企業連携で若者の夢を応援 日本空間デザイン賞サービス・ホスピタリティ部門金賞受賞【東京】

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】

会員企業2社が連携して開発した「移動式美容室 ABIE Container+」が8月3日、日本空間デザイン賞公開3次審査会においてサービス・ホスピタリティ部門での金賞を受賞しました(10月4日には、11部門の金賞作から2019KUKAN OF THE YEARが選ばれます)。この製品は海上コンテナを改修した移動式の美容室です。拡張性や汎用性、強度、耐久性が高く、給排水タンクや発電機を装備します。外部は無機質なコンテナそのものですが、内部は風景を取り込むことを前提としており、シンプルで清潔感のある内観となっています。移動式のメリットを生かし、被災地支援や屋外イベントや撮影、ロケ現場など、今後の活用の幅にも期待できます。

この製品は、東京都江東区、千葉県市川市を中心に美容室などを6店舗運営する(株)カプラス(駒崎由美子代表取締役・江東支部)と、プレハブやコンテナの企画製造を行う(株)アント(新井成泰代表取締役・渋谷支部)に、デザイナー湯口巌氏(タカラスペースデザイン)を加えた三者で開発しました。今回応募にあたっては、製品そのものの新奇性に加え、その背景にある“理念”を強調しました。同部門では、無印良品のMUJI HOTEL GINZAやナインアワーズなんば駅を抑えての金賞受賞です。

地方出身の美容師の多くは高い技術を求め都市部に就職しますが、「いずれ地元に帰りたい」という夢を持っています。しかし、働きたいと思うような美容室は少なく、開業する際には資金や開業当初の集客の問題がつきまといます。同社でも3割が地方出身者となっています。「地元で美容師をしたい」という夢を応援したいという思いから生まれたこの製品は、開業のハードルを引き下げ、地元での開業を後押しするものとなっています。映画撮影や屋外ロケ現場のレンタル楽屋としての需要もあり、今後の普及拡大が期待されます。またコンテナやシャーシー部分の製作を担当した新井氏は今後社会問題化が必至の空き家問題に対して、デザインされたプレハブやコンテナ空間をその解決の切口としたいと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2019年 10月 5日号より