【同友エコ受賞企業の実践(地球環境委員長賞)】省エネに取り組むことを「豊かな暮らしを未来につなぐこと」

(株)育暮家(いくぼーや)ハイホームス 代表取締役 寺坂 麿(まろ)氏(静岡)

中同協では「同友エコ」の取り組みの一環として「環境経営・エネルギーシフト」に関するアンケートを実施し、27同友会から1860社の応募がありました。応募企業を審査し、表彰された企業の実践を紹介します。今回は地球環境委員長賞を受賞した(株)育暮家ハイホームス(静岡)です。

最小限のエネルギーで日本らしい豊かな暮らしを残す

 静岡県藤枝市の閑静な住宅地にある(株)育暮家ハイホームス。12月の冷たい風が吹く中、代表取締役の寺坂麿氏に同友エコ受賞についてお話を伺いにモデルルームを訪ねると、そこには陽の光が差し込む快適な空間がありました。

 住宅リフォームや新築住宅、古民家再生を手掛ける同社は、自然な熱と光と風を最大限利用するパッシブデザインを生かした家づくりに取り組んでいます。「大切なものを残し、育む住まい」をコンセプトとし、最小限のエネルギーで豊かな暮らしの実現をめざしています。

 2015年のCOP21で採択されたパリ協定では、世界全体と各国の温室効果ガス排出量の目標が定められました。寺坂氏はこの決定と自社のコンセプトをリンクさせ、「わが家の省エネ手帳」というアプリを開発。2016年には経営革新計画の承認に至りました。

 このアプリは、生活に使用するエネルギー量を継続的に記録し可視化することで、一人ひとりが日々の暮らしを見直すことができます。アプリには入門編(緑色)と応用編(黄色)があり「Google Play Store」や「App Store」から無料でダウンロードでき、誰でも気軽に利用して省エネをより身近に意識して取り組むことができます。

一人ひとりの手のひらに省エネを落とし込む

 このアプリに電気、ガス、灯油の消費量を記録すると、エネルギー量が共通単位に変換され、同じ地域や家族構成の世帯のエネルギー使用量と比較できるようになります。利用者はデータに基づいて、暮らしの改善や、建築的要因についての適切なアドバイスを受けとることができます。また同社にとっては、入力されたデータや利用者の立てた省エネ目標に基づいて、リフォームなどの提案につなげるツールにもなります。

 パリ協定で定められた削減目標は「世界との約束事」と語る寺坂氏。「スマートフォンに対応したこのアプリを通じて、生活の改善点を手のひらの中に伝えることができる。そして、一人ひとりが省エネの目標を立てて行動を改善し続けていけば、他人事のように思えてしまうような大きな目標さえも達成に近づけられる」といいます。

 アプリを開発する中で最も重視したのは「継続性」でした。イラストやグラフを多く用いて、楽しく継続して利用してもらえるような工夫が施されています。

 また、単に使用量を知るだけでなく、同じ地域・同じ家族人数の平均値と比較したり、設定された目標値をクリアしたりしていくことで、利用者は達成感も得られます。アプリ利用を通じて省エネへの取り組みや最小限のエネルギーで暮らせる家が増えれば、地域全体のエネルギー使用量の削減につながり、ひいてはパリ協定の削減目標に寄与することができるのです。さらには、可視化されたデータを同業他社にも活用してもらうことで、建設業界全体の省エネへの意識向上にもつながると、寺坂氏は期待しています。

 (株)育暮家ハイホームスでは、省エネに取り組むことを「豊かな暮らしを未来につなぐこと」と捉え、一人ひとりが普段の暮らしを見直せる住環境の提案を通じ、豊かな暮らしを育む住まいづくりに取り組んでいきます。

【会社概要】

創業:1985年
事業内容:建設業(設計・施工・住宅、店舗・OMソーラーハウス・古民家再生リフォーム&リノベーション)
従業員数:8名
URL:https://hihomes.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2019年 2月 5日号より