新年の経済情勢を探る~世界同時不況の可能性に警戒を~

 現況をDOR(同友会景況調査)のデータから見てみましょう。まず、2022年10~12月では、業況判断DI(「好転」―「悪化」割合)は4→8、前期(7月~9月)の4から今期の8に好転したことを示します。ほかの指標も見ると、足元の景況を示す業況水準DI(「良い」―「悪い」割合)は△7→8、売上高DI(「増加」―「減少」割合)は9→15、経常利益DI(「増加」―「減少」割合)は△6→△2と、主要指標はすべて好転しました。

 新年から景気のいい話ですが、次期(2023年1月~3月期)は、業況判断DIが8→1、業況水準DIが8→△2、売上高DIが15→11、経常利益DIが△2→△1、と予測。主要指標は悪化を予想しており、好転はいつまでも続くわけではありません。

 しかも、世界的に考えれば、大きなリスクを抱えています。例えば、国際通貨基金(IMF)の専務理事は「世界経済の3分の1が来年までに(景気後退を示す)2・四半期連続のマイナス成長に陥る」としました(10月7日、日本経済新聞)。

 シンクタンクも特集を組みはじめています(2022年11月25日「2023年の世界同時不況リスクを考える」大和総研)。

 その内容は、日本経済の回復基調は当面続くが、海外経済が下振れする懸念は強まっている、とします。米国の失業率上昇、中国のロックダウンと不動産市場の大幅調整、ユーロ圏の信用収縮などのリスクが指摘でき、2023年にこれらが同時に発生すると仮定した場合、世界経済は深刻な不況に陥る、と警鐘をならします。しかも、世界同時不況が発生した場合、日本経済も大きな影響を受け、実質GDPは最大5%ポイント以上下押しされて大幅なマイナス成長になると推計されます。新興国やユーロ圏では、さらに大きな落ち込みに見舞われると考えられる、とします。

 経済の先行きを見通す上で、米国ではインフレ抑制のために必要となる失業率の上昇度合い、中国では低迷する不動産市場に対する政策とその効果、ユーロ圏ではエネルギーコストや金利負担の上昇からくる企業収益の落ち込みなどが、ポイントになるとします。

 2022年12月20日、日本銀行は10年物日本国債の上限金利を0・25%から0・5%に引き上げることを決定。日銀が発表した「事実上の利上げ」は世間の驚きをもって受け止められ、ドル円相場は一時、5円も円高に振れました。

 アベノミクスの象徴だった異次元緩和は10年目で転換点に立ちました。「アベノミクスの終わりの始まり」が漂います。

 市場機能の低下を是正すると日銀は説明しますが、次期総裁に交代するに当たっての「地ならし」の意味もあると考えられます。いずれにせよ、年明け早々厳しい指摘になりますが、2023年は景気後退が主旋律になる年と考えられ、今後の経済動向を注視する必要がありそうです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2023年 1月 15日号より