸洗管工業（株）社長、兵庫同友会会員）は、その詰まりを24時間フル対応で解決するための会社を、1976年に4名で設立しました。
今では、同友会の共同求人活動で定期的に新卒採用を行い、リフォーム部門を確立。兵庫同友会の支部長や共同求人委員長も経験しながら企業で実践し、価格決定権を持つ自立型企業となってきています。
「顧客の顔が見える」仕事づくりへ
能崎氏は、生まれ育った大阪で、造船にかかわる鋳物や金型などの仕事を手がけてきました。それらの経験から、現金商売をすること、ワンマン経営ではいけないこと、直接ユーザーと取引し顧客の顔が見える仕事をすること、大きくしない、つぶれない会社をつくることなどを教訓として、妻の出身地・神戸で洗管の会社を立ち上げました。
マンションブームに乗り、業績を上げていったものの、24時間フル対応するためには、多くの技術者を常駐させていなければならず効率は上がりません。また、競争相手が増える中で、常に他社との価格競争に巻き込まれてしまいます。
そこで、能崎氏は安定したサービスを提供しながら、社員の待遇を改善するために、年間契約方式をとり、マンションであれば戸数に見合った価格を設定して、1棟丸ごと定期点検・清掃を行うというビジネスモデルを構築しました。
配管のメンテナンスを通して建物の改修まで請け負うことになり、現在では長期修繕計画に基づいたマンションの総合的な管理システムを「トータルメンテナンス」として提供。マンション完成時から定期点検、診断、補修工事などを総合的に行っています。
洗管からリフォーム事業へ
そのような中、耐用年数を過ぎ、劣化してきたパイプを取り替える仕事も手掛けるようになり、能崎氏の長年の念願でもあった、ユーザーとの直接取引が生まれてきました。
そこで、社内に内装から外壁のリフォームまで行うリフォーム部門「アルココーベ」を立ち上げました。
昨年12月には、兵庫駅から徒歩3分のところに本社ビル移転に合わせてリフォームセンターを開設。道行く人が気楽に立ち寄れるようキッチンやバス・トイレなどの展示を行いながら、専門家が待機してリフォームの相談に乗れるような環境を作りました。
駅から離れた新築マンションより、駅に近い安い中古マンションを購入する客層を狙い、管理組合や個人からも全面的なリフォームを請け負い、住み心地の良い空間を提供するという、新分野に本格的に乗り出しています。
新卒採用を社内改革の力に
このリフォーム部門をここまで軌道に乗せるためには、建築士も入れながら、創造的にアイデアを提供できる若い人材を確保する必要がありました。
能崎氏は1978年に兵庫同友会に入会し、積極的に例会に参加。経営者は経営判断力を磨く必要があること、中小企業の地位を向上させる必要があること、価格決定権を持つ自立型企業になっていかなければ社員を幸せにできないことなどを学んできました。
そして、1994年から共同求人活動に参加し、新卒採用を開始。現在では70名近い社員数となり、資格取得も奨励し、社員の大半が建築士や建築や土木関連技士、工事関連技術者など資格取得者となり、創造的にアイデアが出し合える社風を築いています。
さらに顧客の視点で、社是「社会的使命感を持ち、会社の発展と社員の幸福を増すために努力いたします」（一部抜粋）を追求し、自ら実践し続ける能崎氏。
「若い人が元気に働いている会社こそ、いい仕事ができる。次の世代に継いでいける働きがいのある会社にしていきたい」と語っています。
会社概要
創業 1976年
資本金 5,000万円
年商 7億5,000万円
社員数 68名
業種 ビルメンテナンス、建築、設備業、洗管、貯水槽清掃
所在地 兵庫県神戸市兵庫区下沢通8-1-22
http://www.kobe-senkan.co.jp/
「中小企業家しんぶん」 2010年 3月 25日号より
