新連載【実践 経営指針】1

 経営指針成文化の運動が全国的に広がりましたが、実践し成果につなげていくことが課題となっています。今シリーズでは、各同友会の経営指針実践運動の取り組みを連載で紹介していきます。第1回の今回は、7月14~15日に行われた中同協第48回総会第4分科会(テーマ「経営指針の成文化から実践運動へ~『経営指針成文化と実践の手引き』(改訂版)の活用を~」)から3つの同友会の取り組みを紹介します。

社員と共に学び実践する場へ―岩手

東日本機電開発(株)代表取締役 水戸谷剛氏

水戸谷 剛氏(東日本機電開発(株) 代表取締役/岩手同友会副代表理事・経営労働委員長)

 岩手同友会では、「経営指針を創る会」という名称で、6講座を半年間に12日かけて開催しています。受講生が毎回5~15名程度、実行委員が20~30名程度です。

 プログラム構成は、中同協の『経営指針作成の手引き』と岩手同友会独自の『作成マニュアル』をテキストに「経営理念」、「経営方針」、「経営計画」の構成と「現状認識(歴史、創業の思い、財務)」、「10年ビジョン」、「6つの質問((1)何のために経営しているか、(2)どんな会社にしたいか、(3)社員をどうみているか、(4)わが社は何を売っている会社か、(5)わが社のお客様は誰か、(6)地域にとってわが社はどのような会社か)」について発表と検討(問いかけ)を中心に実施しています。先輩経営者や専門家の講義、ミニ報告などを受講生の現状に合わせプログラムとして組み込んでいます。

 毎回の講座の冒頭では、「労使見解」と「創る会の目的・基本姿勢」を全員で読み合わせをして、講座で大切にすることを確認しています。

 また以前は「助言者」と言っていましたが、ややもすると「教える人」になってしまうのではないかということから、「実行委員」に名称や位置づけを変えました。

 「社員と共に学び実践する場へ」という観点から「創る会」終了後、卒業生とその幹部社員を対象に「経営指針実践幹部共育講座」を開催しています。

理念成文化を重視し、PDCAの入り口をつくる実践塾―徳島

ワコウクリーンサービス(株)代表取締役 吉武恭介氏

吉武 恭介氏(ワコウクリーンサービス(株) 代表取締役/徳島同友会理事・経営労働委員長)

 徳島同友会では、「経営指針実践塾」という名称で年2回開催しています。実質11日間で、定員は各10名です。受講生1名につき、サポーターが2~3名つきます。位置づけ、目的として、(1)理念を成文化し、あるべき姿が明確になること、(2)方針から来る単年度計画をしっかりたてること。1つでも「これはやる!」というものをつくることによって、理念を深めるためのPDCAの入り口をつくる、(3)同期と一緒につくり、その後も刺激し合うという塾風をつくる、の3つがあります。

 前期後期それぞれ塾長各1名、副長各5名、サポーター20数名で運営しています。サポーターが疲弊しない様、またそれぞれの塾長のカラーを出しやすいようにし、またお互いの良さやアイデアを補完し合うよう工夫しています。

 毎回の講座の15分前にグループリーダーミーティングを行い、各グループの課題を情報交換しています。また各講座の終了後は、受講生だけのミーティングを行っています。受講生同士による情報共有、相互援助の機会となっています。

 カリキュラムの特徴としては、(1)課題図書を指定し、読書感想文を提出。(2)討論が主体。(3)理念の仕上げのみ合宿を実施。(4)共同求人委員長、社員共育委員長、地球環境委員長による途中講習。期間中の支部例会の参加を最低2講必須とする。(5)成文化をした人は例会報告を行うことです。

ドラマが生まれる模擬発表―富山

(株)高橋代表取締役 高橋 賢氏

高橋 賢氏((株)高橋 代表取締役/富山同友会副代表理事・経営労働委員長)

 富山同友会では、「経営指針を創る会」を年1回、5カ月間に全5講を11日間で行っています。受講生は10~15名、助言者は25~30名前後です。最近は、各支部で「理念塾」を開催しています。指針づくりの入門講座といった位置づけです。

 「創る会」は、受講生の発表に対して助言者が質問や意見を出してやりとりする、いわゆる「道場形式」です。受講者には「助言者もセット」と、次年開催の「創る会」に助言者として参加することを義務づけています。それは、助言することで見えてくることがたくさんあるためです。

 「創る会」では、理念成文化から基本方針作成までを行います。事前課題として、フェイスシート(自社紹介及び受講動機などを書いたもの)と『人を生かす経営』を読んだ感想文を提出してもらっています。

 最終日の模擬発表の際には、受講生にかかわりのある人(幹部社員や先代社長、社員、家族など)に立ち会ってもらっています。時には辛らつなやり取りもあるのですが、社員から「うちの社長はそんな人じゃありません」と発言があり、経営者が泣いてしまうなど、そこではいろいろなドラマが生まれています。

 第1講から第3講までの間に、助言者による受講生企業の訪問を行って、より受講生の理解を深め、適切な助言ができるようにしています。

「中小企業家しんぶん」 2016年 9月 15日号より