【中同協】消費税増税緊急アンケート 駆け込み需要少なく、中小企業の負担増~軽減税率など見直しの声多数

 中同協は、10月10~31日に「消費税増税の影響に関する緊急アンケート」を実施し、44同友会1324名から回答がありました。駆け込み需要は少ない一方、売上減少や仕入金額の高騰、価格転嫁難など中小企業の負担が増加している状況が示されるともに、軽減税率などの見直しを望む声が多くを占めることが明らかになりました。

消費増税の影響

 何らかの影響があると回答した企業は29.3%と3割近い企業に影響が出ています。

 内訳は、「大きな影響が出ている」(5.2%)、「若干の影響が出ている」(24.1%)で、「今後、影響が出る」と回答した企業も24.6%ありました。合わせると53.9%となり、増税の影響を受ける企業は多いことを示しています。(図1)

 「影響はない」と回答したのは34.3%、「わからない」と回答した企業も11.7%ありました。

 具体的な影響としては、「駆け込み需要の発生」は11.6%と少ない一方、「仕入金額の高騰」は30.9%、「駆け込み反動による売上減少」は22.1%とマイナスの影響が多くなっています。「特にない」は33.4%でした。(図2)

 また、「軽減税率対応の負担」(9.4%)、「キャッシュレス対応の負担」(8.8%)など、各種対応への負担をあげる企業も1割近くありました。特に流通・商業は「軽減税率対応の負担」(14.1%)、「キャッシュレス対応の負担」(16.7%)が高く、サービス業は「(影響は)特にない」(45.1%)という特徴がみられました。

増税分の価格転嫁状況

 増税分の販売価格への転嫁については、「すべてできた」と回答した企業は44.8%に留まっており、55%以上の企業が何らかの形で自社負担している現状となっています。(図3)

 企業規模別では、企業規模が大きくなるほど「すべてできた」と回答する割合が高くなる傾向がみられました。

 業績別では、黒字基調企業が「すべてできた」と回答する割合が高く(52.1%)、赤字基調企業は「部分的にできた」(27.0%)、「まったくできていない」(19.1%)が高くなっています。

増税・政府の対策への評価

 消費税率10%、軽減税率、ポイント還元制度、インボイス制度への評価について尋ねたところ、消費税率10%については「現行通りでよい」48.9%、「再検討すべき」37.2%と分かれました。しかし、記述回答に着目してみると「やむを得ない」「仕方ない」などの消極的な肯定意見も目立ちました。

 一方で、軽減税率(74.3%)、ポイント還元制度(60.7%)、インボイス制度(47.4%)では「再検討すべき」が最も多くなっています。

 なお、インボイス制度への評価では「わからない」が40.8%と、他の制度に比べて高い割合を示していることから、中小企業にまだ十分理解されていない現状がうかがえます。(図4~7)

記述意見より(一部抜粋)

〇キャッシュレスで資金繰りが悪化する可能性があります。消費税は下げてほしい。(北海道、食料品製造業)
〇複雑な事務が増えると、売上に転嫁できないまま管理費が増大し続けることになります。われわれ零細企業は資金と人的能力不足のまま営業することになり、大廃業時代と言われる昨今に拍車をかける一因にもなるのではないかと考えられます。(山形県、設備工事業)
〇消費税が上がるたびに消費マインドの冷え込みが起こり、半年後くらいから売上減になります。消費税増税以外の税収を政府には考えてほしい。また、インボイス方式の導入で取引先に多大な影響が出て、廃業に追い込まれる業者も多いと考えられます。弊社の事業継続にもかかわる問題なのでやめてもらいたい。…(奈良県、職別工事業)
〇今後の高齢化社会も含めて増税はやむを得ないと思うが、税金の使い道をはっきりして、無駄をなくすべき。(埼玉県、小売業)
〇消費税が2%上がるくらいであまり変わらないと思う。ただ、軽減税率は分かりにくく労力がいる割に効果は薄いと思うので、一律10%への増税でよかった。(宮崎県、その他)
〇同時に進むキャッシュレス化についても注目が必要。キャッシュレス化自体は進めるべきと思うが、中小企業に対する手数料格差の是正を政策として取り組むべき。(東京都、対事業所サービス業)
〇複数の税率になったため、経理処理と閉店作業に時間が掛かるようになった。18時30分スタートの同友会活動の参加に支障が出始めてます。(京都府、卸売業)

「中小企業家しんぶん」 2019年 12月 5日号より