トピックス

衰退する業界でいかに活路を見いだしていくか 農業生産法人(株)さかうえ 代表取締役 坂上 隆氏(鹿児島)

【あっ!こんな会社あったんだ】第3回 持続可能な企業づくり

坂上隆社長

自立と自律をもった、ゆるがない経営基盤で道を拓く

 農業生産法人(株)さかうえは、鹿児島県の大隅半島に位置する志布志市で作付面積220ヘクタール(東京ドーム約47個分)の広大な土地に、ケール、じゃがいも、ピーマン、デントコーン(飼料用トウモロコシ)などを栽培しています。

 事業の柱は、契約栽培事業、牧草飼料事業、農業経営IT化事業の3つ。坂上氏が就農したのは25年前の24歳のとき、当時は、坂上氏の父がゴルフ場向けの芝の生産・販売を行っていました。バブル崩壊による芝の需要減少や冬場は芝が眠り畑が暇になること、加えて野菜の栽培技術を習得したいという思いから、市場向けの青果用大根の栽培を始めました。しかし、市場の暴落により1本5円しか値がつかず、人件費も出ません。このことがきっかけで、高く売るという考え方からいかに損をしないか、取引先が必要とするものを提供するという考え方に切り替えました。契約栽培事業では、特定の取引先にのみ出荷しているので、市場の価格に左右されることはなく、安定した売上を上げることができます。

新しいビジネスモデルの構築

 2002年、近隣の畜産農家に「すき込むぐらいなら餌にするからわけてほしい」と言われました。当時、飼料は外国から安価で良いものが入手でき、国内で飼料を大規模に作る農家はありませんでした。情報を収集していくと、国際マーケットの動向によって価格が変動し、飼料管理が不安定になる、頭数を拡大すると飼料作物栽培にかける時間が不足することなどがわかりました。坂上氏は飼料作物供給がビジネスになると考え、試行錯誤の結果、デントコーンを使用すれば栄養価の高いものができるとの結論に至りました。さらに、大型バンカーサイロで嫌気発酵させ、ロール状に形成することで品質の低下もなく、高栄養価で価格競争力のある国産飼料を作ることができる独自ノウハウを開発しました。

 トウモロコシは二酸化炭素の浄化作用が高く、酸素を出すC4作物です。地球温暖化対策にも役立ち、食料自給率のアップ、穀物の自給も助けます。

農業工程管理システム

ポテトハーベスター

 ポテトハーベスターという馬鈴薯収穫用の大型機械を買いましたが、鹿児島だけだと2カ月しか使いません。ある時、北海道で収穫してほしいと言われ、機械を大型トレーラーに乗せて北海道へ。時間や費用をかけてもそれを上回る収益があればいいのです。そう考えると地球を耕せるという発想になり、(株)さかうえだけで完結するのではなく、県はひとつ、国はひとつ、地球はひとつという考え方に変わりました。この一見壮大とも思える考えを支えたのが農業工程管理システムです。

 つまり、収穫作業などの工程、時間、費用、収益、土地など農業生産要素の関係性を明らかにしたのです。口伝中心の農業で技術やプロセスの標準化をめざしました。1998年から作付面積、土壌管理、栽培管理記録などを行い、蓄積されたデータをもとに2007年に「農業工程管理システム」を開発したのです。このシステムで、遠隔マネジメント、記憶ではなく、記録をベースにした高精度の社員同士の話し合い、精度の高い予測が実現。農業の最大の弱点である「気象には対応できない」を覆すことになりました。坂上氏は、過去を正確に把握し、現状をつかめばより正確に未来を読むことができる。将来を予測することはリスク管理の1つで、情報でリスクを減らせると言います。

欲求の最大化とイノベーション

 マーケティングとは、欲求をつかむこと。欲求が需要を生み出し、供給されることで価格(価値)が決まります。しかし、世の中の欲求と社員の欲求は必ずしも一致はしません。それを実現するのがイノベーションです。イノベーションとは新しく何かをするということ。

 うまくいかないことをどうやって結合させるか。欲求をつかみイノベーションすることが組織づくりにつながり、会社は発展していきます。

 (株)さかうえでは、プロダクト、マインド、プロセスと3つのイノベーションのサイクルをまわしています。プロダクトイノベーションとは、単に製品を変えるのではなく、新たな顧客満足を創出できる方向に変える、マインドイノベーションは社員の行動や考え方を変えて、新たな顧客満足が創出できる方向に変える、プロセスイノベーションとは仕事のやり方を変えることによって、新たな顧客満足を創出するというものです。社会は常に変化しています。次のサイクルを生み出すためには新しく商品を生み出し、会社の体質を変え、そしてそれらに合った仕組みに変えていくことが必要なのです。

今後の展望

 (株)さかうえのコンセプトは「農業で幸せを創る」。「旬をつかみ、幸せをプランし、自然の豊かさをお客様にお届けする」「新しい『農業価値』を創出し続けて、地域・社会に貢献する」という明確なビジョンがあります。

 農業の業界を考えると、現場だけに目がいき、仕組みづくりや社員教育ができていない会社がたくさんあります。社長が自己変革できずに、衰退や破綻していく姿をたくさん見てきました。そういう農家を少しでも減らしたいとこれまで、(株)さかうえで長年培われてきたノウハウをパッケージ化し、コンサルティング事業も展開しています。

 農業の世界で(株)さかうえだけで1万人雇用は難しいですが、(株)さかうえを1つの木としてたくさんの木を育て、森を作っていけばそれは可能になると考えています。1社で5億~10億の売り上げを生み出せれば、100社で1000億円も夢ではありません。

 「BIG PICTURE、SMALLWIN」大きな絵・ビジョンを描きやることを決め、毎日の小さな課題を着実に解決し、推進していく。農業界をリードする(株)さかうえはこれからも新しいことに挑戦し続けます。

農業生産法人(株)さかうえ 会社概要

設立:1995年
資本金:5,200万円
社員数:48名
事業内容:契約栽培事業、牧草飼料事業、農業IT化事業
URL:http://www.sakaue-farm.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2018年 4月 25日号より

このページの先頭にもどる

トピックス

携帯用二次元バーコード
携帯対応について

更新情報RSS